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【創作大賞2024】第11章_「姉の誕生日までに」_ミステリー小説部門

『セックスしたらコロナになりました。』


第11章 姉の誕生日までに


 秋になると、姉の誕生日が近づいてきました。
 真夏の太陽が息を潜め、鈴虫の音色が涼やかに鳴る季節に、姉は生まれました。日本の四季で一番落差が激しいのが、八月と九月なのではないかと感じることがあります。
 あれほど陽気だった空気が、突如切なさを帯びるような、ハラハラとする不安定さが、姉にもあったような気がします。彼女はいつもどこか寂しそうでした。
 納得のいかないことがあると、情緒的に声を荒げて厳しく批判する人でしたが、その憤りにはいつも涙が見えました。その星座通りの乙女な人だったのだと思います。
 

【姉のこと】
 
父親の誕生日以来、なんの連絡もしていない姉に、誕生日プレゼントを贈るべきか、私はとても悩んでいました。姉にはいつも誕生日プレゼントを渡していましたが、今年はどうしようかと真剣に悩んでいたのです。

 だけど私は彼女にプレゼントを贈りました。それは父親から受け取ったクッキーが理由でした。

 夏休みが終わるころ、私は父親から「お姉ちゃんが伊豆に行ったらしくて、お土産を預かったよ」と言って、動物のクッキーを受け取っていました。あれほど感染にナーバスになって、周囲にイライラを振りまいていた姉が、何度も私にメッセージを送りつけてきた姉が、自粛期間だというのに、家族で旅行へ行ったのかと思うと、なにかおかしくて笑ってしまったことを覚えています。
 まったくメールの返信をしないのに、お土産を買ってくれたことも、そのクッキーが無表情のウサギだったことにも、なにかすごくおかしくて、吹き出して笑ってしまいました。

 私は姉の誕生日プレゼントを買いに行きました。

#創作大賞2024 #ミステリー小説部門 #セックスしたらコロナになりました #セックス #毒親

 

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