クラロワリーグ | kota - 私のCRLベストゲーム
2019年6月29日。CRL Asia 2019 Season1 Playoffs FINAL。
「やってきてよかったと思えました」
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2021年、『クラロワリーグ』の仕組みが大きく変わって、3年間続いた”チーム戦”の歴史が終わり、全く新しい”個人戦”の年間大会が始まることになりました。新しいものは新しいもので楽しんでいくにしても、そうは言ってもさびしいなあ、という感情がファン的には残っています。
そこで、このタイミングで、3年間のプロリーグ団体戦の思い出だったり”CRLでのベストゲーム”だったりという共通のテーマで、プロ経験者の方々にお話をうかがってみたいと思いました。
第6回は、kota(コタ)選手編です。
kota(コタ) Twitter・YouTube・Mildom & Smashlog
「クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)」の公式eスポーツリーグ「クラロワリーグ(CRL)」で活躍した日本人プロ選手。日本のeスポーツチームPONOSに2019年の1年2シーズン在籍した。アマチュア選手時代に「Red Bull M.E.O. 2018」日本大会で優勝し、成るべくしてプロに成った男。選手層厚き強豪チームPONOSの中でルーキーとして奮闘した。
プロ引退後は大学に復学し、学業と格闘する毎日を送っている。書くことも達者で、自身のブログで観戦記を書いたり、ゲームメディア「Smashlog」で攻略記事を発表したりとマルチに活動している。
趣味は漫画やアニメを見ること。ゲームではクラロワやプロスピAをよく遊んでいるそうだ。
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1.プロリーグでチーム戦を闘ってきて
――クラロワリーグ(CRL)の仕組みが今年2021年に大きく変わって、3年間続いたチーム戦が終わり、個人戦による新しいフォーマットになりました。
プロチームに所属してリーグ戦を闘ってきたプロ経験者として、この大きな変更をどう受け止めていますか?
kota:
僕は、チーム戦ならではの仲間との喜び合い・高め合いなどがとても好きだったので、寂しい気持ちが強いです。同じ名前のチームが毎年更新されることが、寂しくもあり同時にとても楽しみだったりしてました。
ただ、個人戦にするに当たってsupercellさんにも色々事情があったのかなと思うので、「絶対反対!」みたいな気持ちはないです。
個人戦になることで誰にでもチャンスがある、敵も味方もいなくなるという点では絶対に面白くなると思うので、とても楽しみでもあります。個人戦になったからにはまたクラロワで活躍できるように僕自身頑張ろう、と思いました。
――新しいシーズンのロスター(選手名簿)発表にテンション上がる気持ち、よく分かります! 今年あれがないのは残念です。
しかし冒頭から、kota選手の復活宣言を聞けたことはうれしいです!
――プロチーム所属の経験者として、チーム戦と個人戦にはどのような違いがあると思いますか?
kota:
選手としては、完全にプレッシャーがなくなり、プレイ自体はとても気楽にできるのかなと思いました。チーム戦だとバランスの取れたデッキや得意デッキを使いがちですが、個人戦だと偏ったデッキの使用ももしかしたら増えるかもです。
また、僕はリーグ中かなりの時間クラロワをしていましたが、「チームで勝ちたい、チームの役に立ちたい」といった気持ちが強かったと思います。個人戦だと、負けても自分だけの問題なので、その分クラロワ以外に費やす時間も自然に伸びるのかなと思いました。
――なるほどなるほど。
kota:
ファンとしては、クラロワはマルチを中心に活躍してるアマチュア選手のレベルが非常に高いので、リーグ全体のレベルもどんどん上がっていくのが楽しみです。
逆に一部の選手やチームを応援してた人にとっては、少し物足りなくなっちゃうのかなとも思います。以前までは毎週2、3回放送があったので、どうやっても大会の視聴数自体は落ちちゃう気はします。
――チーム戦と個人戦の違いをすごくわかりやすく言葉にして頂けて、とてもありがたいです。
ファン的にはチームの入場シーンや2v2の勝利パフォーマンス、試合前後の握手などになぜここまで心惹かれるのか不思議だったのですが、kota選手の話を聞いて腑に落ちた気がします。
――思い返せば、CRL初年度2018年はアジア3拠点を転戦、2019年は韓国開催で外国暮らし、2020年はコロナ禍のオンライン開催と、同じリーグ戦と言っても毎年コロコロ仕組みが変わる中で選手の皆さんはリーグを闘ってきました。
あれは特に大変だったなーという思い出はありますか? 逆に、あれは最高に楽しかったなという思い出はありますか?
