クラロワリーグ | shun - 私のCRLベストゲーム
2018年10月6日。CRL Asia 2018 Season2 Week7の対OGN ENTUS戦。
「やはり勝因はデッキのおかしさですかね笑」
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2021年、『クラロワリーグ』の仕組みが大きく変わって、3年間続いた”チーム戦”の歴史が終わり、全く新しい”個人戦”の年間大会が始まることになりました。新しいものは新しいもので楽しんでいくにしても、そうは言ってもさびしいなあ、という感情がファン的には残っています。
そこで、このタイミングで、3年間のプロリーグ団体戦の思い出だったり”CRLでのベストゲーム”だったりという共通のテーマで、プロ経験者の方々にお話をうかがってみたいと思いました。
第7回は、shun選手編です。
shun Twitter & Smashlog
「クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)」の公式eスポーツリーグ「クラロワリーグ(CRL)」で活躍した日本人プロ選手。日本のeスポーツチームGameWithに2018年の1年2シーズン在籍した。クラロワリーグアジア日本開幕戦のオープニングゲームで、前年の”日本一”フチをストレートで破ってファンを驚かせた。その後も活躍を続け、ハンカチ王子ならぬ”クラロワ王子”として、出来立てほやほやのリーグを引っ張る主役の1人となった。
プロ選手を退いた2019年からは、リーグの公式解説者として活動中。ゲームメディア「Smashlog」に攻略記事も書いている。
趣味は、カメラ(風景写真)と麻雀。ゲームでは、スパセルゲーム、APEXやLoLなどのesport系ゲームを幅広く遊んでいるとのことだ。
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1.プロリーグでチーム戦を闘ってきて
――クラロワリーグ(CRL)の仕組みが今年2021年に大きく変わって、3年間続いたチーム戦が終わり、個人戦の全く新しいフォーマットになりました。
プロチームに所属してリーグ戦を闘ってきた経験者として、この大きな変更をどう受け止めていますか?
shun:
オープンな大会になったことで多くの方がプロ選手のような体験をできるようになりました。
それがクラロワをまた盛り上げてくれるのではないかと楽しみにしてます!
――プロチーム所属の経験者として、チーム戦と個人戦にはどのような違いがあると思いますか?
shun:
個人戦だと、対戦相手との意見交換や対策に時間が割けないなどの練習面の違いがあると思います。
――対戦相手との意見交換というのは、試合前後の相手チームとの交流のことでしょうか?
shun:
チーム内練習のことです!
お互いの成長、チームの勝ち星のためにも今やった試合の良さ悪さをその場で言い合う形の意見交換です。
――なるほど! プロチームは練習の時点から真剣で密度の濃い時間を過ごしている、ということなのですね。
――思い返せば、CRL初年度2018年はアジア3拠点を転戦、2019年は韓国開催で外国暮らし、2020年はコロナ禍のオンライン開催と、同じリーグ戦と言っても毎年コロコロ仕組みが変わる中で選手の皆さんはリーグを闘ってきました。
shun選手がプロ活動された2018年をふりかえってみて、あれは特に大変だったなーという思い出はありますか? 逆に、あれは最高に楽しかったなという思い出はありますか?
shun:
飛行機で寝れなかったのが大変でしたね。
飛行機で飛ぶ前日はチーム全員で徹夜で練習していて、機内で僕だけ寝れず、ホテルで爆睡してしまう流れが治らなくて大変でした笑。
楽しかったのはチームで泊まることですね。
練習や作戦会議はもちろんのこと、移動中や飯の時間もクラロワしかしてないのに話が尽きなくて本当に楽しかったですね!
――飛行機に乗らないと韓国にも台湾にも行けませんし、それは大変だ。
――プロリーグの団体戦を長期間のシーズンにわたって行っていくと、練習などでチームメイトと過ごす時間は非常に長くなります。また、対戦相手とも試合会場などで何度も顔を合わせるため、敵でありつつ好敵手のような存在になっていったのではないかと思います。
一番印象に残っているプレイヤーをチームメイトから1人、対戦相手から1人挙げるとすればどの選手になるでしょうか?
