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本当に癒されるものの出会い方を春日武彦の本を読みながら考えている


最近、春日武彦の本を反復横跳び読書しています。
反復横跳び読書とは「なんか読書が巡航モードに入ったな」と思ったらすかさずスマホのかわりに別の本を読むという多動向け読書ハックです。
などともっともらしいことを書いてますけど、これは今でっちあげました。でも似たことやってる人はたくさんいるんじゃないかな。


風呂で読むのでべこべこしている

春日武彦ってのは精神科医の先生です。
そもそもの出会いはとあるゲームの二次創作をしていた際、「サイコパスってどういう考え方するんだろう」と思って、狂人の話をしてそうな精神科医の著書を探したことがきっかけです。私は解剖医の「死体は語る」という本も当時大好きだったので(今も)、きっと精神科医特有の、ノンフィクションでリアルな狂人の言動ケースがいっぱい読めるんだろうと期待したのです。

が、事実は逆でした。春日先生いわく「狂人の狂い方は薄い冊子一冊に収まる程度のパターンしかない」「映画みたいに起床直後から視界を真っ赤なライトが点滅し続け「殺せ、殺せ!」という声が響き続けるとかそういうのはない」「脳内物質が「思考をのぞかれている」という錯覚を見せるパターンが一番多くて、だからアルミホイル巻いたリする」「まじでパターン少ない」と、そのパターンの少なさをむしろお怒りの感じすらあります。「なぜ自ら狂気を選び取れないのか」とまで言う。

ええー……そうなんだ…… と思いながら読み進め、けれどそして気付いたんです、「この著者こそが狂人じゃん……」と。
ああそうか、やべーやつってのは整合性がとれない言動をとる人格のことではないんだ、判断基準が特殊(なにが正常でなにが特殊なのかの問題は置いておいて)な人のことを言うんだ、という大きな気づきを得ることができました。

もうね、たくさん本出してるんですけどいくつかタイトルだけ抜書きしますね。
・『ロマンティックな狂気は存在するか 狂気伝説の解体学』
・『心の闇に魔物は棲むか 異常犯罪の解剖学』
・『屋根裏に誰かいるんですよ。都市伝説の精神病理』
・『本当は不気味で怖ろしい自分探し』
・『私たちはなぜ狂わずにいるのか』

最高ですね。いずれもタイトル以上の中身です。

で、私、春日武彦の本よんでるときの「癒され度」すごいなーーってあらためて感じてたんですよね。久々に複数冊読んでて。
それなんでかなって考えて、「自分の超超超超絶上位互換の人だからだろうな」って思ったんです。

わたしも春日先生のように人間の観察とか推測とか好きだし、そこはかとなくねじくれたものの見方をするし、あとほかにもいろいろあるんだけども恥ずかしいんで書きませんが、「だいぶおなじ種族のような気がするな」って思ってるんですね。

そして自分の超超超超絶上位互換の人の、最高に面白い、楽しい、と思えるアウトプットに触れてるときって、ひるがえって自己肯定感の高まりみたいなものを感じるんですよね。私はそこはかとなくねじくれたものの見方をしててもその延長線上にこんなおもしろいしすごい存在がいるんだ! みたいな。
なんかこう書くと日本すごいポルノに浸かってる人と同じ快楽だな。でもそういうことじゃないですか?(開き直り)

これがもし清廉潔白で優しく思いやりにみちた人格のひとの本しか目に入らないようなあれだと、「そうならなきゃいけないんだ」みたいなのうっすら感じてしまってすごく生きづらくなる気がするんですね。
でもこんだけ性格悪くても(ついに言った)魅力的で興味を惹く存在であれるんだ、わたしは大丈夫、やれるぞ、みたいな、ほら、あるじゃないですか? 日本スゴイとかオタクスゴイとかを浴びて安心するのって、そういうことですよね? ね?

自分自身の性質、素質、資質が「そのステータスとスキルセットでも大丈夫」と強く信じられる、そういう存在に触れる、それこそが「癒し」と呼ばれる行為と感情の正体なのではと私は考えています。

で、それが一番つよくかなうのって自分自身の超超超超絶上位互換の人なんだろうなって。つまりは自己肯定だから。品田遊先生の著作や動画に感じる癒しもたぶんそれ。

だからきっと本屋によく平積みされてる「大丈夫、だよ。」って手書き文字の帯がついたパステルカラーの表紙で文字が大きい本とかに心底癒される人もいるんでしょうね。もともと優しいいい人ならあれで本当に癒されるんだろうな。肯定ペンギンとか。

でも私は性格悪めな人のひねたものの見方の本が一番何よりも癒されるから……

この「結局他者の中に見出す自己のみがあるのでは」ってのはアニマアニムスにも通じる考え方ではあるんですけど、自分にとっての最高の癒しツールをまたひとつ強めに自覚できたので、ここに記します。
春日先生は自分の本を「癒し」に使われてると知ったら死ぬほど嫌そうな顔になって「手元にあるわたしの本を全て燃やせ」って言ってくるかもしれないけど。

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