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読んだ:カササギ殺人事件(上下)

読みました。

某所で面白いと聞いて図書館にてあれしました、おもしろかったです。
以下ネタバレあり。核心的な話はしてないから大丈夫だと思うんですがまっさらで読みたい人は閉じたほうがよいです。
ある程度私のプレゼンを見て見たい人は読んでも大丈夫。



上巻は現代の女性編集者による軽いプロローグで「カササギ殺人事件」を読みはじめるシーンから始まります。
そこから文庫版では、文庫とおんなじ体裁の中表紙その他がもう一度はさまれて劇中劇としての「カササギ殺人事件」が展開していく流れ。

カササギ殺人事件はアガサ・クリスティの格調高い雰囲気そのままに進み、この完成度も本当にすごい。ただクリスティと違って「すごくドラマ的な場面転換が多いな」と感じました。あとで著者の経歴調べたら推理ドラマの脚本をやってた人だそうでなるほど……まあ脚本家でなくても近年の海外文学は全体的に海外ドラマの「間合い」が備わってるなと感じます、マーダーボットシリーズもそれが強かった。カメラが定点にあるクリスティとはそのあたりで読みやすさの雰囲気が大幅に違います。
実際の80年代のイラストレーターと令和の若者が書く80年代風レトロイラストの違いみたいなものが確実にある。
日本の近年の文芸作品はアニメ的な場面転換や雰囲気で進むことが多いですが(邦画見てないから邦画っぽいことに気づいてないのかもだけどやっぱりアニメじゃないかなって気がする)、海外だとドラマになるんですね。

で、いよいよ犯人がわかるぞ、というところで上巻が終わり。
下巻は上巻の序盤に出てきた女性編集者の一人称で進んでいきます。そしてこの女性が殺人犯の追跡を行うことになる……

感想。

読書家だったり、読書でなくてもドラマとかアニメとか漫画とか、なんらかの作品に深く傾倒して「こんなにすばらしい作品はさぞ高い志でつくられたに違いない」「作者も人格者に違いない」と心酔してしまった経験がある、そしてそこから冷や水をぶっかけられたり茹でられてるカエルであることにじわっと気づいたりしたことのある「ファン」全てにぶっささる〜〜〜〜〜〜〜ってなりました。

コナン・ドイルがシャーロック・ホームズを嫌っていたのもアガサ・クリスティがポワロを嫌っていたのも有名な話。国内では「本当の」ハードボイルドを発表しても泣かず飛ばず、開き直って「お前らこういうのがいいんだろおらおら」と書き散らした新宿鮫が大ヒットした大沢在昌などが思い出されます。
あとは漫画では進撃の巨人のどシリアスシーンに隠されているギャグ擬音。あれはおそらく作者の精神を現実に繋ぎ止める、というか「あの世界」に沈み込まないために重要な存在だったのではと思っています。所詮俺の創造物、的な意味の……

著者は名探偵の続編を公式に執筆してきた人だそうで、でもってテレビの脚本もやってきたそうで、やりやがったなこいつ〜〜っていう気持ちよさとか「大好きだったものがその創造者によって台無しにされたやるせなさ」とか、そういう、なんか、あーー、ある、そういう経験、あるんだよ「物語」を愛したことがある人は多かれ少なかれ、そう、そうだよな〜〜〜〜。

わたしスピッツの「メモリーズ・カスタム」は週刊少年誌にどはまりしたかつての少年が「あのころあんなに夢中になってたけど、しょーもなかったな」って思い返す歌だって数年言い張ってるんですけど、なんかそういう……ラストが本当に、そう、そういう……あれにはそんな価値があったわけではないけれど、だからってくだらないものだったと切り捨てることはできない、作者のお前さえいなければよかったのにと思ってしまう、そういう……

完璧に完結したお話ですが、続編出てるみたいなので読みます。

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