見出し画像

【CRL Asia/クラロワリーグアジア】re. 2018-S2-Week7. そのトンネルに出口はあるのか

 おつかれさまです、kabutomです。
 クラロワリーグ(CRL)2019シーズンが待ち切れない貴方のための「CRL Asia 2018シーズン一挙ふりかえり」連載第17回。今日は、CRL Asia 2018-Season2-Week7 をざっくりふりかえっていきましょう。

1. Weekly Report

 クラロワリーグ アジア(CRL Asia) Season2 Week7は、Inter Division(地区間対決)、日本(JPN-Div)ー韓国(KOR-Div)の試合が東京で行われる。4週続いた韓国から会場を日本に移して行われる本シリーズには、台風を蹴散らすような熱戦が期待される。

 Week7(2018/10/5~7)の試合結果。JPN勢が「7勝1敗(S2通算で11勝5敗)」と勝利を重ねた。Week6・Week7にKOR勢で白星を挙げたのは、地区最下位OGNのみ。地区内競争が面白くなったと言えなくもないが・・・。がんばれ韓国勢。

 Week7の順位表。先週から順位変動なし。JPN-Div1位のPNSは各STATSでも軒並みアジア1位を記録し、現状付け入るスキが見当たらない。

 Week7時点の個人成績(Total)。ゲーム勝率(G+%)順のTop20。
 1位Rolaporon(PNS)、2位TNT(OGN)の若き新戦力2人が順位を上げた。4位までを1v1専念の選手が占める中、5位天GOD(PNS)は2v2のみの出場ながらこの好成績。彼を”2v2の神”と呼ぶファンも増えてきたとか。日本地区2位FAVでは、3位だに・7位けんつめしが好調で1v1でどちらを起用すべきかうれしい悩みを抱えている。

2. 今週のAll Killer(KOH 3タテ)

TNT(OGN)、Day1 Match2で達成。CRL Asia で7人目
ピラメキ(DNG)、Day2 Match2で達成。CRL Asia で8人目


3. Column: そのトンネルに出口はあるのか

 トッププレイヤーがプロを志し、願いかなってその舞台に足を踏み入れた時に想像するのは、”勝ちまくってヒーローとなる自分の姿”だろうか。それとも、”勝ったり負けたり泣いたり笑ったりする刺激的なプロ生活”だろうか。

 少なくとも、”「連敗のトンネル」から抜け出せずにもがき苦しむ先の見えない日々”をイメージしてプロを目指す選手がいないことだけは確かだろう。しかし、現実にはそういう状況に陥る選手が存在する。それも時に複数。

 今回はそんな彼らと、彼らを取り巻くモノについて何点か話をしたいと思う。ただ、筆者の力不足のせいで、正直まとめきれなかった。いつもよりもやや長くなってしまった点はご容赦いただきたい。

3-1. クラロワリーグにおける「トンネル」の実例

 はじめに、クラロワリーグにおける「トンネル」の実例を一緒にふりかえってみよう。

ケース1. フチ(PNS)
・”2017年日本一”の肩書きと共に特別選手としてPNSに加入。
・S1日本開幕戦開幕ゲームの1v1に出場するもストレート負け。その後も2v2はともかく1v1で勝てず、S1のレギュラーシーズンを「1v1 Set:0勝4敗、1v1 Game:1勝8敗」で終える。
・1v1初勝利は、S1ポストシーズンでの1v1 通算2試合目。舞台はS1 最終戦 Playoff Final、相手はアマテラス(GW)。この日、開幕からは2カ月半が過ぎていた。この勝利がチームのS1優勝を決定するSetをチームにもたらし、フチはFinal MVPに輝いた。

ケース2. ZEROS(GW)
・若いチームGWに、チーム最年長の社会人選手として途中加入。
・S1,S2通じて初勝利が遠く、1v1どころか2v2でもSet勝利がゼロの日々が続く。その状況下で、退社とプロ専念を表明し退路まで絶ってしまう。
・初勝利は今節、S2 Week7-Day1-Match3の1v1。相手はOPGのエースJinTV。チーム加入から4カ月以上が経った試合でのことだった。
・同節翌日のDay2-Match3には、KOHで2勝0敗とチームの勝利に貢献。翌週のWeek8-Day1-Match3には、KOHでAll Kill(3タテ)という快挙を達成することになる。