kota:
僕は2019年の韓国住みの経験のみですが、やはり個人でもチームでも試合に勝てないときがやはり辛かったです。チームメイトに気分転換した方がいいと言われても、クラロワをしてないと落ち着かなかったです。
大変と感じたことはなかったですが、今思うと1〜2時に寝て毎朝4時に起こされて朝マック行ってたのはやばかったと思います。稀に本気で眠いときも、電気付けてゴリ押しで連れて行かれてました。
今となっては美味しくてメッチャ楽しかった思い出なので、起こしてくれてありがとうとチームメイトに伝えたいです。
――毎日2時就寝の4時起床は、間違いなくやばいです笑。
kota:
今のも楽しかった思い出ですが、正直あの1年間は些細なことでも全部が楽しかったです。卓球したりジャンケンしたりみんなでゴミ捨てたり。クラロワ自体ももちろん楽しかったですが、韓国で共同生活できたことは本当に最高でした。
強いて挙げるなら、一番大変だったのは、みかんさんを起こすことです。
僕は割と起きるのが早くて、みんなを起こすことが多かったのですが「○○時に起こして」って言って起こしたら「うるせぇ!」って怒られました。
部屋割り的に一緒のダブルベッドでみかんさんと寝ることもあり、生活サイクルが少しズレると寝るタイミングや寝相などでお互いに苦しんだこともあったなぁと思い出しました。
話変わりますが、ライキさんの卓球の成長速度バケモノすぎました。前半はともかく、後半はフルボッコにされてました。
――お話がいちいち青春で、おじさんな筆者にはまぶしすぎます。ここ数年で1、2を争うくらい自分の若くなさを意識させられております。
――プロリーグの団体戦を長期間のシーズンにわたって行っていくと、練習などでチームメイトと過ごす時間は非常に長くなります。また、対戦相手とも試合会場などで何度も顔を合わせるため、敵でありつつ好敵手のような存在になっていったのではないかと思います。
一番印象に残っているプレイヤーをチームメイトから1人、対戦相手から1人挙げるとすればどの選手になるでしょうか?
kota:
チームメイトは、みんな印象に残りすぎて1人には選べません。みんな「自由」みたいな印象です。けど、僕に足りない部分を色々と実感させてもらいました。
特にライキさんの「言うべき!」ってことは絶対にズバッと言うところは、僕も見習わなきゃって思いましたね。
――ライキジョーンズ選手、格好いいです。
kota:
対戦相手では、BenZer選手です。
試合後の拍手など有名ですが、すれ違うときフレンドリーに挨拶してくれる印象が強いです。ゲーム間に両手を合わせて祈っている姿も印象的で、それだけ気持ちがこもっているなと感じました。
――BenZer選手にそんな一面があったんですね。
――チームメイトや対戦相手との記憶に残っているエピソードがありましたら、言える範囲でおしえてください。
kota:
2019年の1stシーズンに滞在してたホテルで、一度トイレのドアが開かなくなってしまい、天GODが閉じ込められたことがあったんです。
そのドアは前々から開きにくかったので、「そのうち開かなくなるかも」という前兆はありました。マネージャーさんなどの協力もあり、しばらくして天GODは解放されたんですけど、その時の天GODは携帯しか持っておらず、本当に何もできない状況が面白すぎてメッチャ笑いました。
そんな僕に対し、RADは充電器などをどうにか渡せないかなどちゃんと心配しててRADの優しさがよくわかりました。RADには試合前とかも、よく「お前はちゃんとやれば強いんだから落ち着け!」みたいなこと言ってくれたり色々と助けられました。
――kota選手の株が下がって、RAD選手の株が上がった気がします笑。
――kota選手は、1年間2シーズンをPONOSでプロ選手活動されました。選手だけでなく、監督・コーチや他部門の選手、社員さんをひっくるめた「PONOS」というプロチームは、あなたにとってどういう場所でしたか?
kota:
熊本から出てきてる僕は東京に住む家もなかったのですが、チームメイト・監督・PONOSの方のおかげで不自由なく生活させてもらっていました。
精神的には勿論、ファンミーティングなどの場を用意していただいたりと、「PONOS」には本当にお世話になったという印象しかありません。
◆ ◆
2.私のCRLベストゲーム
――kota選手が出場したCRLの試合の中から、一番印象に残っている”ベストゲーム”を選ぶなら、いつのどの試合になりますか?
