クラロワリーグ | KK19212 - 私のCRLベストゲーム
2019年6月29日、CRL Asia 2019 Season1 Playoffs FINAL。BO5制のSet2。
「たとえみんなが負けても、俺がチームを勝たせる。
それだけ考えていました」
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2021年、『クラロワリーグ』の仕組みが大きく変わって、3年間続いた”チーム戦”の歴史が終わり、全く新しい”個人戦”の年間大会が始まることになりました。新しいものは新しいもので楽しんでいくにしても、そうは言ってもさびしいなあ、という感情がファン的には残っています。
そこで、このタイミングで、3年間のプロリーグ団体戦の思い出だったり”CRLでのベストゲーム”だったりという共通のテーマで、プロ経験者の方々にお話をうかがってみたいと思いました。
第3回は、KK(KK19212)選手編です。
KK(KK19212) Twitter・YouTube
「クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)」の公式eスポーツリーグ「クラロワリーグ(CRL)」で活躍した日本人プロ選手。日本のeスポーツチームGameWithに2018年~2019年の2年4シーズン在籍し、その後移籍したPONOSで1年2シーズンを経験した。日本屈指の1v1エースとして、重圧のかかる場面で幾度となく名試合を演じてきた。代名詞は”枯渇”デッキ。2019年夏には関連国際大会「WCG」へアジア代表の一員として出場。2020年冬には公式世界大会「CRL世界一決定戦」へとチームを導いた。
2021年はFAV gamingと選手契約し、今年も世界一を目指して闘っていくことが先日発表された。
最近ハマっているのは、熱い風呂に入って国歌を歌うことだという。
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1.プロリーグでチーム戦を闘ってきて
――クラロワリーグ(CRL)の仕組みが今年2021年に大きく変わって、3年間続いたチーム戦が終わり、個人戦のまったく新しいフォーマットになりました。既に1月の1v1マルチから2021年シーズンのプロセスは始まっています。
プロチームに所属してリーグ戦を闘ってきたプロ経験者として、この大きな変更をどう受け止めていますか?
KK:
チーム戦にしかない良さや楽しさを今まで経験して来たので、今年はチーム戦がない寂しさはありますが、プロになって初の個人リーグ戦なので、ワクワクしています。
――プロチームの所属経験者として、チーム戦と個人戦にはどのような違いがあると思いますか?
KK:
個人戦はそれぞれの実力で、チーム戦はそれぞれの実力を足し算することが出来るのが違いだと思います。
――思い返せば、CRL初年度2018年はアジア3拠点を転戦、2019年は韓国開催で外国暮らし、2020年はコロナ禍のオンライン開催と、同じリーグ戦と言っても毎年コロコロ仕組みが変わる中で選手の皆さんはリーグを闘ってきました。必然的にクラロワでもクラロワ以外でも、いろいろな経験をすることになったことと思います。
いまふりかえってみて、あれは特に大変だったなーという思い出はありますか? 逆に、あれは最高に楽しかったなという思い出はありますか?
KK:
2019年のクラロワリーグは日本の学校に行きながら韓国の試合に出てたので、移動と練習時間の確保が大変でしたね。日本にいてチームの勝利を祈るだけしか出来ない時は、とてももどかしい思いをしました。※1
2019年の韓国での生活は苦しいこともありましたが、とても楽しかったです。一緒にいる時間がずっと楽しかったので、学校との両立も頑張ることが出来ました。
(※1:2019年にKK選手が所属していたGameWithは韓国滞在していましたが、チーム内で1人KK選手は全日制高校と両立させるために、単位計算しながら日本と韓国を行き来していました)
――プロリーグの団体戦を長期間のシーズンにわたって行っていくと、練習などでチームメイトと過ごす時間も長くなりますし、試合会場などで対戦相手と顔を合わせる機会も少なくなかったと思います。
一番印象に残っているプレイヤーをチームメイトから1人、対戦相手から1人挙げるとすればどの選手になるでしょうか? もし何かエピソードなどがありましたら、言える範囲でそれもぜひ。
KK:
元チームメイトではユイヒイロ君です。彼はとても変で面白くて、そして優しい人でした。2019年、僕とユイヒイロ君はルームメイトだったのですが、毎日2人で奇声を上げながらベッドの上を飛び跳ねていました。また会いたいです。
対戦相手では元DetonatioN Gaming所属のJoker選手です。彼とは韓国在住の時も敵チームだけどとても仲が良くて、ほぼ毎日一緒に会って話したり散歩したりしていました。未だにたまに連絡を取り合っていて、彼とは長い付き合いになりそうです。
――ユイヒイロ選手という回答は意外な気もしましたが、言われてみるとお二人の動画でのバラエティ的はっちゃけぶりには相通ずるものを感じます。なるほど!