ケース3. QMills(OGN)
・S1はゲーム勝利数(G+)で21とアジア全体4位の大活躍。1v1,2v2の両面でゲーム勝利数がチーム内でトップと文句なしにOGNのエースだった。
・S2に入って一転、大不振に陥る。1v1でも2v2でもSet勝利が挙げられないどころか、Game勝利もほぼなく開幕から連敗が続く。チーム自体も彼とともに絶不調に陥り開幕から連敗。OGNはようやく前節Week6に初勝利を挙げたものの、それまでの間に8連敗を喫してしまった。
One CrownTNTら若き新戦力に出番を譲る形でQMillsの出場機会も減っていき、最終的にはS2を1v1,2v2ともにSet勝利なしで終えることになる。

ケース4. Oz(FAV)、だに(FAV)
・2人とも現役大学生プロ選手。Ozは開幕から、だには6月からFAVに加入。
だにはS1のWildcardトーナメントで1v1を任せられるなどチームから高い期待を寄せられたが、なかなか勝利を手に出来なかった。
だにのSet初勝利は、チーム加入から3カ月以上が過ぎた S2 Week3-Day2-Match3のKOH。なんと日本人選手初のAll Kill(3タテ)達成での勝利だった。この後Game7連続勝利を挙げるなど完全にペースを掴んだ彼は、ゲーム勝率(G+%)でアジア全体2位という大活躍でS2を終えることになる。
Ozは勝ち負け以前に試合出場数の面で機会に恵まれなかった。S1を出場Set数3の1勝2敗で終え、S2も出場Set数2の0勝2敗という数字でWeek8までを終えていた。
Ozに光が差したのは、S2 Week9-Day3-Match1。彼は優勝を争うこの大事な試合のKOHに起用され、なんとAll Kill(3タテ)を達成。チームをWildcard進出へ近づける貴重な1勝をもぎ取った。
・S1の彼ら2人の成績だけを見れば、S2の選手名簿に名がなくとも不思議ではなかった。しかしFAVはそうせず、彼らを信じチャンスを与えた。彼ら2人の勝利は、チーム判断が間違っていなかったことへの証明でもあった。

3-2. 「負け続ける選手=弱い」は正しいか?

 貴方が昨年来のCRLファンなら、トンネルの中でもがき勝てない選手たちに対してSNSやYoutube Live上で「弱い」「へたくそ」「俺の方が強い」という趣旨の醜い暴言が吐かれる様を見たことがあると思う。さて、この「負け続ける選手=弱い」という主張は正しいのだろうか? 3-1. に書いたような実際の選手たちを見てきて、その主張はあまり正しくない、と私は考えるようになった。

 1つ。プロ選手とは、「20勝チャレンジ」に始まるオンライン、オフラインの選考を勝ち残り、プロチームから信頼に足ると判断され選び抜かれたトップオブトップのエリートたちだ。そもそもプロの舞台に「クラロワが弱い」選手などいるのだろうか?

 1つ。プロ選手が実力不足ゆえに負け続けるのだとしたら、そんな「弱い」はずの選手に、初勝利をきっかけに一転して勝ち続けるような大活躍が果たして可能だろうか?

 1つ。彼らが「弱さ」ゆえに連敗するのだとしたら、「強い」選手は負け続けたりなどしないはずだ。しかし現実には、トップレベルの実績を残した「強い」選手であっても急に勝てなくなった事例が存在する。説明がつかなくないか?

 「負け続ける選手=弱い」が不正確だとなると、「では、実力があるはずの選手が勝てなくなってしまうのはなぜか」と疑問に思われることだろう。そう、これこそが問うべき問題だ。そしてなかなかの難題だ。

 これがカギなのではないかとにらんでいるのは、緊張するオフ大会や大勢の人前に出た経験などの”大舞台慣れ”、プロとしてのプライドや周囲からの高い期待とうまく折り合いをつける”メンタルコントロール”、といった「本来持っているゲームスキルを、本番の試合で十全に発揮する技術や経験」の有無だ。いわゆる”本番に強い”選手たちは、ゲーム外の人生経験においてこの種のスキルが(自覚してか未自覚でか)すでに磨かれているのではなかろうか。

 この辺りは、別競技の知見であったり、連敗経験のある選手たちの話などから徐々に解明されていくものと思う。esportsは新しい世界だけれど、やっているのは同じ人間。参考になる情報も世に少なくないはずだ。

 高校野球の世界には「甲子園には魔物が棲む」という格言があるが、クラロワリーグの舞台にも似たような”魔物”が棲んでいるのではないだろうか。(…いや、S1に日本開幕戦の(ゴ)会場に現れた(ブ)緑色の(リ)人型魔物(ン)のことではなくてですね。)クラロワ界のトップエリートたるプロ選手の中から連敗のトンネルにはまる選手が出るのも、その選手が強い弱いという単純な話ではなくて、この未知の”魔物”が一役買っていると捉えるべきなのではないか。

