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クスクスと私

私とクスクスという料理の出会いは、今から10年以上前。パリで友人に「旨くて量の多いクスクスの店があるから食いに行こう」と言われて連れられたのが、ゴンクール通りというアラブ人街にある、簡素な大衆食堂だった。

普通、パリで日本人がクスクスを食べに行きがちなのはカルチェ・ラタン辺りの学生や観光客に人気の店で、やれ蓮見重彦が通った店だなんだと話だけは聞いていた。そういう店だと1人最低でも20ユーロ(3000円弱)は取られるが、私が連れられたゴンクール街の店は、チキンのクスクスは4.5ユーロ、ラム肉のクスクスでも6ユーロだった。

私はマトンのクスクスを頼んだと思う。はっきり覚えていないが、周りの客を見渡すと、ペンキやセメントに塗れた作業着姿の労働者ばかりだったのは覚えている。私と友人以外にクスクスを食べている者はいなさそうだった。後で分かったことだが、この店でもクスクスは高価な料理で、彼らはもっと安い3ユーロくらいの、スープを頼めばパンが食べ放題で付いてくるような料理を注文し、ひたすらパンをスープに浸して食べているのだった。

聞いていた通りクスクスはスープもスムール(クスクスの粉のこと)もボリューム満点で、スムールはお代わり自由だと言われたが1皿平らげるのすらキツかった。そして最初の感想としては、「なんか洗剤みたいな味するな」だった。

2度目のクスクスは、ある友人の家に呼ばれてクスクスが振る舞われたときに食べたものだった。そのときは物凄く旨く感じた。クスクスってこんなにおいしいのかと。その後、ゴンクール街の店を再訪してまたクスクスを食べてみたが、1回目と違って洗剤の味などせず、友人宅のクスクスのように美味しかった。

時に、1回目は旨いとは感じない、むしろ不味いくらいに感じる料理が、2回目以降ハマってしまうということがある。日本だとラーメン二郎や伝説のすた丼などがその種の食べ物としてはよく知られているが、クスクスもおそらくその部類なのだろう。

その後、私はパリ郊外のサンドニやクールヌーブといった地域で安いクスクスの店を見つけるのが趣味になっただけでなく、フランス国内を旅行するときでさえも行く先々の街でアラブ料理の店をつい探してしまうほどになった。

さらには、チュニジアに2週間ほど旅行して、本場のクスクスを食べまくった。現地の友人の作ってくれたクスクスは格別に美味く、しっかりレシピを教えてもらい、自分でもマネして作るようになった。

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↑チュニジアの食堂でクスクス・ロワイヤル(全部のせ)を食べるケイチェルおじ

ところで、クスクスは北アフリカマグレブ諸国の料理だが、基本は肉と野菜のスープをスムールという粉にかけて食べる。野菜は国や地域、店や家庭によって変わるが、ズッキーニ、ニンジン、ひよこ豆はどこでも外せない野菜なのではないか。

大雑把に言って、チュニジアはスープがトマトベースでジャガイモが入りがち。アルジェリアは塩味のスープにキャベツが、モロッコはスパイスベースで蕪が入りがち、というのが私の勝手なイメージだ。

ここ半年くらいの間に私が作ったクスクスを紹介しよう。

塩味ベースに蕪・玉ねぎ・人参・ひよこ豆のスープに骨付きチキンのグリルを乗せたもの↓。フランスの観光客相手の少しお高い店だと、肉は別に焼かれて添えられることが多い。

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チュニジア風にトマトベースにジャガイモ入りスープ。グリルチキンにアリッサという赤唐辛子のペーストも付けた↓

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トマトベースに、蕪や鶏胸肉を一緒に煮込んだもの↓。トマトとキュウリのチュニジア風サラダも一緒に↓

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ラム肉のクミンソース煮込みをクスクスの粉にかけてもいい↓

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そしてアラブ料理といえば食後はミントティーと決まってる。砂糖をたっぷり入れてあまーくして飲むのである。

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とりあえず、クスクスのレシピとしてはこれ↓がシンプルでいいのではないか。

スムールの蒸し方はこちら↓

おわり。


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