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いつも雨が降る、あの人と私

その人と私が揃うと、なぜかいつも雨が降ることに、ある時どちらからともなく気づいた。
「私たちが揃うと、いつも雨ですね」
「あ、そういえば!」

そんな会話をしてから、9割くらいの確率で雨になる。
晴天が続く日でも、私たちが一緒に仕事をする日だけは、なぜか雨。
そして翌日からまた、晴れが戻る。
不思議なものだ。

ある時は、天気予報が晴れだったのに、帰り道で突然ゲリラ豪雨に襲われ、二人でびしょ濡れになったこともあった。


彼は今年から一緒に仕事をしているクライアントのメイン担当者だ。
今、私たちが取り組んでいるプロジェクトは、まさに山場を迎えている。
「ここを乗り越えれば大丈夫です」
「今、一番ストレッチがかかっていますが、頑張りましょう!」
そんな声をかけながら、相手の心が折れないように一緒に走っている。


そんなある日、彼が打ち明けてくれた。
「聞いてくださいよ。今日、うっかり右足と左足で違う靴を履いてきちゃったんです。黒の革靴と、黒のスニーカーですよ。自分でもびっくりしました」

「えー!そんなことってあります?」と笑いながら返したけれど、
心の中では思った。
きっといろいろ考え事をしていたんだろう。
それだけたくさんの責任を背負っているのだろう、と。


電話での相談も増え、時には2時間も話し込むことがある。
「あと一つだけ、聞いていいですか?」
その一言が何度も繰り返され、
「あと一つの球が、あとどれくらい飛んでくるんだろう……」
と心の中で苦笑しつつも、
相手の真剣さにこちらも全力で応えたいと思う。


昨日も打ち合わせがあった日。
彼がパッと顔を明るくして言った。
「ねぇ、かどわきさん!今日、晴れですね!」
「あ、本当だ!珍しい!」と笑顔で返した。

この瞬間、ふと思った。
こんな何気ない会話ができる関係性を築けたことが何よりも嬉しい、と。
プロジェクトの戦友として目標に向かってひたすらタスクをこなしていくのも大切だろう。
さらには、成果をしっかり出すことはもっと大切で。

でも、こうしてリラックスしながら、他愛もない話をし合える相手になれたこと。
それが、パートナーと呼び合える関係なんじゃないかな、と思って。
それが何より嬉しい。


小さなことを共有できる関係は、大きな仕事を成し遂げる力になる。
雨の日も、晴れの日も。
一緒に歩むその時間が、静かに心にしみる。

そして最後は、みんなで一緒に虹が見られたらいいな。

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