 ならばファンたる我々が第一にするべきは、対戦相手に加えて未知の”魔物”と対峙しながら逃げず戦う選手たちの勇気に対してリスペクトを忘れないことだろう。できれば胸のうちでそう思うだけでなく、選手に届きうるカタチで実際の言葉にしたいところだ。ああ、負けや連敗という結果をもって選手を口撃し鬱憤を晴らそうとする残念な連中のことは放っておこう。多分彼らにつける薬はない。

3-3. 通常のゲームプレイとプロ公式戦とのあまりに大きな隔たりとは

 クラロワリーグを見るファンはその多くがクラロワのプレイヤーでもある。それゆえにファンとしての目が肥えていて、試合でやりとりされる技術への理解度が高いのは美点であると思う。けれど、プレイヤーだけにかえって見落としがちなポイントというものも存在する。

 それは「通常のゲームプレイとプロ公式戦とのあまりに大きな隔たり」である。具体的には、ゲーム内の救済システムと公式戦の試合数試合間隔のことだ。

 クラッシュ・ロワイヤルをそこそこプレイした人なら、”沼る”・”沼った”経験は1度や2度ではないことと思う。負け続けてイライラすればするほど、無駄な時間と負け数が増えていく。何度はまってもあれは辛い・・・。

 しかし、ゲーム内では「マルチ」ならトロフィーが下がることで対戦相手のレートが調整されるシステムになっているし、「チャレンジ」や「プライベート大会」なら相手がほぼ同数の勝ち数の中から選ばれる仕組みになっている。つまり、連敗が続くうちにマッチングする相手の力量が調整され、(個人差はあれど)いずれは連敗が止まり、いい勝負が出来る相手とめぐりあえるように設計されている訳だ。

 言い換えるなら、ゲーム内には”出口のないトンネル”も”底のない沼”も存在しない。敗者救済システムがゲームにあらかじめ組み込まれているのだ。(言いたいことは分かるが、あれでもあるのだ。)だが、当然のことながらプロリーグにその種の救済は存在しない。セーフティーネットなき真剣勝負の場なのだから。つまり、同じゲームでありながらもプロの世界には”出口のないトンネル”も”底のない沼”もありえるのだ。

 その上、リーグの公式戦はゲーム内のテンポと比べて試合数が極端に少なく、試合間隔も広い。ゲーム内で”沼った”のなら、自分の意思で何試合何十試合何百試合と再挑戦し続ける裁量がある訳だが、公式戦はそうはいかない。

 週1試合に出て2連敗したなら2週間、3連敗したなら3週間、プロ選手は勝ちのない悔しさやこのまま勝てないのではないかという不安とずっと付き合わねばならないのだ。ずーっと。ずーーっと。いくら練習で勝とうとも公式戦で勝つまでその気持ちが晴れることはない。この長さは我々ファンには未体験の世界だ。

 そのあまりに長きトンネルの真っ只中にいる選手が、いざ公式戦の試合の場に立つということは、連敗を脱する”チャンス”であると同時に、(今日も勝てないかもしれない)(連敗は止められないかもしれない)(チームにこれ以上迷惑はかけられない)といった恐怖に向かい合わねばならない”試練”をも意味する。一体どれほどの勇気が必要とされることだろう。これも我々ファンにとって未知の領域だ。

 我々ファン兼プレイヤーは、『クラロワ』というゲーム自体こそ多少知ってはいるものの、選手たちを取り巻くプロゲーマーの世界についてはあまりにも知らないことや未体験のものが多い。今回挙げた敗者救済システムの有無や、試合数・試合間隔のちがいはその一例に過ぎない。我々の知らない領域で戦う選手たちに対するとき、”無知の知”という先人の至言をいつも頭の片隅に忘れないようにしたいものだ。

3-4. そのトンネルに出口があろうとなかろうと

 ギリシア神話に「シーシュポスの岩」というエピソードがある。

シーシュポスは神々を二度までも欺いた罰を受けることになった。彼はタルタロスで巨大な岩を山頂まで上げるよう命じられた。シーシュポスがあと少しで山頂に届くというところまで岩を押し上げると、岩はその重みで底まで転がり落ちてしまい、この苦行が永遠に繰り返される (Wikipediaより)

