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50になって太宰治に感動した自分に感動した件【乙女の本棚シリーズ】『女生徒』を読んで

こんにちは。カブトムシの母です。

最近、「乙女の本棚シリーズ」にハマっています。
有名な文豪の短編とイマドキのイラストレーターさんがコラボした絵本のような作品のシリーズ。

本を読むのは好きですが、字がいっぱいあるのは苦手。
読むのはもっぱら電車の中なので、軽めの小説や自己啓発本ばかり読んでいます。

なので、乙女でものないのに「乙女の本棚シリーズ」を手にとったのも最初のきっかけは
「薄くて読みやすそう」でした。


これまで読んだ作品

江戸川乱歩の『人間椅子』『人でなしの恋』『押絵と旅する男』
谷崎潤一郎の『魔術師』『刺青』『秘密』
森鴎外の『高瀬舟』
中島敦の『山月記』
夢野久作の『死後の恋』『ルルとミミ』『瓶詰地獄』
泉鏡花の『外科室』
太宰治の『魚服記』『女生徒』

どれも綺麗なイラスト入りで読みやすく、1時間ちょっとの通勤時間に読むのにちょうどいい。

文豪の作品なので、私がいつも読んでいるような内容の薄っぺらい本と違って洗練された文章。

たとえて言うなら、コンビニ弁当やファストフードばかり食べていたところへ、一流シェフがこだわり食材で作った料理を食べた感じです。

中でも印象に残っているのが『死後の恋』『人間椅子』と『女生徒』

前の二つは内容自体がちょっと衝撃的で心に残っているのですが、
『女生徒』は、ある少女の一日のできごとと心の内を書いてあるだけなのに、心理描写がすばらしくて、何だかものすごく感動しました。

若い頃に『人間失格』『斜陽』を読んで、それなりに面白いと思いましたが、衝撃を受けたり、強烈に感動することはありませんでした。

私が好きだったのは三島由紀夫谷崎潤一郎でした。
文章も好きでしたが、多感な年ごろでエロさアブノーマルな内容に惹かれていた気がします。
(なので、「多感な年ごろ」を過ぎた今『刺青』を読むと、ちょっとこわい。)

太宰推しの高校生

太宰治で思い出したのですが、高校時代、太宰治を「太宰様」と崇める熱狂的な太宰推しの同級生がいました。
(当時「推し」と言う言葉はありませんでしたが。)

私と言えば、マドンナマイケルジャクソン「天才たけしの元気が出るテレビ」に夢中のバカな女子高生だったので、
「作家に夢中になるなんて変わった子だなぁ」と思っていました。

しかし、自分が文章を書くようになり、太宰のすごさがわかるようになった今、そんなにも若い時分から太宰のすごさが分かっていたあの子はすごい!超リスペクトです。
彼女、今、どうしているかなぁ。今なら、仲良く話せる気がします。

最近、noteがきっかけで読んだ作家の内藤みか先生の本の中でも太宰治さん(リスペクトしていらっしゃるので呼び捨てしたりしません。)の生家を訪ねる場面が出てくるので、やはり執筆を生業とする方は早々とその魅力に気づいているんだなと思いました。

ん?
ということは、(今さらだけど)

太宰のすごさがわかるようになった自分って、成長しているんじゃない?

それって、すごいことだよ!と自画自賛。


「中心はずれの子」

私が特に印象に残っているところは

小さい時分には、私も、自分の気持とひとの気持と全く違ってしまったときには、お母さんに、「なぜ?」と聴いたものだ。そのときには、お母さんは、何か一言で片づけて、そうして怒ったものだ。悪い、不良みたいだ、と言って、お母さんは悲しがっていた様だった。お父さんに言ったこともある。お父さんは、そのときただ黙って笑っていた。そして後でお母さんに「中心はずれの子だ」とおっしゃっていたそうだ。だんだん大きくなるにつれて、私は、おっかなびっくりになってしまった。洋服いちまい作るのにも、人々の思惑を考えるようになってしまった。自分の個性みたいなものを、本当は、こっそり愛しているのだけれども、愛して行きたいとは思うのだけど、それをはっきり自分のものとして体現するのは、おっかないのだ。人々が、よいと思う娘になろうといつも思う。たくさんの人たちが集まったとき、どんなに自分は卑屈になることだろう。口に出したくとも無いことを、気持ちと全然はなれたことを、嘘ついてペチャクチャやっている。そのほうが得だ、得だと思うからなのだ。いやなことだと思う。早く道徳が一変するときが来ればよいと思う。そうすると、こんな卑屈さも、また自分のためでなく、人の思惑のために毎日をポタポタ生活することも無くなるだろう。

『女生徒』より

これって現代にも通じる「同調圧力」

他にもたくさんいい文章はありますが、他の人にはない個性を持った少女が、人からどう見られるか気にして、自分らしさを押し殺しているところが特に心に残りました。

どうしてこの文章が心に残ったのかといえば、恐らく、
自分の子が「中心はずれの子」で、その子の個性を完全に認められず、
どこか体裁を気にしてしまっている母親としての自分がいるからだと思います。

ただ、「中心はずれ」じゃなくても、この少女のように人目を気にしている人はたくさんいるのではないでしょうか。

昔に比べたらマシになったかもしれないけれど、「道徳が一変するとき」がいまだに訪れていないことを残念に思います。

太宰の完全オリジナルではない!?

思春期の少女の心理描写をここまでリアルに表現できるなんて、
太宰治、マジすごすぎ! 天才!!

と思ったけれど、実はこの小説、有明淑さんという方が太宰に送った日記が元になっているそうです。

「川端康成からも認められた太宰の代表作の一つ」ということなので、
太宰の文章が素晴らしいのに変わりはないのだと思いますが。

絵本は邪道か?

真の読書家の方からすれば、文豪の文章にイマドキのイラストをつけるなんて邪道かもしれませんね。

私もきれいなイラストだと思いつも、
「どうしてこの文章からこの絵になる?」
と違和感を覚えたことも一度や二度じゃありません。

絵があると、どうしても想像力の邪魔になってしまいますよね。
それでもやはり、絵と余白がある方が読みやすい。

「青空文庫」なら無料で読めますが、ちょっと読む気になれませんね…。

邪道かもしれませんが、私のように字が多いと読めないという人には、
「乙女の本棚」シリーズはとてもおすすめです。

「乙女の本棚シリーズ」で慣れたところで、もう一度『人間失格』や『斜陽』を読んでみたいと思います。
今なら、昔と違った感動があるかもしれません。

「乙女の本棚シリーズ」をきっかけに、文庫本で他の作品を読もうというのは、いうなれば『あさきゆめみし』を読んでから『源氏物語』を読むようなもの?

まとめ


長々と書いてきましたが、一番言いたかったことは、

若い頃にはその良さがわからなかったことが、
年をとってからわかるようになったって、
すばらしい!ということ

人生を重ねて今まで見えなかったものが見えてきたり
理解できなかったものが理解できるようになったり
つまらないと思っていたことが面白くなったり

それこそが年をとることの醍醐味!

って、誰か共感してくれたら嬉しいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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