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富士フイルム X-H2レビュー(後編):やはり4000万画素はよい! タムロン150-500mmのインプレも添えて

検証・テキスト・作例写真:豊田慶記
大手メーカーでカメラ開発に携わった経験をもつ写真家。現在はWebやカメラ誌などで活動中。車とカメラ好き。Twitter

先日、本noteで紹介しました富士フイルムX-H2のインプレッション後編になります。

なぜ後編をするか?というと、前編でテストした個体は発売前のファームウェアだったことが影響し、使用感に関わる部分に不具合がありました。通常であれば、そういった状態でも実力の片鱗は分かりますが、X-H2は富士フイルムを代表するフラッグシップモデルですので、真の実力を確認したいという気持ちがありました。前編は以下からどうぞ。

今回は発売後のアップデートv.1.01を適用した製品版でのインプレッションになります。10月27日公開のv1.1.0はテスト時点では未公開でした

4000万画素のイメージセンサーを搭載するX-H2のボディ©️fort

まずはじめに、X-H2シリーズの特長を紹介

そもそもX-H2シリーズには以下の2モデルがあります。

  • X-H2S:高速フラッグシップモデル

  • X-H2:高画素フラッグシップモデル

同じ操作性でそれぞれ別の用途に対応する2つのフラッグシップモデルによって、適材適所でボディを選択できるシステムを構築しています。

X-H2Sの特長:他社のフラッグシップからの乗り換え需要も睨んだ意欲的なモデル

  • 高速読み出しできる積層構造の2600万画素のイメージセンサー:画素数は従来機のX-T4などと同等の2600万画素のまま積層構造のCMOSセンサーを採用して高速読み出しを実現。デジタルカメラではセンサーの読み出し速度は非常に重要な意味を持っています。というのも1秒間に読み出せる情報の回数が多いとそれだけ多くの演算処理ができますので、AE/AWBはもちろんですが特にAF性能に大きな影響を与えます。明るさにもよりますがX-H2Sでは毎秒120回のAFスキャンを行うため高いAFの追従性が期待できる

  • 超高速連写:ブラックアウトフリー(連写中にライブビュー表示がブラックアウトしない)の40コマ/秒の超高速連写や記録メディアにCFexpressを選択した場合には30コマ/秒のJPEG記録で1000コマ超の連続撮影を可能とするなどのスポーツやネイチャーシーンで強力に撮影をサポートしてくれる高速性

X-H2の特長:静止画・動画のどちらも得意なモデル

  • 4000万画素をはじめとするXシリーズ最高画質:今回紹介するX-H2は、4000万画素クラスの撮像センサーを搭載とX-H2Sと同じ画像処理エンジンを搭載しXシリーズ史上最高画質を実現(というのが富士フイルムのアピール)

  • APS-Cフォーマット機では初となる8K/30pの動画記録

  • AF性能はX-H2Sベース:撮影の快適性に大きく影響を与えるAFシステム。アルゴリズムはX-H2Sと同じものが採用されています。イメージセンサーの読み出し速度はX-H2Sの約1/5となっていますが、X-H2では画素数が多いためAFに使用する像面位相差画素をより多く配置でき、より精密なAF制御が可能です

  • X-H2Sには非搭載のAIを用いたAWB制御

簡単にX-H2の特徴を説明すれば静止画・動画のどちらも得意という特徴を持っています。また、X-H2Sにはない特徴として、AIを用いたAWB制御が搭載されているなど、用途と仕様に応じた最適化が図られています。

動画撮影も重視したスペックを備えるX-H2 ©️fort

X-H2製品版の実写インプレッション

まず前回のテストと同様のシーンと対象でチェック撮影を行いました。朗報として、前回のテストで生じたダイヤル操作のレスポンスが悪いことや、AFに関する不具合のほとんどが解消されており、非常に快適に撮影できました。

