第49回 価値が明確なもの

前回は、価値が無いものとしてビットコインの説明をしました。
今回は、逆に価値が明確なものについて説明したいと思います。
前回と比較した方が分かりやすいので、今回は米ドルを例に説明したいと思います。
日本円から見て価値が明確なのは米ドル、逆に米ドルから見て明確なのは日本円ということです。

まず、円もドルも共通して言えることは、通貨だということです。
通貨とは、流通貨幣の略称で、決済のための価値交換媒体のことです。
この通貨を発行するのは銀行であり、多くの場合は国立銀行がその役目を担うことになっています。
だから、日本の通貨の正式名称は、「日本銀行券」となるのです。

さて、近代の通貨というものは、国家が指定した国立銀行が発行します。
古くは貴金属の価値に裏付けされた「金本位制」や「銀本位制」などの兌換制度で発行されていました。
兌換制度とは、いつでも紙幣と貴金属とを交換できるという条件で紙幣を発行することなので、国家でなくとも、資金力のある大手銀行が独自で発行することが出来ました。
しかし最近は、兌換制度から管理通貨制度へと変更になっています。

そもそもなぜ、通貨は兌換制度だったのでしょうか・・・・・!?
先ずは、思い出してください、例えの村のことを・・・・。
最初は、物々交換で必要なものを手に入れていました。
例えの村でも、服や首飾りを米と交換していました。

しかし、物々交換だと、お互いに気に入らないと交換できません。
そこで交換の中間財として、通貨という発想が生まれました。
誰もが交換したくなる上、劣化しないというのが通貨に求められる条件でした。
だからこそ、金銀銅貨が最初に遣われ始めたのです。

しかし、金銀銅貨には重量があります。
運搬には負担がかかる上、金銀銅には産出量という制限があります。
そこで、いつでも金銀銅、つまり貴金属に交換できるという条件を付けて、紙幣を発行することにしたのです。
これが兌換制度です。

ところが産業革命以降、生産性が飛躍的に向上したため、人口が爆発的に増加します。
こうなると、必要となる通貨は人口に比例して爆発的に増加する半面、貴金属の採掘量は思ったほど伸びません。
このため、通貨の価値が騰がり、デフレ社会となってしまった訳です。

そこで政府は、貴金属の採掘や保有量に関係なく、通貨の発行を迫られることになったため、通貨の価値の裏付けを貴金属に頼るのではなく、政府自身の信用度に頼るというものに切り替えたのです。
ですから、日本円は日本政府の、米ドルは米国政府の信用度によって、通貨の価値が決まることになったのです。
これを信用通貨制度と言います。

最近の円安ドル高は、金利差の問題と言われていますが、根底にあるのは日本政府の信用力の低下です。
金利差が問題なら、日本政府が金利を引き上げれば良いだけです。
実は、日本政府は国内景気を悪化させないために、そう簡単に金利を引き上げることができません。
つまり、日本政府が国内経済の活性化に必要な手立てを打つ能力が無かったことで信用力を下げている訳です。
この結果、金利引き上げという自由が利かないことから、信用度が低下して歴史的円安と呼ばれる現象を招いている訳です。

よく1年で数千倍の利息が付くというハイパーインフレの国の話を聞くことがあります。
お金が紙くずになるというヤツです。
これは、政府の信用度が不足している為、その国の通貨の信用度も失墜し、通貨の価値が日ごとに暴落して、ハイパーインフレという状況になっているのです。
今のところは、まだまだ安定的な日本政府ですが、今後の転び方次第では、日本も笑っていられない状況になることでしょう。

さて、このように通貨の価値は、発行元の政府の信用力によって決まります。
信用力が高い通貨が買われ、低い通貨が売られ、FXで売買できるのはこのためです。

ここで思い出して下さい。
ビットコインの発行元はどこでしょう、どこの国の信用力を担保としているのでしょう。
ビットコインは、「サトシ=ナカモト」という日系人らしい人物が開発者だと言われています。
が、それが、本当か、どうかは分かりません。
つまり、担保となる国も人物も、ビットコインには何もないということなのです。
完全な無担保ということで、言い換えれば無保証とも言える訳です。
無保証の債券なんて、意味合い的に無価値と同じです。
だからこそ、買われているとも言えるのです。

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