shun:
チームメイトですとKKです。
2v2の頼れる相方であり、今も尚活躍する最強1v1プレイヤーなので本当に印象深いですし尊敬してます。勝てない期間も頑張っていて、KKの初勝利はチーム全員で大喜びしてましたね。
オフシーズンでは互いの家に泊まりに行くこともあったり、遊園地にも行ったりと仲良くさせてもらいました!
shun:
対戦相手ですとみかん坊やさんですね。
海外戦の週は日本チーム同士で練習したりすることもあったり、オフシーズンでも仲良くしてもらってました。
2018シーズン1ではアジア決勝の2v2で”みかん天”コンビ(※みかん坊や選手 & 天GOD選手)と戦ったのですが、僕たちGameWithは初見で倒すために「全SetでインドラBAN」という作戦を考えていたんです。ですが、みかんさんにはその場の判断で完封されてしまいました。改めて凄い選手だと感じましたね。
あと、Set4で予定されていたみかんさんとの公式戦1v1対決もしてみたかったです。
――インドラBANは当時珍しく、日本語実況でも話題になりました。
そして、あの決勝戦はPONOSのストレート勝利(3-0)で終わったのでSet4・Set5は行われなかった訳ですが、幻のSet4は「shun vs みかん坊や」戦が予定されていたのでしたね! あのシーズンのshun選手は絶好調でしたし、その対戦はぜひ観てみたかったです。
shun:
そうなんです! クラロワ日本一決定戦(2017年)の時から憧れていましたし、アジア決勝戦という舞台で全力で戦ってみたかったです!
――shun選手は、1年間2シーズンをGameWithでプロ選手活動されました。選手だけでなく、監督・コーチや他部門の選手、社員さんをひっくるめた「GameWith」というプロチームは、あなたにとってどういう場所でしたか?
shun:
チーム「GameWith」は本当によく面倒を見てくれて、監督や代表の方がクラロワ以外のこと全てをやってくれて、ゲームに集中できる環境を作ってくれていました。
実家のような安心感でしたね。
――shunさんは2019年からは、CRL戦の日本語公式配信の解説者を何度も担当されています。こちらの現場の雰囲気はどんな感じですか?
shun:
現場の雰囲気は凄い良くて、ゲームを楽しんで見れて盛り上がれるような現場です。
◆ ◆
2.私のCRLベストゲーム
――shun選手が出場したCRLの試合の中から、一番印象に残っている”ベストゲーム”を選ぶとすれば、いつのどの試合になりますか?
shun:
対OGNのTNT選手とのKOHです。
――2018年10月6日。CRL Asia 2018 Season2 Week7の対OGN ENTUS戦のKOHですね。OGNに新加入したTNT選手が絶好調で、ゲーム9連勝中という快進撃を止めた一戦でした。
shun:
この流れのままにTNT選手に負けてしまうことだけはだめだ、と感じていたのでその時出せる全力を出しましたね。
――あの試合を”ベストゲーム”に選んだ理由をおしえてください。
shun:
あの試合が1番自分らしさを出すことが出来た試合だからです。
――ファンから見ていたshun選手は、これと決まった得意デッキがない代わりに、何を使ってくるのか予想がつかないのが特長でした。1年目のクラロワリーグには1v1にも2v2にもKOHにもBAN Pickルールが採用されていたのもあって、一芸に秀でた選手たちが苦しんでいました。そんな中で、対照的にshun選手はとてもイキイキされてる印象がありました。
shun:
BANカードがあると試合内容に関係なく使えないので、プロになった当初から苦手な高回転や自作デッキなども練習してデッキ幅を増やせるようにしていました。
あの当時は本当に気分でデッキを決めていて、試合直前にデッキリストをみてチームメンバーが作っていたデッキを咄嗟に使う、なんてことも多々ありましたね笑
――そんな即興を! それでは相手も読めません。
――あの試合に臨むにあたってプロとしてどんな準備をされたのか、くわしくおしえてください。
shun:
オーダーが決まったのは試合の前の週くらいで、KOHの1番目を任されました。その時のTNT選手は前の試合で5縦と絶好調で、OGNの1番目はTNT選手で来るだろうと考えていました。
shun:
僕は普通の試合を挑んでも勝てないと感じていたので、勝つために”いい意味で変なデッキ”を使おうと決めてあのバーバリアン4種類を入れたデッキを選びました。※1
ババデッキは試合3日くらい前にプロではない知人から知り、チームメイトのアマテラスとババデッキの立ち回りなどを決めて準備していたので、安定した動きができていました。
(※1:「ローリングバーバリアン」、「攻城バーバリアン」、「バーバリアン」、「バーバリアンの小屋」のバーバリアン系4種)
――TNT選手が来ることを予測し、TNT選手に勝つためだけの作戦と準備をされていたのですね。
――試合本番のことをくわしく教えてください。試合中はどんなことを考えていましたか? 勝敗を分けた要因は何だったのでしょうか?
