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本のある日常

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書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。
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#書店

本と触れ合う時間のない書店員

私はふだん、書店員として働いているが、正直あまり本と触れ合えていない。 もちろん、仕事中はほとんどずっと本を触っている。 レジ打ちや品出し、返品作業だってそうだ。 ただ、触ってはいても触れ合えてはいないのである。 書店員としての仕事はけっこう忙しい。 大量の本を棚に出したり、メールで出版社とやり取りしたり、お客さんの問い合わせに対処したり。 そんな中だと届いた本の内容もわからず、ただただ棚に並べるような仕事になってしまう。 そんなふうにしていると、棚がどこかよそよそしく、軽

毎日本屋に行ってしまう

毎日本屋に行ってしまう。 書店員なんだから、仕事の日は当然本屋に行く。 だけど、休日も気がついたら本屋に足が向かっている。 これについては自分でも不思議に思い、「どうして私は休日にまで本屋に行くんだろう」と真剣に考えたことがある。 そして、出た結論は「本との出会いを楽しみたいから」だった。 同じ本でも本屋によって、その本への”意味”が異なる。 ある本屋では大事な本が、ある店ではその他大勢の本として扱われる。 そしてそれは本のディスプレイに表れる。 大事に思われている本は平

ZINE『本のある日常』を作りました

私にとって初のZINEである『本のある日常』が完成し、このたび販売を開始しました。 内容は書店員である私が、本について考えたことを書き連ねたエッセイ集となっております。 noteで書いていたエッセイに大幅な加筆修正を行い、さらにあとがきとして「ZINE づくりで大変だったこと」を書きおろしました。 販売を開始してさっそく取り扱ってくれるお店が決まったり、購入してくださる方がいたりと、ワクワクと楽しい日々を過ごしております。 この記事では、そんな『本のある日常』を紹介してい

ZINEと小商い

最近、ZINEを作る人が増えている。 ZINEというのは手製の小冊子のことで、同人誌と比べて少人数で制作され(多くの場合は一人)、内容がシンプルでおしゃれな装丁のものが多いのが特徴である。 私は書店員として働いているのだが、レジに立っていると「自分が作ったZINEをこの店に置いてくれないか」と聞かれることがたまにある。 ようは作者みずからが書店に営業しに来るのである。 作者といってもプロの作家と言うわけではなく、普段は会社員として働き、自己表現としてZINEを作っているとい

新刊書店で出会い料として本を買う

新刊書店は高い。 いつの間にかそんなイメージが頭にこびりついていた。 そんなだから、書店で本をいい本を見つけても、「中古が出てから買おう。それか図書館で買おう」と見送るようになった。 でもある日気づく。そう思った本はけっきょく読まない、ということに。 というのも、中古本を買うにしても図書館で借りるにしても、手間と時間がかかってしまう。 その手間と時間をかけてる間に「その本が読みたい」という気持ちが、「その本を読めたらいいなあ」になり、最終的に「まあ、今の俺には必要ないか」