X-H2Sとのオートフォーカスの性能差はごくわずかで、ソニーやキヤノンユーザーでも納得できそうな仕上がり

X-H2Sと比べたとき、個人的に気になっていたのがAFの感触の違いです。製品版では少しその差を縮めているように感じましたが、やはり読み出し速度の差が如実にあらわれてしまうシーンは動物園撮影でもあるようで、特に被写体認識AFやAF-CでトラッキングさせるようなシーンではX-H2の方がワンテンポ遅い(と言っても極僅かではあります)、そんな印象があります。とは言え、従来機であるX-T4よりもAFの印象は大きく改善されています。このAF性能であればソニー α7 IVシリーズのユーザーやキヤノン EOS R5/6ユーザーであっても「X-H2は悪くないぞ」と感じるハズです。

またX-H2クラスのAF性能を持ったカメラであれば、スナップシーンであってもAF-Sを使う状況がかなり減ったという印象があります。AF-Cでトラッキングさせながら撮影した方がピント精度が高く構図の自由度も高いから、というのがその理由になります。特に近接撮影時はAF-C性能が如実に反映されます。カメラに寄ってはトラッキングが安定せず、意図しない対象を追い掛け回すこともありますがX-H2はカメラを信頼して撮影ができ、とても好印象でした。

X-H2 + XF56mmF1.2 R WR ISO125 F1.2 1/300s ©️豊田慶記

X-H2で撮影した写真はAPS-C機で撮影したとは思えない、ワンサイズ上の感触

アップデートで本来の実力をチェックできたので、X-H2の画質により注目できました。言葉にするのが難しいですが、X-H2は「いつもより何だかキレイで立体的」という写りです。画像をチェックする限りではAPS-C機で撮影したとは思えない、ワンサイズ上の感触があります。実はこれと似たような感覚をLUMIX S1シリーズが登場した時にも感じました。LUMIX S1シリーズはフルサイズ機ではありますが、階調再現性の上手さからフルサイズ機で撮影したとは思えないほど豊かな奥行きを感じました。それと同じことがX-H2でも味わえます。特にソニーのα6600などのα4桁シリーズなどから引っ越してきた場合には大きな感動があるかと思います。

AF性能だけで言えば、間違いなくX-H2Sが良いと思いますが、その代わりX-H2Sを凌駕する高精細な描写を味わってしまうと「やはり4000万画素もよいなぁ」という気持ちが支配的になります。

X-H2+XF16-55mmF2.8 R LM WR ISO320 1/120s ©️豊田慶記


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X-H2+XF70-300mmF2.8 R LM WR ISO3200 1/250s ©️豊田慶記
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X-H2の独自機能「AIによるAWB制御」はやや期待外れ

AIによるAWB制御という新しい機能がX-H2には搭載されています。X-H2にはAUTOホワイト優先・AUTO・AUTO雰囲気優先の3つのAWBが搭載されていますが、AIによるAWB制御となるのはAUTOのみとなります。
エンジンの世代が2世代異なりますが、先代機であるX-H1と撮り比べしてみました。

富士フイルムにAIによるAWBの意図を確認したところ

従来の機種は雰囲気のよい色味で写っているものの、実際の色味と違うので通常のAWBを実際の色味に近づけた

とのこと。
従来機と新型の間をとってるのが雰囲気優先で、これだとAIは動きません。

結果から言えば、X-H2の方が安定しているという印象です。というのも、職業柄同一シーンで複数枚バリエーションと抑えで撮影しますが、こういう撮り方をするとX-H1では時々トンデモナイWBで驚かされることがあります。もちろん普通にスナップなどを楽しむ場合には雰囲気をよく捉えていると感じられるAWBなのですが、時々やってくる大外しが印象を悪くしています。

こういう大外しがX-H2ではかなり減っていますので、より安心して撮影可能になりました。その一方で、テストした限りではX-H1の方が雰囲気に適した表現をしてくれるシーンが多く、メーカーが発表会でアピールしたほどの効果があるとは思えませんでした。もちろん悪いことではありませんが、期待とは異なる結果だったので少し残念です。

