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上の部屋の足音を聞きながら

最近、マンションの部屋から足音が響くようになった。

足音といえばマンション騒音トラブルの代表例みたいなものだが、タタタタ……と上から足音が聞こえるたびに私は微笑ましい気持ちになる。

上の部屋の住人はうちより後に引っ越してきて、その際に挨拶にきたので顔見知りという程度の仲だ。

その時はご夫婦ふたりだけだったのだが、じきに奥さんのお腹が大きくなり、赤ちゃんを連れた姿を見かけるようになった。
その赤ちゃんがよちよち歩きをするようになり、最近では公園で会うこともある。
つまり、その子が足音の主というわけだ。

会っても挨拶する程度で名前も知らない子だけど、あの赤ちゃんが元気に走れるくらい大きくなって……と目を細めてしまう。
マンションにはそんな感じの、「名前は知らないけど成長を見ている子」が他にも何人かいる。


先日、真新しいランドセルを背負った息子を連れていたら、マンションの入り口で「ぼくもう小学生になったの〜!」と顔見知りのご婦人に声をかけられた。
この人にとっては息子も「名前は知らないけど成長を見ている子」のひとりなんだなあと思った。

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