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だから喘息だってばよ!〜あの一言は優しさだった〜

#こちらの文章は過去作品を加筆修正したものです

むすーこ2歳が、もうずうーーと微妙な咳が治らないまま20日くらいが経過している。
途中良くなったりもしていたのだが、なんだかんだ近所の小児科から出された、風邪薬がずっと手放せずにいた。

「胸の音はいいんだけどね」
その町で、もはや生き字引と化している(っていったら杖でぶん殴られそうだけど)おじいちゃんの小児科の先生はそう言って、吸入をしてくれたのだが、たまたまその病院が休みの時に、咳が止まらなくなったから困ったものだ。

今日はたまたま来年入園予定の息子の、あーでもないこーでもないといったやりとりをする大事な日であったが、大事をとって欠席。
こちらは欠席OKなイベントだったので、遠慮なく取りやめたが、問題はここから。
きっと明日の一時保育もキャンセルだろうと、保育先に預けていた布団を受け取りに園に行き、帰ってくると、なんとなく息子の元気がない。

だがしかし、車のガソリン入れをしなければクルマが飢え死にする危険があったため、私は早急に、いくつかのクーポン券を握りしめ、セルフのスタンドにむかった。
息子はチャイルドシートに座り、安全に安静をたもっている。給油なんてすぐ終わる。
これでよし、これがベストと私は信じた。

セルフの給油もだいぶ慣れたが、クーポン利用時の複雑な手間は未だ慣れない。
結局、最後の最後で痛恨のミスをしてふりだしに戻ってしまい、若いにーちゃん店員に手取り足取り教えてもらいながら作業をした。
足は取られてないけど、手は取られたななどと、どーでもいいことを考えながら。

ここにはたくさんの若いにーちゃん店員に若いねーちゃん店員がいる。
きっとたくさんのランデブーが生まれて消えたんだろうなと、相変わらず心底どーでもいいことを考え給油している母のそばで、息子は咳をしまくっている。

これはマズイ。

考えるまもなく直感した。
今はコロナ禍で咳はご法度、というか咳の奴が外出はそもそもアカン。
まあセルフのスタンドで、ソーシャルディスタンスはとりまくりだから、麻疹でも罹っていない限り大丈夫だろう!と考え、とにかくここを一目散にでて家に帰ろう!と思った。

息子の大好きな昼ごはんはパンだ。
幸いパンはある。
だからこのまま自宅に帰ろう、と思い車を走らせていたのだが。

息子はマクドナルドを見つけてしまった。
しまった。
「マックゥーマックゥーパピーせっと食べるぅ」
というではないか。
仕方ない。ガラ空きになっていたドライブスルーに飛び込み、そのままスルーする勢いで注文、会計を終え、帰路についたのだった。

待ちわびたハンバーガーとフライドポテトを見つめ息子はごきげんな様子だが、いかんせんあまり食べない。
実は息子はハンバーガーが大好きなくせに、ハンバーガーをあまり食べない人間なのだ。
あのハンバーガーという食べ物の見た目、包装紙、あとは店構えに完全に心を奪われているらしく、大好きではあるものの決して食は進まず、あとはポテトばかり食べている、はずなのだが。

その日はいつも通りハンバーガーを2口3口食べた後、ポテトをガンガン食べるはずだがそれもない。早々とごちそうさまをし、テレビを見たいと言う。

おかしい…

私は思った。
というか、もうずっと咳が治らない。
ひどくなるばかりで、とうとう座位もつらいのか転がってテレビを見ている。
むむむ…これはおかしすぎる。
いわゆる母の感というやつだ。
顔色と呼吸の仕方をチェックし、いつのまにか外れていた気管支拡張剤を貼り付け、寝かしつけながら様子見した。

あかん。あの魔法のような気管支拡張剤が効かないじゃないか。
咳をしまくりながらも疲れ果てて寝る息子。
これは明日のかかりつけ医院の診察を待たず、今日の午後、診察してくれる病院に飛び込む事にした。頑張れ息子!と祈りながら私も一緒に、寝た。