▼テストで違いがでたシーン

X-H2 AWB(AIが適用される)©️豊田慶記
X-H2 雰囲気優先(AIが適用されない)©️豊田慶記
X-H1のAWB ©️豊田慶記

▼富士フイルムがAIの効果を最も感じやすいとする暗めのミックス光源下での比較ですが、AI処理が入らない雰囲気優先とほぼ同じ結果に。

X-H2 雰囲気優先(AIが適用される)©️豊田慶記
X-H2 雰囲気優先(AIが適用されない)©️豊田慶記
X-H1のAWB ©️豊田慶記

Xマウント版が登場! タムロン150-500mmF5-6.7 Di III VXDをX-H2で使ってみた

今回は、新たにタムロンから登場した150-500mmF5-6.7 Di III VXD ( Model A057 )とのマッチングも含めてチェックしています。このレンズはベスト超望遠ズームレンズとして家電批評の誌面でも紹介していますが、その魅力的なレンズのXマウント版が登場し筆者としても大きな期待を寄せています。

ちなみにEマウント版のレビューを家電批評に掲載ています。

さて、150-500mmF5-6.7 Di III VXD はフルサイズフォーマットのイメージサークルに対応する超望遠ズームレンズですが、そのレンズをAPS-CフォーマットのXシリーズで使うには贅沢な仕様となっています。何故「贅沢」という表現をしたのか?というと、イメージサークルの中心部分を使うことになるので、画質という点で有利になります。なおXシリーズで使う場合にはフルサイズ換算で225~750mm相当画角になります。

その一方で、APS-C専用設計のレンズと比べてどうしても大きく重くなってしまいます。実際に全長約30cm、最大径が10cm弱、重量は三脚座込で約2キロとかなりの体躯になります。このクラスのフルサイズ用レンズとしてはギリギリ持ち歩きのできる超望遠ズームレンズとして、コンパクトという表現で紹介するのもやぶさかではありませんが、APS-C用としてみるとかなり大型ですので、テレ端500mm(換算750mm画角)を必要としているか?が、このレンズを選ぶかどうかの決め手になるでしょう。とは言え現状では選択肢が殆どないので大きな問題ではないのかも知れません。

Xマウント版だけの特徴として、ピントの送り出し量を変更できる「MF SPEEDスイッチ」が追加され、レンズとしての魅力を向上させる改良も施されています。
MF SPEEDスイッチについては、通常状態は1で、スイッチを2にするとマクロ撮影時などのようなシビアにピント合わせをしたい場合に有効な微動モードになります。

このレンズを動物園での撮影を楽しんでみました。X-H2自慢の被写体認識AFも問題なく動作し、作例では鳥類を撮影していますが、撮影時は強力な瞳AFで撮影が快適でした。また肝心のAF速度と精度についても申し分なく、撮影に集中できました。ドッグランなどの動きの激しい対象を狙う場合には純正レンズの方が良いと思いますが、それ以外であれば撮影を楽しむことができそうです。

X-H2 + Tamron 150-500mmF5-6.7 Di III VXD ISO1600 F6.7 1/160s ©️豊田慶記
X-H2 + Tamron 150-500mmF5-6.7 Di III VXD ISO400 F5.6 1/60s ©️豊田慶記

ただし、AFに不具合もあります(X-H2との組み合わせ)

ただし、気になる動作があることも事実で、v1.0.1のファームウェアでは暗所や低コントラストのシーンではAFが動作しなかったり、低速でAFが駆動し5~6秒掛けてAFサーチした後に大ボケで非合焦しカメラが音を上げる、という症状が何度かありました。これはレンズ側の都合なのか、ボディにまだ不具合が残っているのか、については分かりません。前者についてはX-H1との組み合わせでは見られなかった症状であることは確かです。なお、この問題は富士フイルムによるとv1.1.0のファームウェアで解決しているとのこと。

また調子良く被写体認識していたのに突如至近端までピントが駆動してしまうこともありました。ある程度はファームアップなどで対応できることだと思いますので、今後の情報に期待したいところです。

