何も言わず
そうだ。鎌倉へいこう。
時間が出来た。そんな理由で僕は電車に飛び乗った。いや、少し旅に出たかったんだと思う。
頭の中で渦巻いてる悩みを忘れたかったのか、もっと向き合いたかったのか、今になってはもう覚えていないけれど。
電車のアナウンスが次々と知らない駅名を告げる。窓の外では、ビルが家に変わり、家が山に変わる。そして、ようやく、木々の間から海が見えた。
今日は、大仏さんに会いに行く。と、それだけ決めて駅から大仏殿を目指し歩いた。
6月だというのに陽射しはもう8月のそれを思わせた。汗を拭い、坂道を登る。
駅から15分程で到着し、いざ大仏殿へ入るとすぐ視界に飛び込んできた。何も言わず目を閉じたまま座す大仏さん。
その瞬間、思わずため息がもれた。
悩める内が華。
そう言われた気がした。
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