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本のある日常

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書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。
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2023年10月の記事一覧

家に図書館をつくる

読んでない本があるままに、本を買い続けるとどうなるか。 家に図書館ができるのである。 その図書館は自分好みの本が並ぶ図書館である。 自分が興味のある本を買っていった結果なので、当然ではあるのだが。 図書館があれば、たとえ今は読めなくても、ふとしたときに「あんな本あったよな」と本を手に取れる。 特に私が重宝しているのが、出勤前に本を選ぶときである。 読みたい本というのは、その日によって違う。 だから、昨日まで読んでいた本でも、今日も読みたくなるとは限らない。 そんなときはそ

本を買うという冒険

本屋でレジに立っていると、店に入ってからすぐに一冊の本を手にとってレジに向かってくるお客さんがいる。 そして、買った後は脇目も振らず店を出ていってしまう。 もちろん、本を買っていただけることはとてもありがたい。本当にありがたい。 ただ、事前にネットで得た情報を頼りに目当ての本だけを買って帰るのは、少しもったいないことかもしれない。 本屋の醍醐味は、自分が知らない本と出会えることだからだ。 本屋では、本のプロである書店員が、趣向を凝らして本をディスプレイしている。 その棚をじ

自分で作ったZINEを手売りする

2ヶ月ほど前に『本のある日常』というZINEを作った。 100部刷ったのだが、ありがたいことに半数以上の56部が売れている。 販売方法としてはお店においてもらったり、ネットショップで販売したりしているのだが、イベントに出店して手売りすることもあった。 「私が書きました」というPOPとともにZINEを置いておくと、お客さんから「へーこれ、あんたが書いたの」と驚かれることがままある。 そうして、しばらく読んでもらえれば、けっこうな確率で買ってもらえる。 しかも、それがネットだ

本は途中で読むのをやめていい

YouTubeの動画が面白くなかったら、途中で見るのをやめる。 それは当たり前のことで、観るのをやめた次の瞬間には他の動画を探している。 だけど、本に限っては「つまらなくても最後まで読まなければいけない」という義務感を私たちに抱かせる。 だけど私はこう言いたい。 つまらない本なんて、途中で読むのをやめればいいのだ。 つまらない本を読むくらいなら、その時間を使って他の本を読んだほうが生産的な時間をすごせる。 つまらない本を義務感で読み切っても、そこには何も残らない。 ただ徒労