ピントを外した例と合焦した例

2.8km先の看板の文字が読み取れる解像性能

描写について、Eマウント版でも感心していましたがXマウント版でもズームレンズとは思えないほど解像力が高いことには感激しました。例えばハシビロコウの羽毛をシャープに再現していましたし、近接時にも絞り開放から見事な描写で写りに関しては文句の付けようがありません。

X-H2 + Tamron 150-500mmF5-6.7 Di III VXD ISO1000 F5.6 1/250s ©️豊田慶記
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ちなみにどのくらいの性能があるのかを分かりやすく表現したのがコチラ。40MPのX-H2と組み合わせることで2.8キロ先の看板の文字を判読できています。1キロを超える撮影距離では大気のゆらぎなどの影響もあり、「バズーカ」などと形容される大口径超望遠レンズであっても難しい条件ではあります。ともあれ、実に見事な光学性能を持っていることが分かるかと思います。

150mm ©️豊田慶記
500mm ©️豊田慶記
500mmの拡大

スナップシーンでこのレンズを扱うにはそれなりの体力が必要ですが、純正の超望遠ズームレンズにはない接写性の高さが魅力です。というのも、XF100-400mmの最短撮影距離はズーム全域で1.75m、XF150-600mmについては最大撮影倍率が0.24倍となかなか良いですが、ズーム全域で最短2.4mとどちらのレンズも物理的に寄れません。この点で、本レンズはワイド端(150mm時)で0.6m、300mm時は実測で約1.5m、400mm以降は1.8mで、最大倍率もワイド端で0.32倍、テレ端で0.27倍と使い勝手で純正レンズを凌駕しています。

もちろんフジフイルムも最短撮影距離が長いという課題を放置しているわけではありません。テレ側の画角を抑えたXF70-300mmという絶品の望遠ズームを用意しています。こちらはほぼ500ccのペットボトルと同等のサイズと重さでありながらズーム全域で0.83mまで寄れ、撮影倍率もテレ端で0.33倍までいけるレンズでもありますので、フジの製品企画的には超望遠ズームは得意な領域を伸ばし、それ以外のシーンではXF70-300mmによって撮影領域の拡大を図る、という適材適所の姿勢が貫かれています。

XF70-300mm F4-5.6 R LM OIS WRを装着したX-H2 ©️fort

一方のタムロンレンズは超望遠ズームレンズでありながら接写性を高めることで純正レンズがカバーしていない部分の魅力で勝負している、とその立ち位置を理解できます。こうした製品のコンセプトを読み解くことで、例えば1本で色々なシーンに対応させたいのであればタムロンレンズが適していますし、コストは掛かりますが目的に応じた使い分けて効率的に運用したい場合は純正が良さそうだ、という予測を立てることができます。

富士フイルムが公開した対応レンズリストについて

X-H2登場時に話題となった「X-H2対応レンズ」についても検証してみました。絞り開放でも周辺までシャープな解像で4000万画素を余すこと無く楽しむことができるレンズ、という意図で公表したとのことで、ここに載っていないレンズでも少し絞り込めば問題なく使えるということです。

以下レンズご使用時に、X-H2の4020万画素高解像をフルにお楽しみいただけます。
XF16mmF2.8 R WR / XF18mmF1.4 R LM WR / XF23mmF1.4 R LM WR / XF23mmF2 R WR / XF27mmF2.8 R WR / XF33mmF1.4 R LM WR / XF35mmF2 R WR / XF50mmF1.0 R WR / XF50mmF2 R WR / XF56mmF1.2 R WR / XF80mmF2.8 R LM OIS MACRO / XF90mmF2 R LM WR / XF200mmF2 R LM OIS WR / XF8-16mmF2.8 R LM WR / XF16-55mmF2.8 R LM WR / XF18-120mmF4 LM PZ WR / XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR / XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR / XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR / XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

