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父が勝手に実家を売ります

「お父さん実家売るらしいよ」

お正月を過ぎて、妹から突然言われた。

妹が父と飲んでた時、お店の方の話で発覚したらしく、うちらに言うつもりはなかったようだ。

報連相なしに離婚・再婚するような父だったし、
さほど驚きはしなかった。

一度父が再婚した家族が住んでいたので、さほど思い入れはない。
が、もう二度と実家に行けないとなると、
少しセンチメンタルになって最後に帰ることにした。

前の家族のものも散乱していたが、私が暮らしてた証拠もあった。

たくさん遊んだドラえもんのおもちゃ
高校の空手着
私が載ったタンクマやNo!
大学時代に軽音サークルで弾いてたベース
今は亡き飼い猫たちの写真
母が弾いてたアップライト

懐かしくて連れて帰りたかったが、全部置いてきた。
なんだかいろいろ滞る気がしたから。
前に進みたい。


家の売却後、どこに家を借りるのか聞いたら父はこう答えた。

「しばらく車で暮らすよ」

悲壮感など一切なく言い放った。
その言葉の謎の説得力に「いや住むとこないんかーい!」とつっこむことすらできなかった。
一緒に住んでくれとか頼んでこない父の清々しさには感謝する。

一時期より片付いたものの、ほぼゴミ屋敷の実家。
これどーすんの?業者に頼むの?と聞いても
「ん?どうにかなるだろ」
と曖昧な返事。
出た、父のビジョンなき行動。

そういえば10年ほど前、父が会社を起こそうと思うから私を経理で雇いたいと言ってきたことがあった。
「なんの会社?」と聞いたら
「それが問題なんよ、なにするか決まっとらんとたい」
と父は答えた。

昔から変わっていない。
こうやって父は生きてきたし、どうにかなってきた。
たくましいのやら、なんなのやら。

父が好き勝手やってきたこともあり、
娘の私もどうしてあげようとも思わない。

勝手に再婚したあたりから、
このまま口も聞かず終えてもいいと思ってた。
母が亡くなるまでは。

良いことも悪いことも、伝えられなくなる前に会っておかないとひどく後悔することを母が教えてくれた。

だから最近はたまーーーーに会ったり連絡したりしている。

つくづく運の良い父。
母に感謝だね。

ギャンブルと酒が大好きな父よ、
今回ばかりは売却代金霧散するなよ。

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