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異語り 008 河童小僧

コトガタリ 008 カッパコゾウ

息子の通う小学校は創立100年を超える古い学校です。
さすがに創立当時の校舎は残っていませんが、旧校舎は50年越えのかなり年期が入ったもの。なによりトイレが暗い、臭い、汚いの三つ揃えでした。

今年、ついに市で予算が付き改修工事が行われることになりました。
工事期間は約半年。
何かと不便にはなるものの先生も子どもたちも大喜びで工事を見守ります。

ところが、工事が始まって1ヶ月ほどたった頃
息子が学校に行きたがらなくなりました。
聞くと「カッパが出る」と言うのです。

学校の中に河童?
どうにも奇妙な話なので詳しく聞き出してみると

実際にはっきりとその姿を見た子はいない。
頭に皿があるのかも確認できていない。
ですが、息子を含めみた子どもたちは口をそろえて
「カッパが邪魔をする」
というのです。

なぜ河童だと思うのかと聞いてみると
短いおかっぱ頭で全体に緑色っぽい雰囲気がある。
歩く足音がピタンピタンと聞こえる。
という理由らしく、
「では、そのカッパが何をするのか」と聞くと
授業中に教室に入ってきて、耳元で「バカ」だの「ブス」だのと悪口を言ったり
教室の後ろでゲタゲタと大声で笑い出したり
オエーオエーと吐くまねをしているそうです。

クラスのみんながはっきりと見えるわけではなく、一部の子の視界の隅をチラチラとよぎる感じで教室内をうろうろしているそうです。

「そいつが現れると教室の空気がくさくなるんだ」と息子。見たという子も見えていない子もその空気感は感じているようでした。

見えていない子の背中にべったりと張り付いてニヤニヤと周りを見渡したりするときもあるそうで、張り付かれた子は「急に乱暴な口調になったり不機嫌になったりする」とのこと
そしてやはり授業が邪魔される結果になるようです。

大人(先生)には見えていないらしく、乱暴になった子に注意して治めようとするのですが、つられて他の子まで騒ぎ出して教室はさらに騒がしくなってしまう。
とにかく教室中がいつもピリピリした雰囲気になっているらしく、息子は毎朝学校へ行きたくないと行き渋りになってしまっていました。


ところがこの河童騒動はトイレ工事が完了するとパタリと治まってしまいました。
河童が出ると騒いでいたのは二年生と四年生だけ
旧校舎のクラスだけで被害が出ていたことになります。

なぜ二年生と四年生だけが被害に遭ったのか。
そもそもなぜ学校に河童が出たのか。
河童といえば昔話や古い怪談ではおなじみの川や池に住む水辺の妖怪
でも学校の敷地がもと水辺だったという資料はありません。

しかし、水辺の生き物というイメージがある生物の中には実はあまり水を必要としない亜種も存在しています。
河童にもそのような亜種がいたのでしょうか?

それとも旧校舎の水回りに住み着いていた河童似の幽霊だったのでしょうか?

トイレは新しくきれいになりました。
今は息子も楽しそうに学校に通っています。

もしかしたら、そのうち新しいトイレの怪談が生まれるかもしれません。
しばらくは息子たちの話に注意をはらおうと思っています。

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