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【創作大賞2024】エピローグ_「最後の手記 」_ミステリー小説部門

『セックスしたらコロナになりました。』


エピローグ 最後の手記


 その日、私がセックスした男性は三人。
 誰からもらったのかわかりません。

 ひょっとすると、私を含めて四人とも、感染しているような気もします。
 
 私には彼らが感染したのかを知るよしもありません。
 私は彼らの本名も連絡先も知りませんから。ただ、病院での検査から逆算して、恐らくこの日、三人の内の誰かからもらったということを推測することしかできませんでした。
 
 そのセックスの一週間後に病院で発覚した私は、この一週間のうちにウイルスをまき散らしていたことを知りました。
 実際に感染したのは同居している子供だけでしたが、近くに住む両親は濃厚接触者となり、高齢の二人を生命の危機に直面させました。
 いや、それだけでなく、事業を停止させることで経済的にも追い込みました。
 
 もちろん……、もちろん、当時の日本は自粛期間中でしたよ。
 夜の街は自粛一色でした。やっているお店は少ないし、みんなできるだけ家で過ごしていて、都会は真っ暗闇。どこでもマスクをしていたし、マスクを外して良いのは自宅でした。

 あの頃の日本は我慢を共有することで、大きな敵と戦っているようなところがありましたよね。
 みんなで我慢しよう、そうすればきっと勝てるからって。ここで自粛しよう、そしたらきっと幸せになれるからって。

 でも、ごめんなさい。
 私は、我慢できなかったのです。
 私はただ、セックスがしたかったのです。

 だけどこんなこと誰にも言えませんよね。
 
 だって感染ルートを明かしてもいないのに、反省しなさいって言われるし、家族からは怒られるし、責められるし、追い詰められるし、近所からは村八分にされるし、殺人者って呼ばれてしまうのですからね。

 えぇ、わかっています。

 母のことも姉のことも父のことも、バカなメンヘラだと散々悪口を書きましたが、私が一番バカなメンヘラだとうことを、私が一番わかっています。

 
 コロナ禍に、セックスしないと生きていけない性欲まみれの女ですから。


 だけど、どんなバカだって死んじゃいけないし、どんなメンヘラも生きていかないといけないじゃないですか――。

 どんなバカもメンヘラも自ら死んじゃいけないし、自ら死なせちゃいけないのだって、私はただ純粋にそう思うのですよね。


 ねぇ、だって、そう思いません?

おわり


最後まで読んで下さってありがとうございます。
この物語はフィクションです。
登場人物はすべて作者の脳内で作られたファンタジーで実在しません。


#創作大賞2024 #ミステリー小説部門 #セックスしたらコロナになりました #セックス #毒親

 

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