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【読書感想】『ゲンロン戦記「知の観客」をつくる 』

グーテンターク!皆さまこんにちは。フランクフルトのYokoです。

今日は東浩紀(あずま ひろき)さんの
『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる 』が面白かったのでどんな本かをご紹介します!☺️

ゲンロンというのは東さんが仲間と興した会社です。理想に燃えた集団はユニークな企画を連発するも、経営難が続きます。本書は創業者の東さん(現在は社長ではなく株主) の壮絶な経営戦記です。

経営者の講演も、成功譚より失敗談の方が好まれます。全体では成功物語でも失敗談のほうが人間的で安心するし、その失敗からのリカバリーの過程に学びが多いからです。

まさに本書も東さんの失敗談がてんこ盛りなのですが、そこを冷静に受け止め、意味を見出し未来を語っているところがとても面白いのです。そしてタイトルにもある

「知の観客」をつくる という宣言についても本を読み終わった時になぜ東さんがここを大切にするのか想いが伝わります。

経営者として失敗をさらけ出してからの、しかしゲンロンをたたまずに継続し続けているからこそ凄みも感じます。

電子書籍でたくさんマークした部分があるのですが、特に印象に残ったのはこの2箇所です。

いまはみながみなスターを目指している社会です。新自由主義とSNSがその傾向を加速しました。けれどもそれは原理的にまちがっている。だって、みながスターになることは原理的にありえないんだから。だから、スターだけが文化を創るのではなく、じつはその周囲のコミュニティこそが大切なんだという価値観をもっと広めていく必要があります。ゲンロンスクールをやっていくなかで、この「観客」の問題もまたゲンロンの肝なのだと考えるようになりました。

(第3章 ひとが集まる場 3ゲンロンスクール より) 

言い換えれば、ぼくは自分の関心が自分だけのものであること、自分が孤独であることを受け入れたわけです。「ぼくみたいなやつ」はどこにもいない。ぼくと同じように、同じ関わりかたでゲンロンをやってくれるひとはいない。けれども、だからこそゲンロンは続けることができる。これからのゲンロンは「ぼくみたいじゃないやつ」が支えていく。ぼくはそのなかでひとりで哲学を続ければいい。ひとりでいい。ひとりだからこそできる。

(第5章 再出発 3解散の危機より)

大嵐の波間に揺れるゲンロンの船を船長として必死に舵取り(マネジメント)しながら、自らの思想家としての思考も深めてゆくそこに非常に惹かれました。

早熟の天才といわれた思想家(批評家)が泥沼のような経営の苦しみを味わい、失敗(誤配)を繰り返し、ご自身も壊れそうになるまで追い込まれ、身を捧げたゲンロンも失いかけてまで得た今の境地。

そこに至るまでの失敗を認め、しかしそこから意義を見出し未来を見つめるゲンロン戦いの記。でもそこは思想家、勝ち負けではない東 浩紀さんのゲンロン物語にすっかりひきこまれました。オススメです。

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!

Bis dann! Tschüss! ビスダン、チュース!(ではまた〜)😊






















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