shun:
試合中はかなり相性が良かったので、落ち着いて立ち回れば勝てることを確信していました。途中のミスがありましたがそれにも焦らずに対応出来たのがよかったですね。
やはり勝因はデッキのおかしさですかね笑
――shun選手の最後の1枚がガーゴイルの群れだというのはTNT選手の予想外だったと見えて、ガゴ群れの初回投入時にダメージリードを逆転できました。初見殺しデッキが決まりましたね!
shun:
まさにそうですね!
バーバリアンが地上に強い分、空にも勝てないと意味が無いので、ガーゴイルの群れという呪文も使わせることが出来て火力の出せるカードを選んでいました。
相手からすると予想とかなり違うデッキ構成なので、緊張する公式戦ですとかなり対応に追われますね。
――試合に勝った時の気持ちを覚えていますか?
shun:
勝った時に視聴者さんにも聞こえてしまうくらい大きな声で叫んでしまいました。※2
次の試合の時に、さっき勝てたことが嬉しすぎてデッキ選択を間違えたりもしましたね笑
(※2:当日の日本会場は試合する選手のそばに日本語の実況・解説席があった。このときのshun選手の叫びは実況・解説のマイクに拾われるほど大きかったため、視聴者の耳にも届いてしまったのだ)
――えっ。
実際shun選手は、2戦目のOne Crown選手戦にロイホグババ小屋三銃士デッキを使った訳ですが、本当は別のデッキを使う予定だったのでしょうか?
shun:
ババ小屋三銃士を使う予定ではいたのですが、攻城バーバリアン型かロイヤルホグ型か悩んだ結果、間違えてどっちも入れてしまいました...笑。なので凄い攻めに特化してるデッキが公式戦で生まれてしまいましたね笑
試合に負けていたら笑い事では無いのですが、2番手のZEROSにそこを助けてもらいました笑
――それはさぞかし冷や冷やしたことでしょう笑。さすがZEROS選手!
――ちなみに、解説者として担当したCRLの試合の中から特に印象に残っているゲームを選ぶとすれば、いつのどの試合になりますか?
shun:
クラロワリーグ世界一決定戦2020 のNova vs paiNの試合ですね。
本当にいい試合が多かったのですが、特にセットカウント2-2の最後の1v1の1-1状況での試合です。お互いに攻めも守りもこなし続けてタイブレークでHP22差でpaiNの勝利になった際には、両チームに感謝したいくらいに熱くなれました!
――Set5は、Nova Little Chen選手対paiN Wallace選手でした。実況・岸大河さんの「だめだこれはLittle Chen選手敗れた! Wallace選手のファンタジーロワイヤルはまだ続く!」の絶叫も忘れられません。
shun:
Novaが優勝候補だと言われている中でのpaiNの接戦での勝利。咄嗟にファンタジーロワイヤルなんてワード出てきませんよ...笑
ハイレベルな世界大会で熱い中、実況の岸さんの隣で解説出来たことを嬉しく思います!
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3.プロ選手経験から得たもの
――「eスポーツ」という言葉が新語・流行語大賞のトップ10に入ったのは2018年のことで、男子中学生のなりたい職業2位が「プロeスポーツプレイヤー」になったのは2019年のことです。CRLはクラロワにとって初のプロリーグでしたが、そもそも日本ではプロゲーマーという存在自体が黎明期で今も発展途上のあたらしい職業です。
そんな「プロゲーマー・eスポーツ選手」を実際に経験してみて、なる前の予想通りだったことと、予想と違っていたことを挙げるとすれば、どんなことでしょうか?(良いことでも悪いことでも)
shun:
予想通りだったのはゲームをし続けられる環境ですね。ゲームで勝つことが嬉しいことであり、チームのためにもなり、自分のためにもなるのでクラロワばかり毎日考えていましたね。
予想と違っていたのは練習ですね。
部活動のような監督やコーチなどがいてそれに従って練習するのかと想像していたが、eスポーツだと監督やコーチ以上に選手がゲームを理解していることがあったので、いい意味で自由に自分たちで練習が出来ました。
――なるほど。黎明期のプロリーグならではかもしれませんね。
――プロとしての活動には、公式戦や試合に向けた練習はもちろん、写真撮影や取材対応に、チームの動画撮影やイベント参加なども含まれ、多岐にわたり忙しかったことと思います。
プロ選手としてのありとあらゆる活動の中で、「今、自分はプロゲーマーをやっている!」ともっとも実感できたのはどんなときでしたか?
