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ながいはなし

8
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#恋愛小説

〈小説〉くるしくて、息もできない

〈小説〉くるしくて、息もできない

【R-18】

1

指定された場所へ行くと白いワンボックスカーがハザードランプを点滅させて停まっていた。運転席にいる男の顔と身なりを確認するためには一度通りすぎて前へ回り込まなくてはならない。いずみは歩道の隅を歩き車を一度通りすぎる。肩に掛けたカバンを握る手に力が入る。スマホを取り出し人待ち顔で辺りを見渡す。視界にちらりと入った運転席の男がうつむいているのを確認してからじっと見る。禿げた中年や不

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〈小説〉マシュマロ

〈小説〉マシュマロ



何を見ているんだろうと思った。
探すように一生懸命見ている、視線の先には何があるのだろう。
不安そうだったり嬉しそうだったり切なそうだったり、色んな表情で何かを見ている有沢萌を、ぼくは無意識に目で追うようになった。
有沢が見ている何かが気になっていたはずなのに、いつの間にか有沢そのものが気になっていた。
有沢が見ているものは花でも木でも空でもなかった。いつも同じ一人の男子をずっと見ていた。

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