異語り 002 埋め物
コトガタリ 002 ウズメモノ
みなさんはジンクスやおまじない、ゲン担ぎを信じているでしょうか?
なかには実際にやったことがある人もいると思います。
特に女性なら、中高生のころクラスや学校でおまじないが流行った経験があるかもしれません。
これはとある学校で流行ったおまじないの話
『小さめの紙に自分と好きな人の名前を書き4回折りたたむ。
折りたたんだ紙を相手が通る(踏むもしくはまたぐ)かもしれない場所に埋める。
この時誰にも見られないように注意する。
相手がその場所を通ったことを確認したら、自分もその上を通り告白する』
というもの。手順通りにやってから告白すると成功するらしい。
『紙を埋めるところを人に見られてはいけない』という縛りがあるため、どれぐらいの生徒たちが実行したのかはわからない。しかし構内のあちこちに掘られたような跡が見つかっていたので、結構な数の生徒が試していたのかもしれない。
その学校では以前、数年ごとの頻度で学校関係者がなくなっている時期があった。
死亡原因は事故や病気などそれぞれ違い、因果関係も認められなかった。
共通するのはその学校の現役関係者(学生、教員、保護者など)であることのみ。
因果関係はないといいつつあまりにも続くと、そのうちに呪いではないかという噂が広まった。
ある年、新しく赴任してきた校長がこの噂を聞きつけた。
長く勤めていた教師たちは
「思春期の生徒たちが好きな七不思議みたいなもんですよ」
「この地域では大概がこの学校の関係者ですし、気にすることないですよ」
と笑い飛ばしていた。
しかし、その年 生徒が一人亡くなった。
部活動中の事故だったそうだ。
校長は大層気に病みお祓いをすることにした
ただし、それは職員や生徒たちには内緒で行われた。
これ以上変な噂になるのは避けたかったのだと思われる。
知っているのは、参加した校長と教頭。
お祓いを執り行った神主と巫女の4人だけ。
人目をはばかり、深夜 校内をが巡回する。
かつて事故のあった場所では鈴の音が響き、鎮めるための詞が唱えられた。
くまなく校内をめぐり、最後に少し厚みのある白い包みが校長に手渡された。
「校内にご不幸の原因となるようなやましい気配は感じられませんでした。
誰かが外から持ち込んでいるものかもしれません。
こちらの埋め物をできるだけ皆様が通られる場所に埋めてください」
「ただし決して掘り返されることのないような場所に埋めてください」
皆が通るが、誰にも掘り返されない場所。
神主から出された難問に頭を悩ませつつ、埋め物は校長が一人でどこかに埋めた。教頭も神主たちもその場所は聞いていないという。
お祓いの効果か、その校長在任以後は事故も死者も出ていない。
しかししばらくするとある噂が流れはじめた
「校内の○○教室と○○が祓われたらしい」
「校内のどこかに厄除けが埋められてるんだって」
「呪いは学校じゃなくて通ってる誰かが持ってる」
新たな七不思議的な扱いではあったが、秘密裏に行われたはずのお祓いはあっという間に皆が知る事実になっていた。
厄除けはどこに埋められたのか。
それを探し出そうとする輩もちらほら現れたが、まだそれを見つけた生徒はいない。
その後、例のおまじないが流行り始めたのだ。
封印や結界というものは正式であればあるほど、その一部が崩れた時により大きな反動があると言われている。
校長が行ったのが封印や結界だったのかは確認できない。
しかしそうであった可能性は否定できない。
おまじないは相手が通りそうな場所に紙を埋めるというもの。
校長が埋めた厄除けも、なるべく全校生徒が通るところに埋められたといわれている。
もしもそれが誰かに掘り返されたら?
もしも以前起こった不幸が本当に呪いだったら?
呪いを復活させたい誰かがいるのかもしれない。
このおまじないを広めたのは卒業生だという噂だ……
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