shun:
チームのインタビューでしたね。
1番最初が特に印象深くて、初めてメイクをされたり多くのカメラの前に立ったりと緊張にやられてしまいそうでした。けどそれ以上に、プロゲーマーなんだ!と感じて嬉しくなりました。
――確かに”メイクをされたことのある男子高校生”というのは、世の中にそんなにはいないと思います。たくさん取材を受けられたと思いますが、初回となるとこの取材の時でしょうか?
shun:
はいそうです!
日本全チーム集まっての初めての取材でカメラマンさんの量も多く、前に出て喋ることもあり注目されているんだなと感じましたね!
――プロとアマチュアの大きな違いの1つは、注目度の大きさとファンの存在だと思います。shun選手にとってファンとはどういう存在でしたか? また、特に嬉しかったファンとのやりとりや交流があればお聞かせください。
shun:
ファンは支えになりました。勝てば嬉しいうえに喜んでもらえる、負ければ悔しくてそこで応援してくれると非常に励みになることばかりでしたね。
特に嬉しかったのは国が違う方も応援してくれたことですね! 海外ファンの方からチョコレートを貰うこともありました笑
――海外ファンの方から! 台湾や韓国へ試合で行った時でしょうか? シーズンオフのカップ戦で香港へ行かれたこともありましたね。
shun:
韓国や台湾での試合の時にです!
韓国会場ですとお客さんも入れる所だったので入退場の際に貰いました!
香港にも行きましたね!※3
アニメやゲームの祭典で非常に多くの方に見られながらステージ上で戦いました!
中国1位のNova Esportsに勝てたのは非常に嬉しかったです!!
(※3:香港での「ACGHK 2018」内のイベント「ACG x Nova 冠軍邀請賽」にて、中国1位:Nova・日本1位:GameWith・韓国1位:KING-ZONE・東南アジア1位:ahqの4チームによるカップ戦が開催されました)
――プロとして活動していくということは常に結果を突き付けられることでもあるので、緊張感や重圧は大きいでしょうし、結果のよしあしによって周りの評価が180度かわるようなアップダウンも激しかったことと思います。
難しい状況や苦しい時に心がけていたことや、何が支えになって乗り越えることができたのか、についておしえてください。
shun:
支えてくれたのはチームの存在でした。
特にメンバー同士で、勝てない時期があった時には励ましたり、時にはいじったりと深く考えすぎないようにしてくれました。
――最後の質問です。「プロゲーマー・eスポーツ選手」としての冒険で持ち帰ることができた”宝”や、この経験から得られたものがあるとすれば、shun選手の場合、それは何でしょうか?
shun:
緊張にも負けない強い心です。
最初は人前のインタビューですら震えて表情がやられてましたが、試合で落ち着いて勝てるようになり、そこからインタビューも受け答えできるまで成長して、解説も少しづつですが出来るようになってきました。
学校面でも代表をしたりと人前にも立てるようになってきて、本当にクラロワリーグで緊張に打ち勝てるようになり成長を感じましたね。
またこのクラロワリーグを通して一生の友も出来ました。
本当にクラロワリーグには感謝しきれません。
――本日はありがとうございました! ■
【取材日:2021年2月9日。DMでのやりとりをインタビュー形式に編集】
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Information
shun
・CRL: GameWith(2018)
・Clan: きくすいコーポ
・Best Trophies: 7789
・Best Season: 65th (2018/10)
・Titles: 「RPL」APAC II 1st, 「RPL」World II 3rd, 「CRL Asia 2018 Season1」2nd
・SNS: Twitter & Smashlog
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