区議6期目。トレーニングで演説が変わった。長年議員を務めている中で、改めて独学ではなくプロに学ぶ価値とは。
2023年4月に行われた統一地方選挙で、文京区議として6回目の当選を果たした高山泰三さん。26歳から何度も選挙に挑んできた彼が、なぜ改めて自身の伝え方に向き合う機会を持ったのか、お話を伺いました。
今回は高山さんの伝え方トレーニングに伴走したスピーチトレーナーの山元二葉がインタビューを行いました。(以下、敬称略)
登壇者紹介
6期目の選挙で、初めて伝え方にプロと向き合う。一緒に原稿を作成して、伝え方を練習して、準備して臨むことで話すことに自信がついた。
山元:kaekaを受講しようと思った理由を教えていただけますか?
高山:実は受講のきっかけをくれたのは子供なんです。子供が学校でスピーチをする機会があり、家族から「話のプロなんだから教えてあげて」と言われました。その時、これまで何度も選挙を乗り越えてきましたが、振り返るときちんとスピーチや話し方に向き合ったことがないことに気づきました。
自分としては6回目の選挙ということもあって、何か変化を起こして成長したいという思いが強くあったこともあり、興味が湧いたのがkaekaの伝え方トレーニングでした。話すことはもともと苦手ではなかったんですが、あくまでも自分の感覚的なもので、客観的に自分の話を評価してもらう機会はありませんでした。だからこそ、一度プロに見てもらいたいと思ったことが受講の理由です。
山元:実際にトレーニングを受けていただいたご感想を教えていただけますか?
高山:すごく楽しかったです。kaekaの受講を通して、自分の内面に向き合うことができたことがすごくよかったです。原稿を書いたり、スピーチにしたりする過程の中でこれまでの自分について振り返ることができました。
トレーナーの山元さんがかなりテーマを絞ってお題を作ってくれたことがすごくよかったです。「嬉しかったこと」「失敗したこと」などこれまでの人生を一つ一つ丁寧に振り返ることができたと思います。
山元:スピーチを通してご自身の経験を一つ一つ見直す機会になったのはすごく素敵ですね。一つ一つ見直していただいたからこそ、作成した原稿にも厚みが出たように感じています。印象に残っているトレーニングは何かありますか?
高山:ジェスチャーと姿勢の単元がかなり印象的でしたね。これまで自分は上手くジェスチャーをやれていると思っていたんですが、実際見てみるとちょこまかしていて、あまり堂々と見えていなかったことに気づきました。
山元:ジェスチャーは出した後、きちんと止めることが大事ですね。また、姿勢については体幹を意識して、両足で立って体を安定させることで堂々とした印象に繋がりましたね。
高山:本当にその通りです。また、レッスンが印象論ではなく、例えば腕を上げて下ろした後は何秒間止めたほうが良い、などと非常に具体的でしたので、少し意識するだけですぐに実践に応用できました。
山元:実際にトレーニングを受けてみて、どういった点で変化を感じられましたか?
高山:長年ずっと私のことを見ている街宣カーのドライバーさんに「今回は異様に話が上手くなっているな」と言ってもらいました。あとは、街頭で話をしているときに人から声をかけてもらったり、振り返ってくれたり、ということが以前より格段に多くなりました。
山元:それはすごいですね。ご自身のどういった変化によるものだとお考えでしょうか?
高山:話し方ももちろんあるとは思いますが、一番大きい変化としては内容の変化ですね。これまでの演説では、なんとなくかっこいいことを誰かの言葉で話しているようなところがあって、今思えば、誰にでも話せるような内容であった気がします。それに比べて今回は、恥ずかしいような話も含めて、自分にしかできない話、自分の体験や思いをたくさん盛り込みました。そこに共感してくれる人や、聞いてくれる人が増えたのではないでしょうか。
街頭演説って基本的に聞きたいと思って来てる人よりも、偶然その場にいてなんとなく聞こえてきている人の方が圧倒的に多いんです。だからこそ、聞いてもらうためには、政策の詳細を語るよりも、なんで自分が政治家としてやっていきたいのかの想いに共感してもらうことが必要だと感じています。
原稿を準備して演説に臨むことで起きた、話すことへの自信の変化に、自分自身もすごく驚きました。
山元:今回私も原稿作成に携わらせていただいて、高山さんのお人柄の魅力と、区政に対するこれまでの活動や価値観を知ることができました。その原稿を生かして、高山さんに堂々とお話しいただけたことはすごく嬉しいですね。
今回の選挙を通して一皮剥けた気がしている
山元:今回、結果を見させていただいたときに票数が大きく伸びていたと思います。演説をする際に、何か工夫されていたことはありますか?
