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本のある日常

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書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。
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2023年7月の記事一覧

本の傷みが気になるから、上から2冊目を買ってしまう

私は少し神経質なところがあって、本の傷みが気になってしまう。 本を買うときは上から2冊目をとるし、アマゾンで中古の本を買うときは状態が「非常に良い」ものを選ぶ。 傷んでいる本を買ってしまったときは、その傷が気になって読書に集中できなくなる。 ここまでくると、強迫観念のようなもので、自分でもしんどくなってくる。 買い物のときはきれいなものを選ぼうと時間と労力がかかるし、傷のせいで読書に集中できなくなってしまっては、なんのために本を買ったのかわからない。 そんな私が憧れるのが、

ZINEと小商い

最近、ZINEを作る人が増えている。 ZINEというのは手製の小冊子のことで、同人誌と比べて少人数で制作され(多くの場合は一人)、内容がシンプルでおしゃれな装丁のものが多いのが特徴である。 私は書店員として働いているのだが、レジに立っていると「自分が作ったZINEをこの店に置いてくれないか」と聞かれることがたまにある。 ようは作者みずからが書店に営業しに来るのである。 作者といってもプロの作家と言うわけではなく、普段は会社員として働き、自己表現としてZINEを作っているとい

居酒屋のあと二次会として本屋に行く

居酒屋で酒を飲んだ後は本屋に行きたくなる。 酔った心地であてどなく本を見るのが楽しいのだ。 二次会で居酒屋に行くよりも、よほど健康的で文化的で、ついでにお金もかからない(けっきょく何冊かは買うのだが) このnoteは、そんな「二次会としての本屋」のススメである。 まず時間帯なのだが、おすすめは昼飲みだ。 というのも、本屋は閉まるのが早い。 この資本主義社会において、17時に店を閉めるというスタンスをつらぬくのは立派なことである。 その姿勢を尊重し、お昼から飲める店で一次会を

やっぱり紙の本が好き

電子書籍と紙の本、どちらがいいか、ということがなにかと話題になる。 わたしはどちらも使っていて、どちらにもそれぞれのよさがあると思っているのだが、「やっぱり紙の本が好き」という気持ちは抑えがたい。 というのも、本というのは装丁を含めて一つの作品だとつくづく感じるからだ。 私が好きな出版社の一つに夏葉社があるのだが、この出版社は一冊一冊とても丁寧な仕事をする。 この言葉を実現するように夏葉社の本は素晴らしい装丁のものばかりである。 ハードカバーの本は手に取るだけで紙に気を使

本が好きだと町が楽しくなる

私は社会人になってから本を読むようになった。 本を読むようになってから変わったことはたくさんあるのだが、その中でもうれしかったのが、”町”が楽しくなったことだ。 本が好きになると、当然のように本屋に行く頻度が増える。 そうなってくると、行きつけの店、ちょっと遠いけどそれでも通いたくなる店、入るのにちょっと勇気のいる老舗というように、本を通した町との関わりができてくる。 最近、近くの町に小さな古本屋ができた。 その町は、私が住んでいるところからは何駅か離れており、普段は行く