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Xジェンダーについて語らせて 第6回 苦しむくらいなら、カテゴライズは気にしなくていい

カテゴライズが苦手です。
いや、お前自分を「Xジェンダー」ってカテゴライズして文章書いてるやんけ、とお叱りを受けそうな出だしですが、カテゴライズが苦手なのです。

セクシュアルマイノリティの世界には、たくさんのカテゴライズ用語が存在します。
LGBTも、カテゴライズの頭文字から作られた言葉です。
そこから、攻めを意味するタチ、受けを意味するネコ。
ビアン界隈では、一般的に見て女性らしい見た目の方をフェム、男性らしい見た目の方をボイ、どちらにも見える方を中性、と分けることがあります。
たしかに、カテゴライズって便利なんですよ。
自己紹介がしやすいし、相性のいい恋人を探すときのキーワードにはなり得るから。

でもどういうわけか、自分はこういったカテゴライズ用語を使うことに抵抗があります。
だから出会いを求めるオフ会とか、自分は絶対に行けない(笑)

自分を構成する要素がありすぎるから、が近い理由かな。
自己紹介をするなら、「自分はラーメンと寿司が好きでディズニーランドには半年に1回行きたくて部屋でサボテンを育てていて・・・」とか喋りたいのに、例えば「あぁ、ボイだね」とか言われてしまうと、なんか自分のことを簡単に片づけられたような気がして、憤りを感じるんですよね。
これはあくまで極端な例ですが。

実は最近まで、カテゴライズが苦手な自分を責めていました。
もっと言ってしまうと、男女どっちつかずな自分を、責めていました。
根が白黒はっきりさせたいタイプの人間なので、余計に苦しみました。

過去にお付き合いした人たちは、やはりどこかしら私に「女性らしさ」を求めてきた。
彼ら彼女らは、悪くないのです。
中途半端に生まれてきた自分が、物事を複雑にしているんだ。

自分は女性ではないので、「彼女」と呼ばれることに非常に抵抗感を覚えます。
でもレズビアンの方は、女性を好きになるし、「私の彼女です」と紹介したいと思うんですよ。
だから、自分は恋愛が成就しにくいんじゃないかと思っていました。
そんな自分に、腹を立てていたのです。

今年の3月に、私が尊敬する坂口恭平さんという方が、お住まいの熊本から東京にやってきて講演会をやるというので、参加しました。
彼はあらゆるプロフィールに自分の携帯番号を載せていて、今すぐ死にたい人が電話相談できる「いのっちの電話」という活動をしています。
そこで今回は死にたくなくても、講演会のお客さんの相談事に乗りますよ、というコーナーが設けられました。

私はサラリーマンをしていますが、本当はなにかしらの芸術でごはんを食べていきたいという夢があります。
でもなかなか叶わない。
どうすればよいかと彼に相談しました。

その相談に対する彼の第一声が、

「俺、君が男か女か分からないんだよね」

でした。


え?今その話関係なくね?と思った次に、こう言ってくれたのです。


「でも、それでいいんだよ」


自分を、自分のままでいいと言ってくれたのは、恭平さんが初めてでした。
そしてそう言われた瞬間に、「あぁ、俺は俺のままでいいんだな」と、やっと確信が持てたのです。
他人から認められることで初めて自分を認められるなんて、なんとも情けない話なのですが、本当に本当に、嬉しかったです。

それからは芸能も悩むことなく、時には歌い、時には落語をし、時にはこうして文章を書いています。
いつかはどれか一つに絞らなくちゃとどこかで思っていたのですが、今は好きな時に好きなことをやっていこうと心に決めました。

それから、セクシュアリティも、なんだかまとまらない自分を、認められるようになりました。
だから今、この連載が書き続けられているのでしょう。

もし今、セクシュアリティに迷っている人がいたら、大丈夫です。
苦しむくらいなら、カテゴライズは気にしなくていいです。
どこにも当てはまらないことにモヤモヤするかもしれませんが、ムリヤリ自分をどこかに当てはめる苦しさよりは、マシです。
迷う気持ちを、ボール遊びのように、たくさんたくさん、転がしましょう。
そんな時間も、私はなぜか心地よかったりしました。

あと、恭平さんはご自身で革靴を作ったことがあるのですが、「自分で作った靴は絶対に靴ずれしない」んだそうですよ。
俺も作ってみようかな、自分だけの靴。





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