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【連載】わたしの読書記録術 ゲスト:みおりん ――窪美澄『夜空に浮かぶ欠けた月たち』を読んだあとに。

新しい本を1冊読む度、過去に読んだ本の記憶は少しずつ薄れてゆくものです。
あんなに心を揺さぶられたはずなのに、気が付けばさっぱり思い出せない——。

そんな経験がある方におすすめなのが「読書記録」。
いつどんな本を読んで、何を感じたのか。それらを整理しておくことで、1冊1冊から得た感動をいつでも思い返すことができます。

このコーナーでは、毎回特別なゲストをお招きして、とっておきの「読書記録術」を教えていただきます。
記録の仕方もこだわりも各人各様。思わずまねしたくなるアイデアに出会えるかもしれません。

本を閉じたあとに始まる、「読書時間のつづき」を一緒に味わい尽くしましょう。

※本記事は2023年11月12日にカドブン(kadobun.jp)に掲載した記事の転載です。



みおりんが教える「わたしの読書記録術」

ゲストのご紹介

みおりん
勉強法デザイナー。地方から自宅浪人で東京大学に合格した経験をもとに、子どもから大人まで使える「ごきげん勉強法」を発信中。著書に『大学合格を引き寄せる! 東大卒がおしえる 逆転おうち勉強法』(KADOKAWA)などがある。
幼いころから本が大好き。最近は小説・エッセイからビジネス書、絵本まで幅広いジャンルの本を年間80冊ほど読んでおり、読んだ本や読書術を時折YouTube「みおりんカフェ」やブログで紹介している。

今回記録する1冊

選ばせていただいたのは窪美澄さんの連作短編集『夜空に浮かぶ欠けた月たち』です。

窪さんのことが以前から気になっていたというのがいちばんの理由なのですが、さらに本の装丁にとても惹かれました。夜の景色なのだけど、真っ黒で真っ暗な夜ではなくて、どこか晴れやかな、蒼い夜……というような。「欠けた月」ではなく「欠けた月たち」と複数形になっているところも気になり、なんだろう、読んでみたい、と感じました。

「読書記録術」を大公開!

わたしは本のジャンルに関わらず、次のような流れで読書記録をつけることが多いです。

1.  気になった箇所・心に響いた箇所・あとから復習したい箇所などに、ふせん(紙の書籍の場合)やハイライト(電子書籍の場合)をつけながら読む
2.  読み終わったらノートとペンを用意し、ふせんまたはハイライトのついたところを適宜まとめていく
3.  その後もときどき読み返して内容をおさらいする

実際の写真もお見せしながらご紹介したいと思います。

1. ふせんやハイライトをつけながら読む

本を読みながら、気になったところやあとから読み返したいところにふせんを貼っていきます。

ふせんは、折れたりちぎれたりしにくいフィルム製のものを選んでいます。また、印をつけたい行がはっきりわかるよう、幅が細めのものを使うようにしています。

電子書籍で読むことも多いのですが、その場合はハイライト機能を使って印をつけています。どんどん先を読みたくなってしまうタイプなので、メモ書きなどはせずに読み進めます。

2. 読書ノートを作る

本を最後まで読み終わったら、ノートとペンを用意して読書ノート作りをスタート。

使っているノートは、普段「自分会議ノート」と呼んでいるものです。主に自分との問答をするためのノートですが、読書記録もここに書いています。読書専用のノートを用意してもいいのですが、自分会議のメモと読書記録はともに「あとから何度も読み返したいもの」なので、同じノートにまとめることでちょこちょこ「ついで読み」ができるようにしています。

ノートはB5サイズ・無地のものと決めています。罫線が入っているとどうしてもそこにきれいに収めようとしてしまうので、自由にイメージを発散できる無地のものにこだわっています。

