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明日になったら忘れる居酒屋撲滅運動

ビールは490円くらいで高くもなければ安くもない。1番の看板メニューは、だいたい800円くらいする馬刺し。でも、6枚くらいしか載ってないから、1人1〜2枚しか食べられず、結局のところ印象に残らない。他のメニューはありきたりなホッケとか胡瓜とかトマトとかそんなの。

内装も普通で、綺麗でもなく汚すぎるわけでもない。ちょっとベトベトしているラミネート加工された定番メニューと、くしゃくしゃの紙に手書きにされたオススメメニュー、謎の縦書きの紙に書かれて天井付近に掲げられたメニューがあって、結局どれから選べばいいのかわからず、客は途方に暮れつつ、店員におすすめを聞くも「全部おすすめです」と言われて余計に混乱してしまう。

結果、明日になったら忘れている。そんな居酒屋に訪れて、なんだか損をした気分になった経験は、誰しも味わったことがあるのではないだろうか。

僕は昨日、そういう気分を味わった。知り合いの店だったので、本人に辛口コメントをすることは控えているわけだが、こういう感想を抱かずにいることは難しい。煮え切らない思いで食事を終えて、僕はその居酒屋を後にした。

そういう居酒屋に人が訪れる理由は3つ考えられる。1つは「たまたまそこにあったから」という理由。2つ目は「知り合いがやっていたから」という理由。3つ目は「なんとなくチェーン店が嫌いだから」だ。

なぜかチェーン店を避ける人は、たまにいる。その人物が、大資本による市場の独占を嫌う左翼である可能性は低い。単に、チェーン店にはありがたみを感じられないという謎の思い込みを持っている場合の方が多い。特に旅行先なんかでは、チェーン店嫌悪の発作は起きやすい。

僕は大資本による市場の独占を嫌う左翼だが、旅行先であろうが気にせずチェーン店を利用する。チェーン店のメリットは、全国どこにいても同じ味を食べられることだ。つまり、旅行先でこそ、チェーン店の真の価値を味わうことができるとすら言える。

それに、大資本で効率よくやってくれた方が、やはり価格は安い。独自の地ビールを提供してくれるならまだしも、同じキリンラガーなら490円で飲むよりは、300円で飲みたいと思うのは当然の心理だろう。

もちろん、イオンモールが地域の商店街を破壊したように、僕の消費行動が地域の居酒屋を追い込む可能性があることは理解している。だが、それは僕のせいではない。僕個人としては、最小限の投資から最大のリターンを引き出したい。

とは言え、罪悪感もなくはない。できることなら地域の居酒屋を応援したいと思っている。だからせめて、居酒屋さんサイドには、応援したくなるようなお店を作って欲しい。

件の居酒屋は「居酒屋とはかくあるべき」という思い込みに支配されているように見えた。マーケティングとかいう言葉を使うのは嫌いだけれども、もう少し顧客のことを考えてくれてもいいと思う。どんなメニューが、どんなサービスが、どんな料金設定が喜ばれるのか。そういう観点だ。

例えば鳥貴族は全品の価格を統一したり、キャベツ食べ放題にしてお得感を演出しつつ、焼き鳥が割高であることを巧妙に隠し、しっかりと利益を確保している。勝男もビール価格を激安に設定し、看板メニューである唐揚げなどの料理でぼったくる。「お得感」と「これがウチの売りです」という提案。そういうアピールがなければ、客は途方に暮れるばかりだ。

また、メニューが多いことがメリットにならないことは、行動経済学を学ばなくても、自分の体験から理解できるだろう。

これを食えば美味くてお得。僕はそういう感想を消費したい。本当に美味しいかどうかや、本当にお得かどうかよりも、そういう感想を持てるかどうかが重要なのだ。

微妙に損した気分で家路につく悲劇的な人々を1人でも減らすために、居酒屋を経営している人は協力して欲しい。まずはベトベトのメニューを綺麗に拭くところからだ。そしてメニューの内容そのものも見直して、看板メニューとその他の料金設定、利益率を慎重に計算しよう。頼むよ。まじで。

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