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シーソーシークワーサー Ⅱ【65 同時多発トリガー】

【シーソーシークワサーⅠのあらすじ】

 母を亡くし、その孤独感から、全てを捨てて沖縄から出た凡人(ボンド)こと、元のホストの春未(はるみ)。

 一番に連絡をとったのは、東京の出版社に勤める絢だった。

 絢に会うまでの道のり、人々との出会いで得たことは何だったのだろう。島に帰った凡人は、母亡き後の、半年間時が止まっていた空間に佇みながら、生い立ちを振り返っていた。

 生前の凡人の母、那月は凡人を守って生き抜くために、ある決断をしていたのだが……


Ⅱ【65 同時多発トリガー】

 手を取り合った仲だったとしても、喪失する怖さで握りしめてしまえば、それは、一瞬にして束縛になる。途端に空気が薄くなる。そこから逃げ出したくなるのが人間だ。居心地が悪くなるばかり。その意思決定も実はだいぶ前に行われている。


「約束、でしたよね?」


 念入りに確かめた那月に、Masaの隣に並んでいる順子は何も言わない。こういう時の順子は、全ては夫の仕事のことで、私には何も関係ないという顔をしながら、夫であるMasaに寝返るのだ。

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