みんな分の一の僕~乙女座のきみの恋するpetit story~
きみの星座別 恋するpetit story
【みんな分の一の僕】
落ち込んでいる彼女を連れて、生石高原に向かった。昨秋のデートで、ススキの大草原にはしゃいでいた彼女の姿を思い出していた。あの時の君は、夜景を見ながら、悩んでいた僕にこう言っていた。
「晃が言う、『みんな』って、どんなの?その下に見えている家の明かりくらいの数じゃない?」
その瞬間、僕の中のもやもやは晴れていった。何気ない言葉だったかもしれないけれど、僕には、とっておきの思い出だ。今日は、僕がそのセリフを言う番かもしれない。
「何か悩んでるの? 去年、君が僕に言ってくれたことを覚えてる?」
「……うん。覚えてる。その下の家の数くらいのことなんて気にするなって。晃のお仕事の大変さを考えずに、エラそうに言っちゃった。私って、口をついて出た言葉をそのまんま言っちゃうみたいで」
「……その真っ直ぐな言葉に、僕は励まされていたんだってことを言いたかったんだ。僕は君のように真っ直ぐに感情を伝えるのは苦手だけど、僕みたいに君の言葉に励まされる人も、きっといるよ」
僕は少しの間、彼女を抱きしめ、この心音に乗る風の音を聴いていた。
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