そして、KK選手のいたGameWithとJoker選手のDetonatioN Gamingは2019年のシーズン2に、たまたま韓国での滞在先が同じ建物の階違いだったんでしたね。古くはクラン「Deep swamp」時代から交流があったとお聞きしました。心の友と言っていい存在なのですね。
KK:
Jokerはもはや高校の時の友達のような存在ですね。
――KK選手は2年4シーズンをGameWithで、その後1年2シーズンをPONOSでプロ選手活動されました。選手だけでなく、監督・コーチや他部門の選手、社員さんをひっくるめてのプロチームですが、2つのチームはあなたにとってどういう場所でしたか?
KK:
GameWithは部活、クラブチーム。
PONOSは年上の友達の集まり。
どちらもありがたいことに居心地の良い場所でした。
◆ ◆
2.私のCRLベストゲーム
――KK選手が出場したCRLの試合の中から、一番印象に残っている”ベストゲーム”を選ぶとしたら、いつのどの試合になりますか?
KK:
2019クラロワリーグシーズン1決勝のみかんさんとの1vs1の1戦目です。
――2019年6月29日、CRL Asia 2019 Season1 Playoffs FINAL。BO5制のSet2。あの大一番ですか!
両チームのエース対決で、BANカードはメガガーゴイルとライトニング。Game1の使用デッキは、KK選手がディガーバルーン、みかん坊や選手がロイジャイオーブン。お2人の得意デッキを、互いに交換したかのようなマッチアップでした。
――あの試合を選んだ理由をおしえてください。
KK:
僕はチームの勝利が決まるまではたとえ、個人で勝ったとしても心の中で喜ばないようにしていましたが、あの試合では勝った瞬間に思わず叫んで喜びました。それほどまでに高ぶってたからです。
――たしかにKK選手がああいうリアクションをした姿は、あまり見た事がありませんでした。
――あの試合に臨むにあたってどんな準備をされたのか、くわしくおしえてください。
KK:
決勝の直前まで日本にいたので、デッキや対策を基本一人で考えていました。チームメイトは僕のことを信用していてくれて、僕も僕自身とチームメイトの事を信じていたので、勝つという1つの点だけでまとまってお互い準備しました。
PONOSの考えも何としてでも外したかったので、みかんさんの得意デッキのバルーンを、PONOSと決勝で当たると決まる前から練習していました。
――チームによりますがデッキや対策は監督・コーチ・アナリストの皆と話し合って決めることが多いと聞きます。一任されていたというのは、それだけKK選手がチームから信頼されていたということの証ですね。
KK:
はい。
――試合本番についてくわしく教えてください。試合中はどんなことを考えていましたか? 勝敗を分けた要因は何だったのでしょうか?
KK:
みかんさんが来るのも予想通りで、相手の裏を突いたデッキ選択を出来ました。大きなミスが1回あったのですが、自分に自分で落ち着けと言い、そこからは完璧なプレイができたと思います。
――大きなミスというのは、延長残り2分17秒あたりのロイジャイへのインフェルノタワー設置のことでしょうか。相手のクエイク警戒の位置だったと思いますが1マス遠くなりすぎてしまいました。
KK:
はい。
――当時ネットでライブ観戦していて、あそこまではKK選手ペースの試合でしたが、あの瞬間みかん坊や選手の逆転勝ちが決まったなと思いました。
しかし、そこから再逆転してしまったのですから! メンタルと試合運びが一体どうなっているんだと、観ているこちらも思わず声が出ました。
KK:
例えみんなが負けても、俺がチームを勝たせる。
それだけ考えていました。
――試合に勝った時の気持ちをおしえてください。
KK:
例えるとしたら、これは想像ですけど、部活の全国大会の決勝戦で、同点ゴールを自分で決めれたのと同じくらいです。※2
(※2:KK選手のアカウント名「KK19212」の19212はサッカー時代の背番号歴にちなんでいます。クラロワの前はサッカーのガチ勢でした。)
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3.プロ選手経験から得たもの
――「eスポーツ」という言葉が新語・流行語大賞のトップ10に入ったのは2018年のことで、男子中学生のなりたい職業2位が「プロeスポーツプレイヤー」になったのは2019年のことです。CRLはクラロワにとって初のプロリーグでしたが、そもそも日本ではプロゲーマーという存在自体が黎明期で今も発展途上のあたらしい職業です。
そんな「プロゲーマー・eスポーツ選手」を実際に経験してみて、なる前の予想通りだったことと、予想と違っていたことを挙げるとすれば、どんなことでしょうか?
