見出し画像

演説が変われば、選挙が変わる。歴代最年少26歳で芦屋市長となった高島りょうすけが演説を重視した理由とは。

2023年4月に行われた統一地方選挙。全国最年少の26歳という若さで、市長として当選を果たした高島りょうすけさん。灘高出身・ハーバード大学卒という華々しい経歴の影にある、彼なりの選挙にかける思いや努力についてお話を聞きました。

今回はkaeka代表・スピーチライターの千葉佳織がインタビューを行いました。(以下、敬称略)

登壇者紹介

芦屋市長 / 高島崚輔
兵庫県芦屋市長。史上最年少市長。灘中学校・高等学校卒業、東京大学中退、ハーバード大学卒業。2023年4月23日に投開票が行われた芦屋市長選挙で、現行の公職選挙法における歴代の市長の中で最年少の当選者となった。


株式会社カエカ代表取締役 / 千葉佳織
株式会社カエカ代表取締役・スピーチライター。 弁論を15歳からはじめ、全国弁論大会で3度の優勝、内閣総理大臣賞の受賞を経験。 2019年、株式会社カエカを設立。経営者や政治家などを対象とするスピーチライティングやトレーニングのほか、教育機関でも講師や研修を手掛け、これまで4000人以上に指導を行ってきた。

史上最年少市長候補として出馬した選挙を振り返って

千葉:改めて選挙戦を振り返ってみて、いかがですか?

高島:2022年12月に出馬を表明する記者会見をして、それから約半年の月日が経ちました。あっという間といえばあっという間ですが、いろんなことがあったので、随分前だなという感覚もあります。
初めてのことばかりだったので何もかも手探りでしたが、自分のやりたいことをやっていたので、総じてとても楽しかったですね。

千葉:選挙期間中、特に印象に残っていることはありますか?

高島:選挙期間の半ばあたりで、「総決起大会」という大きめのイベントを行ったことですかね。私はイベントの最後に登場したのですが、登場するまで何人の方が集まっているかも知らされていなくて。登場の瞬間、たくさんの方が集まってくださっている様子を目の当たりにして、これだけ応援していただいているのだから頑張らないといけない、と身が引き締まる思いでした。


kaekaのトレーニングを受けたのは、あらゆる世代の方にメッセージをわかりやすく伝えるため。身一つで声に思いを乗せて話すことができるように。

千葉:どうしてkaekaでトレーニングを受けようと思ったんですか?

高島:選挙が始まるまでは対話集会を通して、市民の方のお声を聞いていました。その中で自分の話を聞いた人から、「大学の先生の講義のように聞こえる」などと言われることがありました。自分自身、プレゼンテーションのように資料をもとに話すのは得意でしたが、身一つで声に思いをのせて話す演説に難しさを感じていたんですね。

そもそも演説では、言葉一つで、聞いている人に同じ情景をイメージしてもらう必要があります。また聞いている人は若い方から先輩世代の方まで、幅広くいらっしゃるので、あらゆる世代の方に向けてメッセージをわかりやすく伝えるためにできることをやりたいと思っていました。

わからなければ聞いたらいい!という思想を持っていたため、しっかり一度伝え方について学んでみようと思いました。

千葉:今回高島さんには、内容ではなく話し方の部分を中心にトレーニングさせていただいたんですよね。トレーニングを受けてみて実際いかがでしたか?

高島:伝え方の原理や法則を理論立てて学ぶことができたため、納得感がありました。それぞれの伝え方のポイントについて、なぜ大切なのか、どうやったら身につくのか、という部分まで詳しく学習できたのが特によかったです。

千葉:特に印象に残っている内容はありますか?

