観たメモ 劇場版アンパンマン「勇気の花がひらくとき」

すばらしかった……

アンパンマン映画はヒロインに時の女優を起用する傾向にあります。本作のキララ姫は雛形あきこ。
でもってそのいわゆる劇場版ヒロインって「お姫様」であることが多くて、これはアンパンマンがヒーローだからかなあ。

以下ネタバレ。

本作、なんとアンパンマンに恋愛フラグが立ちます。そしてヒーロー、責任、個人の恋や愛、みたいなあれも感じる……

冒頭、キラキラ星(キララ姫実家)から逃げ出したキララ姫(身代わりにドキンちゃんをたてる)(逃げた理由は姫教育がうんざりだから)がアンパンマンに助けられるシーンがあるんですけど、ここで「あっ」てなるんですよ、アンパンマンが、あのアンパンマンが「あっちょっとかわいいこの子、好きかも」みたいな顔するんですよ!恋愛フラグの立った顔!
最初にこの顔みせて「本作ではそういうあれがあります」とわかる人には提示するんですよね。
そして逃亡中にパン工場に匿われ、キララ姫もまたアンパンマンに惹かれていきます。

が、思い切って告げたキララ姫の「好き」にヒーローは「僕もキララちゃんが好き、そしてみんなが好きだよ」ってこたえるんです、本心から。恋する1人の女にとってヒーローは残酷……

いろいろあってアンパンマンは勇気の花を失った状態で作られたパン頭(勇気三倍)でばいきんまんに応戦することになるんですが、このときのアンパンマンが「うわあ怖いよー」って逃げ回るんですよ。そりゃあこわいよあんなでかい鉄の塊が敵意もってぶん殴ってきたらふつうはさあ! というかみんなを守りたい気持ち自体はそのままあるけれど怖いものは怖い。

勇気の花というドーピングなしのあの性格がアンパンマンの「本来」の性格であるとするなら、ヒーローって存在そのものが残酷なのでは……痛みを知るただ一人であれ、ってコト……?

そしてこの三倍状態のアンパンマン、いよいよ死を覚悟し、キララにむかって「僕は君を、」みたいに言いかけるんですよ! これ三倍状態だからこその、「本来」の性格になってたからこそ、ヒーローじゃなかったからこそ言えたこといおうとしたんじゃないの! ねえ!

しかしそのタイミングでキララ姫が覚醒し、というか「自分がやらなきゃ」的な強い意志、そしてプリンセスとして認める存在に認められたことからノブリスオブリージュに目覚め、勇気の花を咲かせて逆転に持ち込みます。
ここでの「勇気の花がひらくとき」ドリーミング版の「絶対勝利確定BGM」っぷりがすごい。冒頭で同じ歌を子供の合唱で歌っていたときは静謐な歌だったのに。

いろいろあってばいきんまんは退治され、姫という存在に自覚的になったキララ姫とヒーローに戻ったアンパンマンは大団円でお別れします。
あーー、これ、もうこの二人は今後「そういう」立場でしか再会しないんだ、個人的になにかを結ぶ道は完全に消えた、でもヒーローと姫(おそらく女王になる)ってそういうことなんだ……冒頭の姫教育シーンで「アルデバラン王子との会食」みたいなスケジュールがセリフで読み上げられてたけど、たぶんそれフィアンセみたいな立場の人なんだ…… でも、それが主導者である王族とヒーローのそれだから……

みたいな、なんか本当に、いろんなテーマを感じられる名作でした。あと鉄の国の鉄じいもよかったな…… 若者の頑張りに斜にかまえてるけど外部から来た夢みたいな存在に真っ先にのっかっていっちゃうの……
数日反映しました、いい作品でした。


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