【詩】月の精

ないものを欠けていると感じるのは全部月のせいだ。夜になるとみんなの頭上で、休むことなく満ちて欠けてを繰り返す。中学の理科の先生が、本当に無くなってるんじゃなくて、太陽と地球と月の位置関係で見えなくなるだけだって教えてくれた。欲望は月みたいに有って、自分のそれが真ん丸で、自分と違う人には、ありえないとか、いずれ分かるよとか、純粋ぶるなとか、流行りだよねとかって言うんだ。一人として真ん丸人間はいないのに、一人残らず真ん丸欲望だと思ってるみたい。
親睦を深めよう、とかでじゃれ合って投げる言葉は、地球にはぶつからないで、月の裏側をべコベコにしてるんだ。目を見て話してくれる君には、何光年も前の隕石の殴り跡は見えない。黒と灰色の世界から見える、緑と青が出逢う地球は、交流が多くて羨ましい。風と海流で命が巡ってる。六分の一の重力じゃ、自分の四肢をくっつけておくので精一杯だよ。言葉で概念を固定しないと、簡単に宇宙空間へ漂い出ていく。それでも、なんとか自分を保ちながら、ふわぁんふわぁんってあるきながら、月のうさぎさんを探している。

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