富士フイルム

しかし、X-H2のキットレンズであるXF16-80mmF4 R OIS WRはこのリストに載っていないという不思議もあります。

実際問題としてどの程度信用すれば良いの?と思ったので対応レンズのXF16-55mmF2.8R LM WR(私物)と対応リストに載っていないキットレンズのXF16-80mmF4R OIS WR、光学系は同じですが旧型となっているXF10-24mmF4 R OISの3本で16mm時の周辺画質を比べてみました。

比較に用いた構図 ©️豊田慶記
上段は写真の右上隅、下段は中央の左隅を切り出したもの

結果から言えば、筆者の感覚ではどのレンズでも、絞り開放から問題無いと感じました。XF10-24mmについては、1段絞りたい気もします。ともあれ、こういう言い方をすると元も子もないですが、周辺画質の差が写真のクオリティを大きく左右することは滅多にありませんので、X-H2を検討中の皆さんは、このリストに載ってるレンズを買わなければイケないのか?と戦々恐々とする必要はないと思いました。すべてのレンズで試したワケではありませんが、今回テストしたレンズでは不満はありません。

新製品、XF56mmF1.2R WRも試してみた

X-H2と同時に登場した新しい56mmF1.2についてもチェックしてみました。従来型と比べて最短撮影距離が20cm短縮され使い勝手が大きく改善されていることと、絞り開放から撮影距離を問わずシャープに解像する点が印象的で、輪郭部の色づきの少なさも見事という他ありません。またボケ味の美しさも魅力でした。

XF56mmF1.2R WRを装着したX-H2 ©️fort

XF35mmF1.4Rのように絞り込みや撮影距離によって変化する描写を楽しむといった風情はありませんが、条件を問わず安心して使える超高性能レンズとして信頼をおける1本に仕上がっていますし、接写性が改善されているのでポートレート目的としても撮影の自由度が大きく高まっています。また繰り返しAFした際のピントの精度が非常に高く安定していました。

従来型も描写性能の高さで個人的に大好きなレンズでしたが、接写性の低さは如何ともし難く、シグマの56mmF1.4 DC DN | Contemporaryに買い替えましたが、もう少しタイミングが違えば本レンズを選んでいたかも知れません。

X-H2 + XF56mmF1.2 R WR ISO125 F1.2 1/550s ©️豊田慶記
X-H2 + XF56mmF1.2 R WR ISO125 F1.4 1/110s ©️豊田慶記
X-H2 + XF56mmF1.2 R WR ISO250 F1.4 1/80s ©️豊田慶記

まとめ:X-H2は傑作と言っても過言ではない

画質性能(19/20pt):高感度画質も悪くなく、特にキマった時は驚くほどの画質に。ただし、回折(※)の影響は受けやすい
機能性(20/20pt):文句なく高機能。バッファも比較的潤沢なので連写にも強い
使い勝手(18/20pt):他社機ユーザーにとっては馴染みやすいが、X-T4など従来のXシリーズユーザーにとってはやや扱い難いところもある。EVFの接眼部が少し曇りやすいのが気になった
サイズ・重量(18/20pt):ハイエンド機としては適当なボディサイズだが、バッテリー込みで660gとなり、一般的にはやや大きく重たい
コストパフォーマンス(20/20pt)実売で26万円は機能・性能を含めた「X-H2ができること」に対してかなり安価な価格設定と言える

※回折現象とは、光の性質により狭いところを光が通過する際に光が拡散してしまう減少のこと。レンズ絞りを大きく絞り込んだ状態(f/11など)だと回折によって滲んだように描写されてしまう。1画素辺りの面積が小さいほど回折の影響が出やすくなる。同じような画素数で回折が起こる同じ絞り値であればフルサイズ機のがシャープに撮影できる

X-H2を買うべきユーザー
他社機からの乗り換え/X-T4ユーザー/動画性能を重視したいユーザー
/APS-Cの4000万画素がどんなものか気になっているユーザー/X-S10の操作性が好きで、X-Tシリーズの操作性が合わないユーザー