kota:
CRL Asia 2019 season1の決勝戦(vs GameWith)の第3セットです。
――2019年6月29日。CRL Asia 2019 Season1 Playoffs FINAL、BO5制のSet3、対Rolaporon選手(GameWith)戦ですね。
――あの試合を選んだ理由をおしえてください。
kota:
当時のGameWithはKK選手は勿論、Rola選手もレギュラーシーズンで圧倒的な勝率を残していました。1v1で行われる2・3・4セット目で1セット以上取らないと勝てないので、絶対に負けられない試合でした。
――KK選手が無双状態でしたし、もしあのSet3でkota選手が敗れていたら、アジア優勝はPONOSではなくGameWithになっていた気がします。
kota:
それまでの試合では、KOHなどの準備はしていても回ってこないという場面も多く、試合に出られない期間が長かったです。
全部出し尽くすという意味でも、相当に気持ちを込めてた試合で勝つことができ、結果的にチームも勝つことができたので本当に嬉しかったです。
やってきてよかったと思えました。
――あの試合に臨むにあたってプロとしてどんな準備をされたのか、くわしくおしえてください。
kota:
決勝戦まで出番が少なかった僕は、練習していたデッキがそこそこあったのですが、直前までこれだ!といったものはなかったです。(特に1st seasonはBANカードもアリだったので)
しかし一番得意だったのはベンザーホグとペッカ攻城だったので、場面次第では使おうと思ってました。
kota:
GameWith のオーダーは大体わかっていたので、みんなの持ちデッキなどを考えて僕がRola選手とすることになりました。
BANカードはかなり悩みましたがRola選手は何でも使えるので、ベンザーホグが通りやすくするためにロイホグBANに決め、グラチャレをメインにフレバトなどもして練習をしていました。
――試合本番のことをくわしく教えてください。試合中はどんなことを考えていましたか?
kota:
いつもと違う舞台でテンションがめちゃ上がってました。相手チームの起用選手は予想通りでしたね。
お互いに決勝戦までは別グループということもあり、何度か練習試合もしていたので、お互い得意デッキなどはわかっていたと思います。
――BO3のGame1はkota選手の勝利でした。
kota:
僕がロイホグBAN、Rola選手がダクプリBANだったので、僕はペッカ攻城が使いにくくなりました。ペッカ攻城はベンザーホグにも強かったので、お互いベンザーホグが使いやすい場面だったと思います。
Rola選手も僕がよくベンザーホグを使っているのは知っているため、確実に対策されそうと試合前の話し合いでなりました。そこでRADが「メッチャプリンス神器きそう!」みたいなことを言ってきて、「確かに」となったので、それを警戒して1戦目はオーブンロイジャイを採用しました。
もしかしたらベンザーホグ対決を挑みにくる可能性もあったので、「クエイクホグきたらめんどいなぁ」と話していたらホントにきて焦ったことを覚えてます。相性がどうだったのかはよくわかりません。
――次のGame2はRolaporon選手が圧倒しました。
kota:
1戦目になんとか勝ち、2戦目で完璧に対策されてボコボコにされたので、フチ監督がタイムアウトを取ってくれました。
「ベンザーホグ自信あるし、ワンチャン…」
みたいな気持ちもありましたが、最終的にはみかんさんが「ロイジャイ仕上がってるなら3連投もアリだと思う」と言ってくれたので、ロイジャイ3連投になりました。
――そして勝負のGame3。
kota:
狙い通りプリンス神器を3戦目に倒すことができましたが、序盤にライトニングを空振ったり、Rola選手が上手すぎてずっと余裕のない試合でした。
通常ならオーブンを貯めたら勝ちの試合だったと思うのですが、手札を綺麗に崩され、常にプリンス受けのためにオーブンを手札に残していました。流れでついついオーブンを置きたくなるところを我慢できていたのが、一番よかった点だと思います。
――kota選手は公式戦の出場機会が多くなく、プレイオフでも観客がたくさん入ったこの決勝戦が初出場でした。緊張が負の結果につながってもおかしくないケースだと思います。ですが、当日の配信映像を観ていても、今のお話を聞いてもあまりそういう感じはしません。むしろ楽しみが優っていたようにすら見えました。
ご本人的に、何が良かったのでしょうか?
kota:
試合にしばらく出れなかったり、勝率が低かったことは緊張につながりましたが、逆にいつもより大きい舞台によるワクワクが緊張を和らげてくれてたと思います。
日本チーム対決ということもあり、本当に楽しかったです。
Setカウントが1-1で回ってきたこともあり、「ここは絶対取りたい」とはなりましたが、僕は3セット目以外出場予定がなかったので「自分が負けても後はみんながどうにかしてくれる」と思ってたのもあったかもしれません。
――試合に勝った時の気持ちを覚えていますか?
