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KADOLABO 011 Re:Birth


諸言

ホップ(Humulus lupulus)には、多くの種類のフレーバー化合物が含まれている。ホップのフレーバー化合物は、主にルプリン腺に含まれるホップオイルに由来する。様々なテルペノイド、 エステル類、アルデヒド類、ケトン類、硫黄化合物などがホップの主な香味成分としてよく知られている。モノテルペンアルコール、揮発性チオール および分岐鎖構造を持つホップ由来エステルがホップ風味に寄与していることが明らかである。また、イソ酪酸やイソ吉草酸は、ホップの熟成によってできる化合物であり、ビールのオフフレーバーとしても知られている。しかし、これらの脂肪酸は、分岐鎖アルコールと反応することで、イソ酪酸エステル(イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸イソアミル、イソ酪酸2-メチルブチル)やイソ吉草酸エステルとなる。これらのエステルは青リンゴ、アプリコットのような風味を持つ。しかし、これらのエステルの前駆体は、煮沸および発酵中に不安定になる可能性があると報告されている。そのため、レイトホッピング/ドライホッピングに寄与すると期待されている。よって今回は、逆転の発想を生かし、あえて熟成させたホップをドライホップで用いることで、イソ吉草酸エステルやイソ酪酸エステルをビールに寄与することを試みた。
これらの脂肪酸が、エステルに変換されるのは、低pHの条件下のほうがエステル化されやすいので、次の手法も試みた。
Lachancea thermotolerans と呼ばれる酵母は、グルコースを資化して乳酸発酵を行うという特徴を持っており、サワービールの醸造に適した酵母としてしられている。よって、グルコースを麦汁に添加することで、乳酸発酵を活発化し、pHの低下(酸味付け)を行った。

方法

ペレットのホップを、37℃の恒温機に2週間放置をし、熟成ホップを生成する。
麦汁にグルコースを添加し、酵母(Philly Sour)をピッチした。十分に乳酸とアルコール生成ができた発酵後期に二種類の熟成ホップと通常のホップをドライホップし、発酵が終わり次第、冷却と熟成し、ビールをパッケージングした。

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追記

瓶内熟成による味わいの変化が報告されている。熟成ホップ由来のRawなキャラクターが期待するエステル成分へと変化していることが期待される。

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