高山:うーんそうですね。リアルタイムの一人一人の声やその場の空気は常に意識していました。例えば、ちょっとした休憩中に「みんな子育て支援の話ばかりだけど、私たちにも目を向けてよ!」なんて通りがかりのお婆さん言われたことがありました。その後の演説では、ちょっとお答えしますね〜という形でご意見に答えたりとか。
以前は同じような場面でも、なんとなく体裁の良いことを言って受け流していたこともありました。でも、今回は「出来ることは出来る、難しいことは難しい」と自信を持って受け答えが来ました。これはトレーニングの中でたくさん言語化して、言葉にしていた成果だと思います。どこから矢が飛んできてもどうにかなる、という自信が持てたことはとても大きかったです。
山元:聞いてくれる人一人一人とのコミュニケーションを大切にしながらお話を進められている点が、高山さんらしさであり魅力の一つですよね。
高山:そう言っていただけるとありがたいです。選挙は最終的には、何千票、何百票という単位で票を集めなきゃなりません。その数字だけを見ると焦ってしまうのですね。すると、多くの人に刺さりそうな、広くて薄くて無難な話をしたくなってしまうんです。でもそれでは逆に誰の心にも刺さらない。その場にいる一人一人に向けた話を丁寧に繰り返す方が伝わることを今回の選挙で実感しました。
26歳の頃から選挙に出ているので、有権者の中での私の印象は長らく「元気なお兄さんキャラ」だったように思います。ただ、もうそうも言っていられない年齢になってきたこともあり、どこかで変化しないといけないと。
そのきっかけとしてkaekaがすごく大きかったです。ちょこまかした元気なお兄さんキャラから、一皮剥けてそこそこ経験を積み、貫禄もついた政治家に少しずつ変化できてきているんじゃないかと思ってます。
山元:高山さんがもともと持っていた親しみやすさは残しつつ、また新たな武器を一つ手に入れた感じですね。
高山さんの思う政治家の仕事と、これからの挑戦
山元:選挙中や普段の公務の中で、言葉の大切さについて感じることはありますか?
高山:よくあります。皆様から聞くお困りごとは話し言葉で聞いて、それを役所の方に伝える時には書き言葉で説明しないといけません。政治家の仕事って通訳みたいなことだと思います。いろんな人に「こういうことをやっていきましょう」と伝えて、納得して、動いてもらう。それが一番の仕事なんです。だからこそ言葉の力はすごく大きくて、言葉の力を磨くことは間違いなくプラスになります。
kaekaのトレーニングの中で、文字に書いてみることと話してみることをたくさん繰り返しました。その中で気づいたのは、話し言葉と書き言葉って結構違うということです。通訳が仕事な政治家にとって、この訓練はすごく役に立つと感じています。
山元:高山さんの今後のビジョンを教えてください。
高山:自分自身のビジョンみたいなものはあまりないんですが、ミスを許せる寛容な世の中にしていきたいという思いが最近強いです。最近は窮屈なことも多い世の中ではありますが、そんな窮屈な中にもちょっと笑えることがあって、世の中が緩んで上手くまとまっていくことってあると思います。
私は、今の社会を少しだけ緩ませる存在になれたらいいな、なんて思っていますね。ほっこりしたり、少し笑顔になったり。そんな時間を大切にして活動していきたいと思っています。
山元:高山さんのお人柄がすごく伝わってきて素敵です。演説に向き合う政治家の皆さんにメッセージをお願いします!
高山:私がkaekaにきて学んだのは、かっこいいことを話すよりも自分の体に身についた自然体な言葉を話すことが一番大切だということです。
若い時はかっこよく見せたい気持ちももちろんありました。ただ、ハリボテの自分で見せかけるよりも、発展途上でもきちんと今の自分に自信を持って、それを見てもらうことのほうが大切だってことに気づけたのは大きいです。
自分に腹落ちした言葉で話すことで、人に伝わるし聞いてもらえる。私がkaekaのトレーニングの中で自分自身にしっかり向き合ったことで、得られたことです。