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感想文-『社会保障クライシス』山田謙次

日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。   ーーー財務省「外国格付け会社宛意見要旨書」


みなさん、こんにちわ
いっくんです。
久方ぶりのNote投稿になります。

今回は、『社会保障クライシス-2025年問題の衝撃』という社会科学系の本を読んだ気づきを共有致します。


言葉の定義

●社会保障とは何か。
①社会保険
②公的扶助
③社会福祉
④保険医療・公的福祉


●クラシスとは何か。
財政破綻が起こり国債発行ができなくなる。
社会保障に支出ができなくなり、文字通り崩壊した状態になってしまうこと。


●2025年問題とは何か。
1947年〜49年の「第一次ベビーブーム」で生まれた「団塊の世代」が、75歳以上となる2025年に起こる様々な問題のこと。
47年〜49年生まれは700万人で日本の人口ピラミッドで突出している部分。
特に本著では、これらの世代が一気に高齢者となることによって社会保障費が増大することが問題としてあげられます。


●本書の要旨
 現在は60歳以上を中心とする潤沢な貯蓄を背景に赤字国債の発行が可能な状態だが、今後高齢者は医療費・介護費の増大に伴う支出により貯蓄を取り崩さなければならなくなる。
つまりこのままでは国債を発行する原資がなくなってしまう。
現在税収と赤字国債による歳入が約97兆円。そのうちの赤字国債発行分と同額の32兆円程度が社会保障支出に当てられている。
国債の発行が難しいと言うことは社会保障支出を辞めざるを得ない。そう言うわけにもいかないので消費税増税を中心に税収を増やさなければいけない。
同時に、拡大する社会保障費を抑制するために施作の展開をして行かざるを得ないだろう。
2025年に迎える社会保障の危機ひいては日本の財政が破綻するということを自覚し、消費税増税やむなし・社会保障の縮減を必定だと
読者が考えることができたなら著者冥利に尽きるであろう。

●本書の構成
 まずはじめに2025年問題とは一体なんなのかを説明した後
社会保障が各国・日本においてどのように展開してきたのかを論じ
日本では財政破綻をする可能性が高まってきておりそれを防ぐために
私たち国民は、今まで避けてきた事柄に対して【良薬口に苦し】の考えのもと真剣に考えなければならないとしており、”社会保障クライシス”と言われても漠然とした問題意識の人にとっては内容が入りやすい構成になっていると思いました。


本書を読んで、いくつか疑問に感じたことがあるのでいくつか記載したいと思います。


疑問点①
税収を増やさないといけないならば、なぜ法人税でも所得税でもなく消費税なのか?

第5章の”これから国民が受け入れなければならないこと”
で社会保障クライシスに対する処方箋が書いてあります。
具体的には消費税増税と社会保障費の縮小です。

画像1

消費税の導入・増税に伴って法人税の減税が行われています。
法人税:1984年度〜2018年度で43.3%から23.2%に引き下げられています。
1989年〜2019年度の税収で考えると、
消費税:371.9兆円を日本人が支払ったのに対して
法人税:290.4兆円分が減少しています。
つまり、消費税収の約78%が法人税の『穴埋め』となっていることがわかります。
メディアでも法人税率引き下げはあまり報道されないので知らない人も多いのではないでしょうか。

日本に財政問題はないと考えていますが(後述)、百歩譲って本当に税収によってやりくりしようとする財政均衡主義
を取るならば、なぜ消費税増税とセットで法人税減税を進めるのかを説明して欲しいです。
平成元年度の税収は60兆円。2020年度の税収は63兆円です。

画像2

画像から分かるように、所得税と法人税の減収分を消費税がカバーしている状況です。

法人税減税に突き進んでいる状況はまさに
グローバリズムという「緊縮財政」「規制緩和」「自由貿易」
のトリニティ実現のためなのではないか。法人税減税こそ規制緩和にあたります。
その成果は大企業の配当金の拡大をもたらしたかもしれませんが
果実は私たちには落ちてきません。トリクルダウンがこなかったことは
実質賃金が下落していること。デフレが長期化していることからも分かるのではないでしょうか。


本当に税収でやりくりして行かないといけないのならば、税体系全体を含めた包括的な議論が求められています。


疑問点②
国債の担保は私たちの銀行預金?