X-H2を見送るべきユーザー
X-Tシリーズの操作性が好きなユーザー/動体撮影が多いユーザー/バリアングルモニターが苦手なユーザー

ホールディングや操作性はとても良好だが、従来のXシリーズとは異なる ©️fort

前回のテストでは不満もありましたが、全てではありませんが不具合が解消されたことでX-H2の本来の姿を確認できました。

誤解を恐れずに評価するならば、X-H2は傑作と言っても過言ではないと感じました。他社機から引っ越ししてきたユーザーであっても操作性の違いに戸惑うことは少なそうですし、撮影性能的にもかなりのレベルに達しています。

これまでのXシリーズといえば、誰でも扱いやすいというカメラではありませんでした。例えばキヤノンのEOSシリーズのような「簡単・キレイ」を実現したカメラではなく、ある程度の技術を要する、言わば「尖った製品」だというのが従来の筆者の認識。カメラ性能を安定的に引き出すためには扱いやすさが非常に重要で、この点でキヤノンは非常に優れていまし、それが「簡単・キレイ」に繋がっています。

ところが、富士フイルムも何かを掴んだのだのでしょう。従来のXシリーズにあった気難しい部分がX-H2では払拭され誰にでも扱いやすくなっています。その上に4000万画素というスペックを気軽に扱える強力なIBIS(ボディ内手ブレ補正)や、覗き心地の良いEVF、感触の良いレリーズ感など、道具としての魅力も備わっており、AF性能も一足飛びに進化しました。そうしたデバイス性能の底上げと扱いやすさの改善に、連綿と続く富士フイルム機の魅力である画質の良さが組み合わさっているのがX-H2です。

筆者の感覚ではソニーとキヤノンの両巨塔に続く、3番手としての地位を確立しつつあると感じました。

X-H2と16-80mmレンズ ©️fort

デジカメの「高画質」は果たしてウリになるのか?

その一方で「画質の良さ」というのは現代においてはカメラの魅力としては弱い筆者は考えています。というのも今どき画質の良くないカメラは珍しく、スマホですら必要十分の領域を越えた画質を実現しているという現実があります。実際に専門的な知識を有していなければ、カメラの違いを感知することが難しくなっている、という現実があり、ブラインドテストでスマホとミラーレス機でそれぞれ撮影した写真を見てどちらか当てろ、と言われた場合、カメラが得意とする領域で撮影した写真以外のシーンで撮影された写真であれば筆者は自信がありません。

望遠撮影はカメラが得意な領域のひとつ X-H2 + Tamron 150-500mmF5-6.7 Di III VXD ISO1250 F5 1/250s ©️豊田慶記

品質からするとバーゲンプライスだが、フルサイズもちらつく価格

ボディで26万円という製品価格は性能からすればバーゲン価格だと思いますが、視野を広げてみるとフルサイズ機と同等です。もちろんレンズシステムも考慮すれば、APS-C機に価格メリットはありますので、X-H2を選択した方がトータルコストではお得に遊べますし、トータルで持ち歩くサイズはコンパクトになります。ですが、「フルサイズ」というブランドの持つ魅力は多くの人にとって魔性の響きです。筆者のようにいろいろなフォーマットを経験していれば、自身の撮影スタイルに適したフォーマットサイズが分かりますので、APS-Cがベストサイズ(筆者の場合)と結論付けられますが、そうではない人は一度フルサイズ機を経験しておいた方が良いとも考えています。これは心情的に納得できるかどうか、という話です。

従来機ユーザーの目線では、扱いやすくなったハズの操作性がポジティブに感じられない場合があります。慣れの問題といえばその通りですが、ある程度フジのスタイルに調教されていると、正論だけでは語れない部分があります。事実として、筆者はX-H1の方が撮影していて楽しく感じました。そうしたところをカバーしてくれるのが、あるいは今後登場するであろうX-Tシリーズになるのかも知れません。

X-H2 + XF16-80mmF4 R OIS WR ISO640 F5.6 1/120s ©️豊田慶記
X-H2 + レンズ名: XF35mmF1.4 R ISO320 F2 1/640s ©️豊田慶記

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