高島:一番印象に残っているのは腹式呼吸ですね。腹式呼吸ってよく聞くじゃないですか。でも、わかるけどできない。けれども、演説ってかなり喉に負担がかかるので、喉が疲れづらい腹式呼吸を学ぶ必要があると思っていたんです。実際トレーニングを受けてみて、自分の声の出し方が変わったことを実感しています。声の出し方が変わったことで、より力強い声になりました。

トレーニングの後に出席した公開討論会で、「前回の公開討論会の時と印象が全然違って頼もしい、どうしたの?」と言っていただけたのも、腹式呼吸の成果だと思います。声の出し方を学習した上で自信を持って発声すると、不安な気持ちで発声することとの違いを実感しますね。自信をつけてくれたのがkaekaのトレーニングでした。

千葉:普段からご自分で努力されている高島さんだからこそ、学習して理論を理解することで、より深い学びとして定着したんじゃないかと思います。自分のなかに取り入れて、身に付けるのが人一倍早かったですよね。

高島:そう言っていただけると嬉しいです。あと他には、ジェスチャーの単元はすぐに活かすことができました。トレーニング前はジェスチャーを出してもすぐにおろしていることが多かったんです。それを千葉さんに指摘されました。

千葉:そうですね。ジェスチャーは出し続けることが大切です。例えば、「1点目は〜」などど数字を出すときは、1という手を出しながら、その後の言葉を話し、1点目にあたる言葉を話し終わるまで維持することが重要です。なぜかというと、聞き手は話しと身振りを一緒に見ており、ビジュアルと音声がうまく合ってこそはじめて言葉が引き立つんです。

高島:このテクニックはすごく勉強になりました。その後の記者会見や演説でも実践しています。

千葉:高島さんの演説動画を拝見しましたが、ジェスチャーに関してバッチリで素晴らしかったです。また高島さんならではのオリジナリティのあるジェスチャーも印象的でした。角度を変えて出していくパーの手なんかはすごく記憶に残っています。


惹きつけられる演説の秘訣は、どこにあった??

千葉:高島さんの演説は本当に聞きやすく、惹きつけられるのですが、何か意識していることはありますか?

高島:一番意識したのはとにかくゆっくり話すということです。それに加えて間を取ることも忘れないようにしていました。
※間とはお話の間、「。」の後次に話し始めるまでに取る空白の時間のこと。
テンションが上がってくると間を取り忘れてしまうので、意識的に間を取るように話していました。

千葉:聞かせていただいたところ、高島さんの演説では大体平均的に2秒くらい間が取られていました。これはkaekaで最も聞きやすい間の秒数であるというふうにお伝えしている時間です。

また拍手を促す際には最大10秒くらい間を開けている箇所もありました。沈黙が怖いという方は多いのですが、勇気を持って間をとっているおかげでかなりお話が聞きやすくなっています。

高島:今でこそできているかもしれませんが、最初は拍手を待つのはかなり怖かったです。拍手が来なくて、「あ、喋ろう」となった時もありました。ただもともとシーンとする静寂が好きなので、人より間を取ることに抵抗はなかったかもしれません。

千葉:なるほど。他にも意識していたことがあれば聞きたいです。

高島:うーん、そうですね。意識していたというとおこがましいですが、海外の政治家の演説はかなり参考にしました。特に2008年のオバマの演説からは学ぶことが多かったですね。

同じワードを随所に入れる、というところは真似していました。オバマだと「Yes We Can!」と言ったわかりやすいセリフがありますよね。
日本語だと同じように短いワードを作るのは難しかったのですが、同じワードをたくさん入れてみる、という風にアレンジして真似していました。

千葉:オバマから学んで取り入れていたんですね!高島さんの演説を聞いて、「未来を決めるのはあなたです。あなたです。あなたです。」といった同じ言葉を繰り返して表現する箇所に注目していたので、腑に落ちました。だから記憶に残りやすかったんですね。

高島:そう言っていただけると嬉しいです。同じワードを繰り返し使うことで、聞き手に印象付けて覚えてもらうことができますよね。しかしそれだけではなく、話者としての自分の安心材料になってくれたように感じています。
同じワードを使って何度も話すことで、考えすぎず、余裕を持って話すことができるようになっていたと思います。

千葉:高島さんは同じワードをたくさん入れるポイントと、そうでない部分はかなり使い分けていたように感じました。何か意識されてやっていましたか?

