忘れてもきっと、覚えているから。
どんな覚悟をもってその言葉を伝えたのだろう。
見返りを求めず計算もない、ただ相手を思った純粋な言葉はこんなに胸を打つのか。
透くんと、真織ちゃんがお互いの存在に価値を見出だしていくように
いつしか私も2人に読みながら救われていたのかもしれない。
「今夜、世界からこの恋が消えても/一条岬」
この夏の映画化が気になって手を取った作品でした。
う~ん若い人向けの小説なのかなぁ…
ありがちなお涙頂戴の作品かな…
そんなイメージが先行して読み始めた自分を叱りたいくらい、
とても大切なことを教えてくれる、悲しくて美しくて、上質な物語でした。
毎日記憶がリセットされてしまう真織ちゃんを、自然に、でも大きな決意を持って支える透くん。
高校生にしては達観し老成しているように感じるのは、彼の家庭環境が影響しているから。
決して軽くはないものを、人は誰でも持っている。
でもそのなかで悲観せず、腐らず、前を向くのは大きな意思が必要で。
きっと一人では難しくても大切な人がいたら、私たちは毎日ちょっとずつ変わっていけるのかもしれない。
心が温かくなるのを感じながら読み進めていると、
突然崖に落とされるように感じる展開に、夢中になりすぎてページを読み飛ばしてしまったのかと思うほど。
彼が最後に望んだことは、
あまりにも儚くて、尊くて、なんて美しかったのだろうか。
気付いたら涙が出ていて、苦しかったです。
でも、読めて良かった。透くんと真織ちゃんに会えてよかった。そんな風に感じる作品です。
楽しかったこと、嬉しかったこと。自分を支えてくれる大切な記憶とともに、生きていると、忘れたくなるような思い出すと心が苦しくなる記憶が誰にでもあると思うのです。
綺麗事かもしれないけれど、そんな記憶があるからこそ
今の自分が出来ていると信じていたい。
いつか忘れてしまう記憶も、ちゃんと心にあると、完全に消えるわけではないと星に願うように僅かでも思いたい。
もし私が忘れてしまっても、大切なあなたには覚えていてほしい。
もしあなたが忘れてしまっても、私が覚えているから。
美しく素敵な作品でした。
映画の予告です。観に行くのがとっても楽しみです。
読んでいただき、ありがとうございました。
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