 希望のない中での労働、報われないかもしれない努力、明けない夜というものは太古の昔から人類にとって最上級の苦難であった。

 連敗トンネルの渦中にいる選手たちも、まるでこのシーシュポスのような状況下で、ひたすら何週間も何か月間もただ1勝のために模索と鍛錬を継続したのだ。それがどれほどの大変さだったか、おそらく経験した本人と彼を見守っていた人たちにしか分からない。真面目に真剣に取り組もうとする選手ほど、辛い時間であり、実時間以上に長く感じる時間だったことだろう。我々にはただそれを想像することしかできない。

 誰かの勝ちが1つ増えれば、別の誰かに負けが1つ増えるのがPVPの世界。勝者に光が当たるのは必然だし、勝者の中の勝者がすべての栄光を持っていくことに異論はない。私がチームの順位表や個人成績の表を作ったり公開したりしてるのもその動機からだ。

 ただ、数字や記録を選手やチームへの攻撃材料にしようという向きには賛成できない。判官贔屓かも知れないけれど、誰かが連敗のトンネルに迷い込んでしまったなら、その選手が少しでも早くトンネルを脱出できるとよいのにと願ってしまう。彼らの1勝は数字上は1勝にすぎないし、チーム状況によっては焼け石に水かもしれない。けれど、それがただの1勝でないことを知ってる人たちはちゃんと知っている。

 また、さらに運が悪ければそのトンネルに出口はないかもしれない。勝敗的にはもちろん残念な結果だ。けれど、そのトンネルの中で勝利のためにもがいてきた献身だったり、希望を失わず試練に挑み続けた闘志だったりは、もうそれだけで十分尊い。称賛に値する価値があるはずだ。勝利にドラマがあるように、敗北にもまたドラマがある。

 自分は、結果だけでなくそんな過程を見逃さずに拍手を送れる種類のファンでありたいし、あれたらいいなと思う。そういうファンは私だけではないはずだ。そんな同志がコミュニティに1人でも2人でも増えていくとすれば、それはこの上なくうれしい。■


◆ ◆ ◆ ◆

+. Score cards

Day1 Match1
FAVけんつめし、使用率の低い”ゴブジャイ+スパーキー”デッキを繰り出したゲームで2/2勝利。魅せて勝つ、彼らしいゲーム

Day1 Match2
TNT(OGN)、本領発揮。Set3でCRL Asia 7人目のKOH3人抜き。Set2,Set3でゲーム5連勝。前マッチから通算でゲーム7連勝中

Day1 Match3
・Set2、ZEROS(GW)セット勝利。シーズン2初勝利であると同時に、シーズン1,2通算でも初勝利。勝利インタビューの声も震えていた。おめでとう!

Day2 Match1
・Set1、PNSペア、”なぜ2v2でトルネードをBANしなければいけないか”がよく分かるゲームを展開

Day2 Match2
ピラメキ(DNG)、Set3でCRL Asia 8人目のKOH3人抜き。特にSet3Game3は、試合に王手をかけられ相手はSet2で2連敗したX-bow master(しかもここまでKOHでシーズン負けなし)、・・・という絶体絶命の状況を覆しての1勝。熱かった。

Day2 Match3
・Set2、TNT(OGN)2連勝。連勝記録を9に伸ばす
・Set3Game1、shun(GW)の”バーバリアン尽くし”デッキが意表をつく。TNT(OGN)の連勝を止めるとともに、試合の空気を引き寄せた

Day3 Match1
・Set1Game2,3、PNSペア、ゴーレム主体の大カウンターを決め連続3クラウン勝利

Day3 Match2
FAVはこの試合からユニフォームをマイナーチェンジ。リザーブのけんつめしの7・3分けの髪型に実況解説もYoutube Liveのコメント欄も持っていかれる
・Set2、共にゲーム勝率60%超えと好調の2人、だに(FAV)とSado(SB)のつぶしあい


+. Media reports

+. Youtube Archives

Day1

Day2

Day3

+. League Information

クラロワリーグ アジア」Clash Royale League Asia, CRL Asia
Official HP(JP/EN/CN/KR)
https://crl-asia.com/jp/
Youtube CH(JP)
https://www.youtube.com/channel/UCtECyE5fuzAqMi1zNLnttIg/featured
Youtube CH(EN)
https://www.youtube.com/channel/UC93yASowKvnrUpvWsCe4F7A/featured
Youtube CH(CN)
https://www.youtube.com/channel/UCpmxCb5IK9HrN91zqGIt20w/featured
Youtube CH(KR)
https://www.youtube.com/channel/UCHckjM64zrnMdB-D8cvuPew/featured


◆ ◆ ◆ ◆

お読み頂きありがとうございました。
よければ「スキ」や「フォロー」して頂けるとうれしいです。「コメント」もお待ちしております。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?