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日々読み #4



11/19 晴れ

今日は初めてトレイルランに。
普段よく通勤で通る道から少しだけ横道に逸れるだけでこんなにも違う景色に出会えるとは思わなかった。日々生活しているだけでは味わえない山を体験できるトレイルの良さに気付いた。
ただ良さにも気づくと同時にトレイルはただ山を走るという穏やかなものではなく、かなり知的かつハードなものでもあった。
トレイルランは次から次へと判断に迫られる。目の前のアップダウン、大きな石や根っこ、木々といった障害物をどう攻略するのかが試される。天候や気温によってもその選択は変える必要がある。どう足を置いたらいいだろう、ここは滑りそうだからゴツゴツした根っこに足を置こう、落ち葉の下に隠れて太い根っこがあるからここは踏まないほうがいいななど、ひっきりなしで考えているのだ。
体力的に疲れてくると自分の脚の疲労具合なども考慮に入れる必要があり、ただ舗装されていない道を走るというだけでなく知的で奥深い一面が感じられた。
アップダウンの激しい山は登りでもかなり足に疲労を蓄積させ、下でも勢いを制御しながら走る必要があって、常にストレスフルな環境であり、すごくきつい。
 それでも少し開けた場所に出ると山から吹き抜ける風や少し黄色がかった葉にキラキラと反射する光の美しさはそういった疲労を溶かしてくれる。自然に抱かれ、山の空気を存分に肺の中に取り込み、癒され浄化しながら走っているような感覚を覚える。この満ち足りた充実感がトレイルならではの良さなのだろう。
また、週末、走ろう。


11/20 曇りのち雨

今日は午前にお互い予定があって自由にできるのは午後だけだった。お昼ご飯を食べて気付くともう14時だった。
これから遠出するわけにもいかないし、カフェって気分でもないし、外は雨でそこまで外食にもくりだしたくない、午前は用事があったからお互い疲れてる。
何をしたらこれからの時間を有意義に過ごせるだろう、うーんと考えてたら、妻から「おうち居酒屋でゆったりするのはどう?飲んでなかったいい日本酒もあるし。」と。
こういう時の妻の提案力には毎度驚かされる。
妻は日頃からデザイナーとしてクライアントからあれこれ要望があって、それに対しデザインとして「じゃあ、どうしよう。」と考えて自分の答えを出すという機会が多い。
反対に僕はそういう仕事もなくはないが、頻度としてはかなり少ない。普段から「与えられた課題の中で答えを出す」ということにどれだけ時間をかけてきたかを突きつけられた気分だった。
妻の鍛えられた「思考の筋力」に驚く午後だった。


11/21 雨のち晴れ

今日は何をしたのだろう。特段書いておきたいこともこれと言ってない。
それでも今日は僕を待っていている人にはケアができたな。
お風呂はきもちいい、最高だねという人の笑顔や満足の一部になれた。
こうして日記を書いていると自分が書いた文章に自分が助けられていることがあったりするからいい。


11/22 晴れ

検診センターに松浦弥太郎の『ご機嫌な習慣』が置かれていた。松浦氏のエッセイ集で、文章はどれも短くて、読みやすい。
エッセイに並ぶ言葉たちは気取らず、どれも優しくてどんな人にも届く。そんな気がした。
どの文章も説教がましくないし、丁寧で親切。
ページをめくるたびに新たな発見の連続で文章を追う目はますます、加速していった。
気に入った文章がどこかにするりと逃げていってしまわない様に、手帳に書き写して携帯しておきたい。そう感じるほど美しい。いい文章は人をここまで満ち足りた気持ちにするのか。

そして平易な文章であっても松浦氏の人柄がじわじわと自分の中に入ってくるような気がした。文章は変に自分を出そうとするのではなく、選んだ言葉たちが2次的に人柄を表し、自分が立ち現れてくるのだろう、そのことをこの本に教えてもらった気がする。


11/23 晴れ

当初の予定では3行くらいで書ける日記がいいなと思っていたが、案外書くとすぐに3行以上になってしまう。今ではまったく3行日記ではなくなってしまった。
今日は久々に小さい頃描いていた絵が気になって親に連絡してみた。今はだいぶ捨ててしまったみたいだったけれどしっかりと残しているものもあって、なんだか嬉しかった。学生時代を振り返ると親に面と向かって応援とかされたことはないけれど、静かに遠くで見守ってくれて常に期待してくれてはいた。
幼い自分は気づいていなかったけど、その距離感が自分にとっては案外大きかったのかもしれない。好きにやらせてくれた親には感謝だ。


11/24 晴れ
高齢者を相手取り警察を名乗って、根も葉もないことで訴訟を起こし、示談金を騙し取ろうとする輩がいるらしい。訪問をするとなんだかそわそわしている奥様。ご主人に話を伺うと根も葉もないことで訴訟を起こされ、脅迫文めいたものが届いたと。ご主人はとても落ち着いていて「所属も名乗らないし、公的な文章もないのに、慌てようもないよね。くだらない詐欺だよ。」と。
「騙すならもう少し手の込んだ詐欺にしないと今の年寄りは騙せないよ。」一瞬だけその人から老練な武将味を感じた。


11/25 晴れ

今日は珍しく平日に休みだった。ゆっくり朝起きて、コーヒーを飲みながら作戦を立てる。
この時間がとても好きだ。妻は仕事があるから1人でできることを探す。
今日は絵を描こう。自由に、下手でもいいし、誰にも伝わらなくてもいい。
ただ自分がやりたいだけでやる。そんな風に絵を描こう。
やり始めたらすごく楽しい。水彩絵の具にクレヨンを重ねてみようかな。描きたい人がいたけど、全然似てない。色つけたら案外いいじゃんと1人で黙々やるのはすごく楽しかったことを思いだす。
人には他人に評価を受けないような場所だったり、そういう何かが必要だったりするのかもしれないなあ。
今日もいい時間だったなあ。


11/26 雨のち晴れ

今日は妻も休み。近々、人と会う約束をしている。久々に会う人たちのために何か贈り物を選ぼう。
いつもお世話になっている工芸店に行って、器を送ろう。
何十年もこの場所で、工芸店を営む老舗。僕はこのお店が大好きだ。
取り扱っている器はもちろんだが整えすぎない心地のいい庭に、壁に飾られた籠や版画、季節によって移り変わる生け花、選び抜かれた什器に至るまで全てに隙がない。
お店全体が一貫性を持っていて、変な継ぎ目や歪さのようなものはない。それでいて、謙虚でさりげない。

置かれている器たちからは大型量販店の既製品に持ちえない一回性の躍動のような強さを感じる。
土の質であったり、釜の違いから生まれる器の表情の違い、釉薬のかかり方、混じり合い方で一つ一つ趣が変わってくる。全国から集まった工芸品たちはどれも素敵で、同じ作り方であっても同じものは1つもないし、作り得ないだろう。

作成者もそのことを十分に理解した上で自分の行きすぎた自意識などからは離れ、土や釉薬、その時の温度や気候など変化するあらゆる要素によって生まれる偶然かつ運命的なものを最大限出せるように力を尽くしているのが伝わってくる。仕事の向き合い方が直に現れる工芸品は本当に美しい。
この素敵な器を受け取った人が喜んでくれると嬉しいな。贈り物は選んでいる人の心も温かくなるから不思議だ。

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