p.149
”先に結論を申し上げると、日本では高齢者の貯蓄が大量に金融機関に預けられており、日本の金融機関がそれを原資に
国債を購入しているからです。日本人の金融資産は約1800兆円です。(中略)国内市場は潤沢な国民の貯蓄を保有する貯蓄を
国債購入原資と見ているのです。”

と著者は書いています。私たち国民が銀行に預けている預金(銀行にとっての負債)を担保に銀行が国債を購入できるんだ。と。
2015年現在日本国内には1700兆円の現金・預金があります。うち、家計が900兆円、法人が800兆円を保有しています。
家計に占める貯蓄総額の7割を60歳以上が占めており今後彼らが潤沢な預金を生活に支出せざるをえない。
そうなれば貯蓄がへり、新規国債が発行できなくなる。財源がなくなるので社会保障がクライシスするということですね。

ここで重要なのが、国債発行のプロセスを理解することにあります。
国債というのは、よくメディアでは”国の借金”と言われていますが(そんな言い方はなく本当はガバメント・デット=政府の負債ですが)
政府が銀行がもっている日銀当座預金を借りることで発行した借用証書を意味しています。
この当座預金は政府と銀行しか持てません。その時政府は、借方に日銀当座預金、貸方に国債を計上します。
政府が国債発行によって支出をする場合、日銀当座預金は使えません。企業は日銀当座預金を持っていないのですから。
どうするかといえば、政府は日銀当座預金と同額の政府小切手を発行します。
政府小切手を企業は受け取ります。政府小切手だけでは現預金に変えられないので企業は
それを持って銀行にいきます。 
そうして企業は政府小切手と同額の銀行預金を受け取ります。
この銀行預金が給与として私たちに分配されるのです。
一方で銀行は、借方に政府小切手、貸方に銀行預金を計上します。
この政府小切手を銀行は、決済し日銀当座預金をもらいます。

以上から分かるように、私たちの現金・預金が国債の原資にはなっていないことがわかります。
寧ろ逆に、国債を借りることによって私たちの現金・預金が増えてしまうということが
わかります。信用創造のもとでお金が作られているということがわかります。

じゃあ、無限に国債発行すればいいのか?
税って支払う必要ないんじゃね?

そういった疑問も出てくるでしょう。
無限に国債発行できるのか→論理的にはできる。ただしインフレにならない程度にする必要がある。
税を支払う必要があるのか→税のある意味①景気安定化装置②円を法定通貨足らしめるために必要

具体的な説明は三橋先生がわかりやすくしていくれているので、下記のURLを
ご興味がある方は見てみてください。約30分で国債についてしれちゃいます。

https://www.youtube.com/watch?v=foHJVLG0jb0

⬛️まとめ

私は日本のデフレ脱却と経済成長のため消費税は「減税」、新規国債発行(財政政策)の拡大、法人税累進性の強化を考えています。
国債発行のプロセスを理解すれば、
私たちの現金・預金から政府は国債を発行しているわけではなく、銀行が持っている日銀当座預金からお金を借りていますと理解できると思います。
寧ろ、政府が借金をすればするほど(国債を発行すればするほど)私たちの預金は増えてしまうことを意味しています。

誰かの負債は誰かの資産
政府の負債は民間の黒字

水が高き所から低いところに落ちるように、それは自明の原則です。

本著は消費税「増税」を主張しており、本来ならこの手の本は読みません。
一番上の財務省の公式見解(平成14年4月30日)がいっているように、自国通貨で国債を発行している国が財政破綻(デフォルト)することはありえないからです。
それでも私が今回本著を読んだのは、友人に勧められたからです。
消費税の話になった時、友達は消費税止むなしと話をしていました。
確かに、この手の本は大抵センセーショナルなタイトルで興味をそそり、
私たちの感情に訴えきます。私たちが通常考える家計マインド(借金は返さなくてはいけない)をそのまま貨幣発行権を有する政府に応用すると上記の結論にもなるのでしょう。
しかし、上記のマインドこそが20年以上に及ぶデフレと停滞ともたらしたのではないか。「一部の富める人は益々富み、残りの他の人はみんなで貧しく」となるのはもう終わらせたい。そんな状態は【毒薬口に苦し】に他ならない。

そうした時に、自分の周りにいる人・影響力を与えられる人たちから正しい貨幣観・経済について理解してもらいたいと思い今回筆をとりました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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