【シーソーシークワサー 25 のりまりトーク 】
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【シーソーシークワサー 25 のりまりトーク】
成田を出たバスはすぐに高速に入った。空港の隅にある停留所で、凡人の前に並んでいた、いかにも関西からきましたという女性二人は、バスの中でも凡人の前にいた。
並んでいる時からその姉妹のトークは面白く、凡人はバスの中の60分はこの姉妹に耳を任せていようと思った。いつか聞いた朝のラジオのようなキャッチボールが前の席で続いている。
「たっくんがさ、言うんやんか。無機質に続けられることがあればええんやって」
「ふーん、たっくんって初耳やけど、まり姉がハマってる経済系ユーチューバーかなんか?」
「いや、彼氏」
「ええ? そうやったんや? 初耳やん」
「ああ、そやった。まだのりちゃんには言ってなかった」
「こないだの彼氏、どうなったの?」
「それ、聞かんといて」
「って聞かれたいくせに。まり姉はいつも事後報告なんやから」
「だいぶん会ってなかったしなぁ。仕事中に惚気て妹にラインなんか送ってる暇ないわ。それに、この歳で、おノロケライン許されるのって、ブリジットジョーンズぐらいやん」
「まあ、そうやろな。女子同士のべったりな関係って、大概、大学の時に終わってるもん。無言で一緒の空間にいても何もストレスを感じないくらいがちょうどいいわー」
「たっくんは、そんな感じなんよね。出会った時から。普段は別に何もないんだけど、つい連絡したい瞬間がある」
「はい、のろけーーー!」
「だから惚気とちゃうって! とにかくさ、無機質って私の中には無かったんよ。どっか仕事には100%で入れ込んじゃうことばかりで」
「ああ、まり姉、それで何回も倒れてるしな。サボり方しらんちゅーか、休憩が下手というか。休憩してる間に、休憩がいつの間にか休憩になってないというか。実家でご飯作ってるときも、そうやん。わたしに用事頼めばいいのに、全部一人でやろうとしてんの」
「わたし、おかあさんの子やさけ」
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