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第109回 兆(きざし)

今回から数回に渡って、手元資金を10年で10倍にする方法の具体的な部分の一つを伝えようと思います。
この10年で10倍にする方法は、「孫子」にその要諦が書かれています。
その個所は「第6篇 虚実」の第6段第2節です。

その原文は、「因形而錯勝於衆、衆不能知、人皆知我所以勝之形」です。
その訳は、「一般人は皆、味方がどのような態勢で勝ったかを知ってはいるが、どのような態勢で勝利を決定付けたかを知らない。」となります。
プロ野球の試合でも、「勝った」「負けた」は、素人だって分かります。
ところが、どの点が「勝利に繋がったのか」、また「勝利を決定付けたのか」と聞かれれば、それを答えることは難しいです。
実際、「勝ち越し点を取ったところ」、「敵の追加点を阻止したところ」など、同じ勝利でも、見方によって異なってきます。
それでも、その試合に出ていた選手には、分かっています。
その選手に、いかに近づいて感覚を共有できるようになるかがポイントという訳です。

そこでまず、この一文を投資に置き換えて考えてみましょう。
「一般人」を「普通の投資家」、「味方」を「名投資家」、「態勢」を「チャート」、「勝ち」を「儲け」に置き換えてみます。
すると、「普通の投資家は皆、名投資家がどのようなチャートで儲けたかを知ってはいるが、どのようなチャートで儲けを決定付けたかを知らない。」となります。
「儲けを決定付けるチャート」とは、一体どのようなものでしょうか!?

例えば、井村氏が9101日本郵船や1518三井松島HD、1514住石HDで大儲けしたことは、今の投資家なら知っていることでしょう。
この3銘柄のチャートは、誰だって見ることが出来ます。
- これだけ騰がったんだ・・・・ -
今のチャートを眺めて、その上昇度合いに感嘆することだってできる訳です。

そしてこのことは、誰にだってできます。
これが、「孫子」で言うところの「どのようなチャートで儲けたかを知ってはいる」ということです。
これは、結果から物事の事象を確認しているということと同じ意味です。

しかし重要なのは、先にも書いた通り「どのようなチャートで儲けを決定付けた」という方です。
一般人が知らないと書かれている方です。

- どのようなチャートって、チャートって同じでしょ!? -
普通の投資家は、直ぐにそう思ってしまいます。
チャートには、日足、週足、月足や、分足があり、誰でも簡単に見ることが出来ます。
そこに違いが無いので、重要な要素を見落としてしまうのです。

実は、先ほどの「第6篇 虚実」の第6段第2節の前にある第1節に、更に重要なことが書かれています。
その原文は、「故形兵之極、至於無形、無形、則深閒不能窺、智者不能謀」です。
そして訳は、「つまり、勝利を得ることができるかどうかは、態勢を読み取ることができるかどうかにかかっているが、一般人はその態勢を読み取ることが出来ない。」という訳です。
これを先ほどと同じように投資風に言えば、「つまり、儲けを得ることができるかどうかは、チャートを読み取ることができるかどうかにかかっているが、普通の投資家はそのチャートを読み取ることが出来ない。」となります。

そこで考えてみましょう。
チャートは過去の値動きを表してくれています。
大相場を演じた銘柄の上昇が始まる前の動きも、当然ながら表示されています。
つまり、上昇が始まる端緒も表示されている訳です。

戦いでもそうですが、態勢が常に同じで変わらないということはありません。
どの態勢に変化した時に勝利を決定付けたか、つまりどの態勢に変化したことによって勝利を手に出来たか、ということが最も重要な事柄になる訳です。
ですから、ただ、現在から過去のチャートをのんべんだらりと眺めているだけでは意味がありません。
その過去のチャートのどの部分が、大相場を作る端緒、切っ掛けになったかを調べて理解することが必要だと書いている訳です。

しかしながら、上昇の始点を探そうと思っても、普通に眺めているだけでは、良く分かりません。
なぜなら、大きく上昇した銘柄の端緒の頃の値動きは、非常に小さいものであるため、現在から表示されるチャートでは見極められないからです。
このため、端緒を探すには、当たりを付けて、チャートの期間を絞り込む必要が出てきます。
これが結構面倒な作業なので、多くの投資家はやっていないと思います。

トレンドが変わるときは、まず間違いなく出来高を伴った上放れの動きがあるはずです。
上昇トレンドの始期を探すのですが、当然ながらそれ以前は下降トレンドまたはボックストレンドであるはずです。
そこから上抜けるのですから、当然ながら膨大なエネルギーが必要になります。
そのエネルギーによって、銘柄は新たな動きに移る訳です。

そして、そのエネルギーの供給源は、これまた当然ながら材料になります。
何の材料もなく、トレンドを変化させる銘柄は、そうはありません。
特に上昇トレンドに突入するには、何らかの材料が必要になります。
我々投資家は、そのエネルギー源となる材料を探すことが、絶対的に必要と言う訳です。

このエネルギーこそが、上昇トレンドへと移る「兆(きざし)」になります。
「兆」さえ見つけることが出来れば、多少乗り遅れても問題ありません。
なぜなら、最終的に大きく育つのですが、目先の小さい価格差などは考慮するに足りないことだからです。
この「兆」を探せるようになれれば、投資家としては成功者の部類に入れるのです。

スミマセン、昨日と記事がテレコになってしまいました。

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