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本のある日常

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書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。
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#エッセイ部門

文学フリマ東京本屋紀行

2024年5月18日、文学フリマ東京の前日。私は成田空港に降り立った。 今まで『本のある日常』『本のある生活』『本と抵抗』という3冊のZINEを書いてきて、「どれ腕試しに」という気持ちでいよいよ文学フリマに初出店する。 「どうせなら一番でかい文学フリマに参加してみたい」というミーハーな気持ちで、電車と飛行機を乗り継いでやってきました花の大都会。 そして、こんな機会もなかなかないので、東京の本屋さんもめぐろうという思惑だ。 成田空港から京成線に乗って、さっそく東京へ。 初日の

本が好きだと町が楽しくなる

私は社会人になってから本を読むようになった。 本を読むようになってから変わったことはたくさんあるのだが、その中でもうれしかったのが、”町”が楽しくなったことだ。 本が好きになると、当然のように本屋に行く頻度が増える。 そうなってくると、行きつけの店、ちょっと遠いけどそれでも通いたくなる店、入るのにちょっと勇気のいる老舗というように、本を通した町との関わりができてくる。 最近、近くの町に小さな古本屋ができた。 その町は、私が住んでいるところからは何駅か離れており、普段は行く

どうしようもなくなったときは本を読む

暗い本を買っている。 たとえば、最近買った本は『「死にたい」とつぶやく』だ。 ただ、ふだんからこういう本を読むわけではない。 さすがの私も気が滅入ってしまう。 じゃあいつ読むのかというと、もうどうしようもないほど落ち込んでしまったときである。 私は生まれながらにネガティブなタチで、定期的にすべてを投げ出して実家に帰りたくなる欲求に襲われる。 そんなときに本棚の奥から暗い本を引っぱり出してきて、読む。 暗い気分のときに暗い本を読んで、ずぶずぶと沈んでいくのだ。 そうして全身

本を読むのはめんどくさい

本を読むのはめんどくさい。 ぶっちゃけ、本が好きで書店員になった私でもそう思う。 新しい本を読み始めるときは、「よいしょ」と重い腰を上げるような心持ちが必要になってくる。 どうして本を読むのがめんどくさいのか。 それは、よく言われるように本が能動的なメディアだからだと思う。 本は自分で文字を追わないと読めない。 当たり前に思うかもしれないが、それはたとえばYouTubeと比較するとわかりやすい。 YouTubeはひたすらに受動的なメディアだ。 動画の再生ボ

積読の効能

書店員をやっていると、よくお客さんから言われるのが「でも家では積読をしちゃっててねえ」というものだ。 積読(つんどく)というのは文字通り本が積まれている様子で、買ったのに読んでいない本がたくさんあることを表す。 そんなふうに言うお客さんに私はいつも決まって「でも私は積読肯定派ですよ」と返す。 私には「積読をするから人は本を読む」という持論がある。 読書はタイミングである。読みたいときじゃなければ、なかなかその本は読めない。 「この本は気になるけど家に積読があるから、まずはそ

ブックオフは本好きにとっての遊園地

私は月に30冊ほど本を買う。 すべて新刊だと破産してしまうので、割合としては古本が多い。 そんな私が足繁く通うのがブックオフだ。 家の近くのブックオフはもちろん制覇済み。 車で出かけたときに未知のブックオフが目に入るとついつい寄ってしまう。 本好きの間でも愛好者が多く、こんな本まで出ているくらいだ。 何がそこまで本好きを魅了するのか。 それは、ブックオフにレジャー性があるからではないか。 いい本・欲しかった本が220円でゲットできた、あの喜び。 我々はそれを