kota:
他のものと比べるのが難しいですが、同じクラロワでいうと「Red Bull M.E.O. 2018」で日本優勝したときよりも全然大きかったです。
Red Bullも自腹で熊本から東京までギリギリの日程で行き、そこで優勝できたので本当に嬉しかったですが、やはり賭けた時間と思いが違ったのかなと思います。
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3.プロ選手経験から得たもの
――「eスポーツ」という言葉が新語・流行語大賞のトップ10に入ったのは2018年のことで、男子中学生のなりたい職業2位が「プロeスポーツプレイヤー」になったのは2019年のことです。CRLはクラロワにとって初のプロリーグでしたが、そもそも日本ではプロゲーマーという存在自体が黎明期で今も発展途上のあたらしい職業です。
そんな「プロゲーマー・eスポーツ選手」を実際に経験してみて、なる前の予想通りだったことや予想と違っていたことを挙げるとすれば何ですか?
kota:
やはり試合に勝てないとマジでキツかったです。でも、やめたいと思ったことはなかったように感じます。好きなことを毎日してお金をいただくことは、本当に幸せなことだと思いました。
また、思っていたよりはアンチなどもおらず、アンチについてはあまり悩みませんでした。
プロゲーマーである以上、結果を出せないと非難されるのはある程度しょうがないと思いますが、ゲーム以外を強く非難されるとやっぱり少しは悲しいです。優しくしてください。
――プロとしての活動には、公式戦や試合に向けた練習はもちろん、写真撮影や取材対応に、チームの動画撮影やイベント参加なども含まれ、多岐にわたり忙しかったことと思います。
プロ選手としてのありとあらゆる活動の中で、「今、自分はプロゲーマーをやっている!」ともっとも実感できたのはどんなときでしたか?
kota:
リーグ用の写真の撮影だったり、試合前だったり、ファンミーティングだったりと些細なことでも実感していた気がします。
――プロとアマチュアの大きな違いの1つは、注目度の大きさとファンの存在だと思います。kota選手にとってファンとはどういう存在でしたか? また、特に嬉しかったファンとのやりとりや交流があればお聞かせください。
kota:
自分が苦しいときに支えとなってくれるのがファンだと思います。
TwitterやYouTubeで応援コメントをもらえるとやっぱり嬉しかったです。直接韓国まで来てくれる方もいて正直驚きました。
当時のPONOSでは僕以外のメンバーがやっぱり活躍して人気もあったのですが、たまに「kotaさん一番応援してます!」みたいなコメントを貰うと、泣きそうになってました。
――プロとして活動していくということは常に結果を突き付けられることでもあるので、緊張感や重圧は大きいでしょうし、結果のよしあしによって周りの評価が180度かわるようなアップダウンも激しかったことと思います。
難しい状況や苦しい時に心がけていたことや、何が支えになって乗り越えることができたのか、おしえてください。
kota:
チームメイトとファンの方のおかげで、1年間頑張ることができました。1人になるとメンタルが一気に落ち込む時期があったので、本当に感謝しています。
どんな状況でも、自分のいつものプレイをすることを心掛けていましたが、できていたかは怪しいです。
――最後の質問です。「プロゲーマー・eスポーツ選手」としての冒険で持ち帰ることができた”宝”や、この経験から得られたものがあるとすれば、kota選手の場合、それは何でしょうか?
kota:
プロとして活動した1年間で、良い意味で少しは大人になれたのかなと思います。また自分の意見を伝えることの大切さなども学びました。
○○に役立つ!などはわかりませんが、少なくとも1年間休学したことには後悔はありません。
あと少し人と話すときは表情やテンションに気を使うことを意識するようになったかもです。
――読者の方へメッセージなどがありましたら。
kota:
大学が大変でクラロワのプレイ時間も減ってしまいましたが、飽きたというわけでもないので、また配信とかもやっていく予定です。
これからも色々応援よろしくお願いします!!
――楽しみにしています。本日はありがとうございました! ■
【取材日:2021年2月6日。DMでのやりとりをインタビュー形式に編集】
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Information
kota(コタ)
・CRL: PONOS(2019)
・Clan: トレジャーハンター
・Best Trophies: 8418
・Best Season: 87th (2020/3)
・Titles: 「Red Bull M.E.O.」日本大会優勝, 「CRL Asia 2019 Season1」優勝
・SNS: Twitter・YouTube・Mildom & Smashlog
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