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【白熊杯】審査員雪ん子⛄️賞発表【短歌】

俳句に増して短歌のことなどわかってない私ですが、なりゆきで審査員になってしまいました。
わからないなりに頑張って選んだつもり。

気持ちをグッと持っていかれる対象にフォーカスする俳句を一コマ漫画とすると、短歌は二コマ漫画のような気がします。作品中で気持ちの揺れがある感じ。少なくとも私はそのような作品が好きなようです。

そんな感じで選んでます。

そんなわけで、

白熊短歌雪ん子⛄️賞
早速発表!!


🎊🎊🎊

 

第一位


コンビニでホットコーヒー2缶買う
カイロはいいの寒くないから


放課後の海で猫。



暖を取るためのコーヒーを買いにコンビニに入った。「カイロもいる?」の問いかけに対して「いいの 寒くないから」。きっと寒いんですよね。大切な人と飲むコーヒーは心も温かくしてくれるけど、カイロは心までは温めてくれない。無駄使いしなくてもいいかな。「寒くないから」は優しさですよね。お互いを思いやる二人の気遣いにキュンとしたのでした。瑞々しいです。


第二位


「投稿を取り消しました」パフェとかの
写真がアップされる寒晴


四四田鹿辰



「パフェとかの写真」。一見、日記代わりの平和な投稿が並ぶ、冬の晴れた日。一つの投稿が突如取り消された。一体何があったのだろうと想像が膨らみます。疑問を持ち始めると、なんでこんな寒い日にわざわざパフェ?とか、投稿した動機などにも深入りしてしまって。今どきのあるあるな感じ。好きです。


第三位


寒いのはもうたくさんと閉じ籠る
そう言えば昨日豆売ってたな

のんちゃ



「寒いのはもうたくさんと閉じ籠る」決意が、「そう言えば昨日豆売ってたな」の記憶でさっと覆る。近々買っとかないといけない豆なのでしょうね。本能と理性を漂う気持ちの揺れ。「そう言えば」が効いてます。そして、豆を買いに行ったあと、「もうたくさん」と再び閉じ籠ることを決意する。人間ですよね。


第四位


渡された真綿の意図はやわらかく
首を絞めずにあたためている


須崎水性



人の首を絞めることも出来るし、人肌を温めることも出来る「真綿」。誰かから渡された「真綿」を受け取った時には、その意図がよく読み取れなかった。ここに来て、「意図はやわらかく」と氷解した感じがします。疑心を抱いてた自分が恥ずかしくなったり。そういうことってあるよなぁと。


第五位


終わりなく雪降る積もるこの街は
もうこの世から消えてゆくかも


汐田大輝



不謹慎かもですが、地震などの絶望的な光景に、目を釘付けにされることがあります。圧倒的な自然の力を前に、何をすることも出来ない無力な人間。「この世から消えてゆく」かのような「この街」。絶望感と同時に、不思議に見入っている自分。下の句に力があります。


第六位


鈍重なミシンの音が年を継ぐ
まっさらな生地が欲しい除夜だ


沼田ヤギヌ



「鈍重なミシンの音」が除夜の鐘のことと思いました。百八のステッチで、一年使い古した生地と、新しく使っていく生地を「継ぐ」。秀逸で素敵な比喩と思います。何百枚もの生地からなる巻物を、一年一年継いでいっているのだと考えると、心が引き締まります。


以下次点 (順位なし)

ルール上です。上位6句と甲乙なし。


どうにでもならないこととなることと
私が雪で君が星とか


林白果



「どうにでもならないこと」「どうにかなること」が簡単に見極められれば、少しは生きやすいと思うのです。前者は諦めればいいし、後者はチャレンジすればいいだけですから。ただ、この見極めがとても難しい。雪と星である私と君にとって、諦めるべきこと、チャレンジすべきことは何でしょうか。悩むことが生きることのように思います。

主語のないだれかのことを思う夜
初霜に斜線のような傷ひとつ


ゼロの紙



自分とは一見関係ないこと、関係ない人のことを夢想する夜。自分の実生活にはノイズのようなことを考える時間が、心を豊かにする時間のようにも思います。初霜についた斜線のような傷も、意味がなさそで、意味がありそで。余韻が心地よいです。


小春日にあなたの親になれました
世界に色がついて見えました


とのむらのりこ



我が子が生まれ顔を見た瞬間に、世界と自分って変わりますよね。そんな人生の大切な一瞬を切り取ってくれました。親にならせてくれてありがとう、新しい景色を見せてくれてありがとう。心からの言葉が響きました。


骨壺に入りきれない父の骨
われを背負ひしたくましき骨

チズ



のりこさんの歌とは対照的な、もうひとつの人生の大切な瞬間。臨終ではなく骨上げの瞬間なのがいいと思いました。私も昨春に父の骨を見たばかり。チズさんとは逆で、こんな細い骨で家族を支えていたんだ、という感慨でしたが。そのときの気持ちを固定出来る短歌っていいな、と思ったのです。


子供らのジャンプスーツが可愛くて
このために北に住んだかと思う


自然対数乃亭吟遊



ドラマ「北の国から」を思い出しました。厳しい北の国での生活。なんでこんな生き方を選んだのだろう、と後悔する瞬間があるかもしれません。しかし、全ての苦労を帳消しにしてくれるような、子供らのジャンプスーツと笑顔。ここに住んでよかったなと。素敵な生き方と思います。


冬の海ラストシーンは富津発
「行きますかね」と立ち上がる君

Sazanami



大杉漣さんの映画のワンシーンらしいですが、見たことないです笑。設定など全く違うのでしょうが、「行きますかね」の一言で了解事項が出来てしまうのがいいです。男と女でも、男と男でも。海を見つめる無言の時間に出来た了解事項なのでしょう。そんな力が冬の海にはあります。


雪ん子⛄️賞受賞のみなさん
おめでとうございます🎉


この記事で選ばなかった短歌も、本当に素晴らしいものばかりでした。明日選ぶと、きっと違う歌を選ぶと思います。



みなさん本当にありがとうございました⛄️



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