ただいまおかえりごっこ

 甥っ子が2歳児保育に通うようになってから、3ヶ月。久しぶりに会うと、新しい言葉を覚えていたり、その言い方の癖があったりと、やっぱりコミュニケーションの多さが成長に関わっているんだなぁとしみじみ、ほのぼのと感心する。
 保育所では出来ていたりするのに、おうちに帰ってきたらできない(しない)ということもあるそう。そうかそうか、この歳からどこかでオンオフを切り替えたりしているんだろうな……。脅しを含んだ甘えんぼうパターンの嘘泣きも、ママにはちゃあんと伝わっているんだけれども、分かっていても「え? そうなん? 何が痛かったん」と耳を傾けているママの姿を見るとやたら感動したりする。おばさんとはそんなものである。毎日会うわけでもなく、少し離れた距離にいるのに、自分の姉妹の子どもという立場に愛着を持ちつつ、落ち着いていられる。この距離感が、分析っぽい思考に入る余地を与えてくれ、「人とはこんなふうに言葉を覚えていくのか!」と感動を味わえる立ち位置にいるのである。

 ある日、新しい遊びを教えてくれるようになった。カーペットの上からパンダのぬいぐるみを持って出ていったと思えば、そこからは目の届かない寝室に一度入り、「おかえりー」と言って現れたのだ。あらあら、こりゃあきっと、保育所で一緒にままごと遊びをするようになったのだろう。私は「おかえりー」と答えた後、お母さんパンダのぬいぐるみと一緒に礼をした。カーペットの部分がおうち、廊下がお出かけ中、寝室が出かけた先、という想像力を働かせる空間の使い方が面白かった。

「おうちで待ってる人が『おかえり』って言うんよ。だから、帰ってくる人は『ただいまー』って言うん」と言うと、分かったみたいで、次からは、カーペットのところに来て「ただいまー」と言うようになった。こうして、ただいまおかえりごっこを何度か繰り返すと満足して、次の遊びに移っていく。

 小さくて単純な遊びの中に喜びがある姿を見ていると、甥っ子ちゃんが大人になっていくのが、なんだか寂しいような気もする。少しずつ複雑で難解なものが楽しくなっていくのも、成長するってことなんだろうけど……。

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