KK:
「楽しい」というのは予想通りでした、自分の好きなことで思いっきり競い合えるというのが、すごく楽しいです。
逆に違っていたことは、想像より大変だということです。好きなこととはいえ、ゲームとはいえ、同じ事を毎日ずっと繰り返すのは大変なことです。
――プロとしての活動には、公式戦や試合に向けた練習はもちろん、写真撮影や取材対応に、チームの動画撮影やイベント参加なども含まれ、多岐にわたり忙しかったことと思います。
プロ選手としてのありとあらゆる活動の中で、「今、自分はプロゲーマーをやっている!」ともっとも実感できたのはどんなときのどんなことでしたか?
KK:
クラロワリーグプレイヤーとしてでは無く、プロゲーマーとしてクラロワリーグ関係外の方からインタビューを受けた時ですね! プロゲーマーを自分がやっているんだということを深く実感しました。
――そう言えば、NHKのTV番組(「あさイチ」2019年4月3日)に出演されたこともありましたね。理解あるお父さんの存在が印象的だったのと、クラロワのプロ選手としては珍しく本名を公開された点に驚きました。
KK:
はい! それと同時にTwitterの方でも公開したので、ほとんどの方が知っています。
――プロとアマチュアの大きな違いの1つは、注目度の大きさとファンの存在だと思います。KK選手にとってファンとはどういう存在でしたか? また、特に嬉しかったファンとのやりとりや交流があればお聞かせください。
KK:
僕が船だとしたら、ファンの方々は船を漕いでくださる存在です。
元々エンジンだけでも走れるけど、少しでも速く僕が望む所に行けるように全力で船を漕いでくれて、エンジンが壊れそうになったら急いで治しに来てくれる。なんとか目的地に着いて船に乗って良かったなと思って貰えるように頑張ります。
きくち かいと
――相田みつをリスペクト、でしょうか?笑
KK:
そうです!
プレゼントや手紙を頂いたことと、応援ビデオを作っていただいたことなどは特に嬉しかったです! やっぱ自分のためだけにして頂いたことっていうのは、何でもめちゃくちゃ嬉しいですね!
――プロとして活動していくということは常に結果を突き付けられることでもあるので、緊張感や重圧は大きいでしょうし、結果のよしあしによって周りの評価が180度かわるようなアップダウンも激しかったことと思います。そんな荒波の中でメンタルを元気に保ちつづけるというのは簡単なことではなかったはずです。
難しい状況や苦しい時に心がけていたことや、何が支えになって乗り越えることができたのか、についておしえてください。
KK:
家族、友達、ファンの方々や負けられない理由を思い出したりすると集中出来ます。
あと、自分が緊張した時は、「負けた時が嫌だから緊張する。でも緊張するとミスとかが増えて負ける可能性が高くなる。負けるのが嫌なら緊張はするな」と自分に言い聞かせています。
――「負けた時が嫌だから緊張する」ですか。本当にその通りですね。
ひょっとしてサッカー時代に指導者の方から教わったことだったりするのでしょうか?
KK:
いえ、自分の考えです。
負けたら嫌なのに緊張して、負ける可能性を増やすのはバカバカしいなとある日ふと思いました。
――KK選手ご自身の! 失礼しました!
でも、本当に腑に落ちる言葉ですね。
――最後の質問です。2020年12月をもって、「プロゲーマー・eスポーツ選手」としての冒険にひと区切りがつきました。この冒険で持ち帰ることができた”宝”や、この経験から得られたものがあるとすれば、KK選手の場合、それは何でしょうか?
KK:
自分が頑張った経験です。
去年までの3年間、今までで1番頑張りました。この3年間があるからこそ今後の人生どんな事も努力して乗り越えられると思ってます。
――さいごに、読者のみなさんに宣伝したいことなどありますか?
KK:
YouTubeとミルダムを、KK19212でやってるので良かったら見に来てください〜。1番の上手さと面白さを求めて頑張ってます。
――みなさんよろしくお願いします! 本日はありがとうございました。■
【取材日:2021年2月1日。DMでのやりとりをインタビュー形式に編集】
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Information
KK(KK19212)
・CRL: GameWith(2018-2019)、PONOS(2020)、FAV(2021)
・Clan: Aeon Esports、Deep swamp
・Best Trophies: 8418
・Best Season: 2nd (2019/5)
・Titles: 「FAV Gaming Cup」準優勝、「CRL世界一決定戦2020」3位
・SNS: Twitter・YouTube・Mildom
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Good game!
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