いや寝れん。

少なくとも息子は眠れてない。
咳が激しすぎるのだ。
とりあえず私は起き上がり、かかりつけ医が休みの時専用病院の予約サイトを初めて使うことにした。

くまさんのような見た目と言われてる、白髪混じりの体育会系おっさんの、かかりつけ医が休みの時専用病院に着くと、看護師さんに
「ぐったりしてる、苦しそう」
と言われ、熱を測り即診察へ。

すると診察が終わるや否や

「これ喘息の発作です」

と先生は言われた。ちなみにここの体育会系おっさん先生もかなりいい先生。
むちゃくちゃ端的に病状説明をし、小気味良く診断を下すので良い。へんな心配をしながらオロオロして病院に行くと、お母さん気のせい、とちょっとめんどくさそうにあしらわれるのも嫌いじゃない。

「今日は1日分喘息の薬を出すから、明日はかかりつけ医に言って相談してください」

そう言って

診察は終了。

え!?喘息って言われたの今日が初めてだし、喘息ってなに気をつければいい?毎日掃除!?
できるかな?いややるしかないのか??
検査とかこれからするの??
ひえー、まじパニックなんですけど。
と頭の中はぐっちゃぐちゃになりながら、診察室からほっぽり出されてしまった。

これも先生の気遣いなのだ。
そう自分に言い聞かせ、看護師さんに正直にその事(頭がパニクってる)を伝え、病院を出て、近くの調剤薬局に行った。

「ああー、先生もプライドがあるからねぇ」
診察の経緯を聞き、1日分しか処方がない処方箋用紙を見つめながら、その薬剤師はいった。
そうか、やはりそういうことなのかと、あの非情なほどそっけない診察を振り返りながら思った。
喘息についての基本知識とお薬の使い方を、親切な薬剤師に説明してもらい、薬局を後にした。

兎にも角にも今日から、

突如として喘息との戦いの火蓋は切られてしまったのである。

いやー、しかし喘息って有名な病気だけど、細かい事詳しい事全く知らないんだよね。
とにかく咳が出ることや、タバコの煙は避けること、掃除をすることくらいしか知らない。
我が家は非喫煙者ばかりだから、タバコの害は無視するとして、掃除はしなきゃマズイと思った。
それよりも、うっかりティッシュと一緒に洗濯してしまった衣類(叩くととんでもない量の埃が出る)をなんとかすべきかも知れない。

考えだすとキリがないが、幸い息子の咳はお薬のおかげでかなり落ち着き、うっかり実家で

線香の煙

でも吸わない限り比較的咳は落ち着いている。
走り回ったりご飯食べたりしたら、多少ゴホゴホ言っているが、それ以外はかなり落ち着いた。

そもそもこの時期は喘息は悪化しやすいらしい。
とにかく親としては、掃除をし、お薬を飲ませ、

地獄のような戦いの吸入をし

さすれば良くなるとみている。
今のところ、かかりつけ医的には喘息疑惑濃厚といった感じらしく

喘息ではないという診断

なのだ。

自分でも何言ってのか分かんないですが、

前日に喘息発作が起きているのに、翌日の診断は喘息疑惑

なのだ。

まあ医者が違うから当然っちゃ当然なんだけど、なんだかねぇ。小児喘息は診断が難しい病気らしく、きっと先生も迷われているんだろうなと感じた。診察の眼差しは真剣だもんなぁ。

そんな風にうろたえながら道を歩いていると、近所に住む中学生が息子をあやしてくれた。
「うちの子、喘息になっちゃった」
というと、

「オレも喘息っすよ」

と力強く答えてくれた。

そうか。そうなんだな。
私の心は随分と軽くなった。
多分だけど。こう言う一言が優しさなのだ。
さりげない思いやりにさりげないエール。
かなり気の利いた中学生の一言に、彼はどんな人生を送っているのだろうかと、ふと気になった。

このところ色々あったけど、人生なるようになるしかならない。
とりあえずは息子の気管支を硬く縮こませないように、ちゃんと病院に通うと決めた。

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