【創作大賞2024】第16章_「母の誕生日に」_ミステリー小説部門

『セックスしたらコロナになりました。』

第16章　母の誕生日に

　それから一週間もすると、母の誕生日が訪れました。
　母はお正月生まれで、年が明けるとすぐに年を取る人です。新年でもゆっくりと休むことを許さないような誕生の仕方には、トラブルメイカーの母らしさを感じます。一月の空気は限りなく澄んでいて、どんな闇をも透けて見せてしまうような強さがあります。そのとおり、母は真っ白で、赤ちゃんのように純粋で無垢な人でした。
 

【母と姉のこと】
　私は毎年、母に誕生日プレゼントを贈っていたけれど、その年は初めて、何も贈りませんでした。
　私はどうしても許せなかったのです。母のことを、簡単に許しちゃダメだと思ったのです。私は死のうと思ったから、死ぬところまで追い詰められたから。そしてここまで追い詰めたのは家族だから。簡単に彼らを許しちゃダメだと思ったのです。

　私は、意地でも実家に行かなかったし、母にプレゼントを渡さなかったし、父に対して反省しなかったし、姉に対して謝罪もしませんでした。

　ですが、私のそんな決意とは裏腹なことが起こりました。大晦日に実家へ行った息子は、「これ、バァバとおばちゃんから」と言って私にプレゼントを渡してきたのです。

　それはピンク色の包装紙に包まれた大きな袋でした。

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