ベースは黒のボールペン、メモはカラーボールペン、タイトルは太めのサインペンで書きます。見出し作りにはマーカーペンを使っています。

最初に書くのは日付と書名、著者名です。今回は本のイメージに合わせて、タイトルにブルーブラックの筆ペン風サインペンとグレーのマーカーを使ってみました。

つづいて本文で気になったところをまとめていきます。ふせんまたはハイライトのついているところを冒頭から順に追っていきます。

特に形式を決めているわけではありませんが、「見出しをそろえる」「なるべくページ番号を書く」ということは意識しています。

今回のノートでは作品のイメージに合わせ、各章(各短編)のタイトルに薄紫のマーカーを引いてみました。心に残った表現、気になった表現には水色のマーカーを引いています。そして、気になった理由やそのとき思ったことはブルーのボールペンで書き込みました。

『夜空に浮かぶ欠けた月たち』は6つの短編(+エピローグ)から成る連作短編集。それぞれの短編について印象的だったところをまとめたあと、全体として心に残ったところを最後にメモとして書き留めました。

今回は、「『月』の表現とタイトル」「『……』の表現」「各章(各短編)のタイトル」について思ったことをそれぞれ書いています(ちなみに、「月」のイメージに合わせて淡めのイエローのマーカーを使ってみました)。

と、こんな感じで、見開き2ページのノートが完成しました。

「読書記録」のこだわり

こだわり……というほどかわかりませんが、わたしが意識していることは次の3つです。

1. 「絶対に記録をする!」と息巻かない

読書記録に限らず、「毎回記録する」って結構大変なことですよね(特にわたしのような怠惰で継続力のない人間には……(笑))。

「読書をしたら必ず記録をしっかりつける」と決めてしまうと本を読むこと自体のハードルが上がってしまうので、わたしは「記録したいと思ったときだけ読書ノートに書く」ということにしています。

ただ、「いつ・なんの本を読んだか」ということだけはわかるようにしておきたいので、読書アプリを使って日付と書名は記録するようにしています。

(去年はこんな感じで、アプリと併せて「読書記録しおり」にも書き込んでいました)

2. あとから読み返すときのことを考えて書く

普段ノート術について発信するときにもお伝えしているのですが(わたしは楽しい勉強法やノート術を発信する「勉強法デザイナー」という仕事をしています)、こうしたノートは「書く」が3割、「読み返す」が7割の効果をもつと考えています。あとから読み返す自分のことを考え、なるべく見やすく、読み返したくなるような書き方を心がけています。

基本的なことですが、文字を書くときはなるべく丁寧に。そして手のひらや指でこすれてしまわないよう、シャーペンや鉛筆ではなくボールペンで書くようにしています。ボールペンは水性のものだとマーカーを重ねたときににじんでしまうので、必ず油性のタイプを使っています。

3. 書き方のルールを作りすぎない

読書記録ノートに書く内容を、わたしははっきりと決めていません。「日付」「書名」「著者名」は必ず入れますが、それ以外は固定のルールを作らないようにしています。

あまり書く項目を増やしてしまうと、ノートを書くときに意識がそちらにもっていかれてしまうし、記録をつけることのハードルが上がってしまうかなと思います。あえて自由度を残すために、無地のノートに好きなように書き込めるようにしています。


書籍情報

書名:夜空に浮かぶ欠けた月たち
著者:窪美澄
発売日:2023年04月11日
ISBNコード:9784041113448
定価:1,870円(本体1,700円+税)
総ページ数:240ページ
体裁:四六判
発行:KADOKAWA

きれいな形でなくてもいい。 きっと誰かが照らしてくれる。
東京の片隅、小さな二階建ての一軒家。庭に季節のハーブが植えられているここは、精神科医の夫・旬とカウンセラーの妻・さおりが営む「椎木(しいのき)メンタルクリニック」。キラキラした同級生に馴染めず学校に行けなくなってしまった女子大生、忘れっぽくて約束や締め切りを守れず苦しむサラリーマン、いつも重たい恋愛しかできない女性会社員、不妊治療を経て授かった娘をかわいいと思えない母親……。夫妻はさまざまな悩みを持つ患者にそっと寄り添い、支えていく。だが、夫妻にもある悲しい過去があって……。

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