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シーソーシークワサー 09【運命の輪】


 ゲストハウスに着いても、絢の既読はついていなかった。

 生ぬるく、湿気の多い夜だ。

 チェックインの手続きは緩く、最後のひとりを待っていたのだと当直担当のスタッフは笑っていた。宿の外まで聞こえていたあの三線は、シフトあがりのスタッフが弾いていたようで、酔っ払ってそのまま共有スペースに寝込んだ子を囲んで、宿泊客も一緒になって笑って打ち解けている。


「ねぇ、おにーさんも、タロット、やっていかない?」

 ここにくるまでに思い出したかつての客、占い師麗子のこともあり、ピンときた。どうして女子はそこまで占いが好きなのかよくわからないが、それでも今は、嫌な気はしなかった。

「ほら、一枚、引いてみてよ」

 酔った女の子があまりにもニコニコしながら言うので、それならと引いた。


「おおおおおおおお!!!!」
「キターーーーーー!!!!」

 顔を見合わせた女の子と、スタッフは俺を置いてけぼりにして盛り上がっている。
「なになに?どしたの?」
「いやあね、今日、何度もこの『運命の輪』が出るんですよ」
「こわーーーー!」
 女の子たちは口々にそう言った。
「絶対、今日なんかあるって。そうそう!麗子さんも今日の投稿で言ってたし」
「ん?麗子?」
「そうなんです。ほら、今インスタで人気の占い師さん。紹介でしか占わないって」
「ごめん、俺、SNSしないから」
「ええええええ?マジっすか」

 どうもこのノリにはついていけない気がして、一歩後ずさった。

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1,635字

ど田舎そだちど田舎、 ゆる!がんそロハス! わかやまきみの町からの、 定期エッセイです。 ベリーブ爺…

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