高島:使うポイントはかなり絞っていました。演説だと、各地域を回るので、地域にあわせた課題感や政策をお話しした後に、共通で同じワードをたくさん入れた一番伝えたいメッセージについて話すようにしていました。

千葉:高島さんは今聞いただけでも、かなり工夫されて演説に臨まれていると感じました。私自身、高島さんの演説に励まされ、勇気をもらった1人でもあります。これからも歴史に残る演説をたくさんしていただきたいです。


演説の力をこれからもっと大きくしていくためにできること

千葉:これからkaekaでは政治家が当たり前に演説を学ぶ世の中を作りたいと考えています。世間ではまだまだスピーチライターやトレーナーの認知は低く、ついていると「自分の言葉で話していないのではないか」と言われることさえあります。これからどんな取り組みが必要になるでしょうか?

高島:そうですね。まず立候補者目線で話すと、演説は選挙における手段の一つです。立候補者のSNSの質が高まることや、ビラの内容がよくなることと同じように、手段の一つとして演説力を高めることは私にとって自然な選択でした。演説の質を高めることが、当選につながる一歩になるということがより浸透する必要があると思います。

事実、演説にはかなりのパワーがあると思います。聞いている人の行動を変えることができるかもしれない、心を動かせるかもしれない、演説は大きな力を持っています。だからこそ、トレーニングで良くなるなら、トレーニングした方がいい、そう思う人が増えると良いですよね。

後は有権者の方の目線で話すと、有権者の方にとっての演説の魅力を上げていくことも重要だと思います。現在は、演説の良さがあまり多くの人に浸透していないように感じます。実際、騒音だと言われてしまうこともありますよね。

だからこそ演説って聞いてみたら意外と面白いな、興味が湧くな、と思ってもらうことで、より演説を身近なものにできると思います。そうなったら自然と立候補者は演説のクオリティを高める必要が出てきますよね。

演説が聞きに行きたいと思ってもらえるものになれば、立候補者と有権者の双方向のコミュニケーションが活発化し、選挙のあり方も変わるような気がします。

今回の選挙で、普段政治にあまり関心のない人が私の演説を聞いてくれたことはとても嬉しかったです。街頭でお話ししていると、立ち止まってくれたり、家から出てきてくれたりする人もいました。そうして顔を見て話すことができると、一方的な騒音ではなく双方向のコミュニケーションが成立しますよね。

千葉:本当にその通りですよね。私自身も人柄を一番伝えることができるのは人の生の声だと思っています。だからこそ、声の力、演説の力がもっと大きくなれば、今の選挙という形が少し変わるのではないかと思っています。

最後に今後、自分の伝え方に向き合いたいという方へ一言お願いします。

高島:大前提、自分の話を振り返るってすごく嫌なことだと思います。私も嫌でした。ただ、聞いてくれる人の行動や思いを変えたいと思う時にどう聞こえてるのかは、とても重要です。

向き合うのにパワーがいる分、そこに踏み出すことができれば自分の声の力強さ、パワーは大きく変わってきます。まずは自分の話を聞いてみるところから、そしてもっと良くしたいとなったら、kaekaのような専門家や周りの人に聞いてみると良いのではないでしょうか。

今回のインタビューは対談動画としてYoutubeでご覧いただくことができます。こちらも合わせてご覧ください。


kaekaでは、興味を持っていただいた方を対象に個別相談会を実施しております。ご興味を持っていただけましたら、まずは無料の個別相談会をご予約ください。kaekaは「話す力」を磨き、確実に伝える力をトレーニングする伝え方トレーニングサービスです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?