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第62回 利益剰余金と有利子負債

利益剰余金とは、会社が生み出した利益を会社内部に積み立てた資金のことで、別名「内部留保」とも呼ばれるものです。
前回、「過去に稼ぎ出した利益」と書きましたが、それがこの利益剰余金のことです。
利益剰余金は、過去から稼ぎ続けた成果であって、通常は積み上がっていくものです。
ですので、この利益剰余金が減少することは、赤字に陥り、企業経営が上手くいっていないことを意味します。
利益剰余金がマイナスなんていう企業は、基本的に投資先として選択しない方が良いでしょう。

利益剰余金は、自己資本にカウントされることから、自己資本比率を高めることに寄与します。
つまり、財務体質の強化になる訳です。
ですから、利益剰余金がマイナスだと、自己資本比率が大きく損なわれることにもなります。
ところで、この利益剰余金ですが、実は3種類のものに細分化することができます。
利益準備金、任意積立金、繰越利益剰余金です。

利益準備金とは、会社法で定められている法定準備金の一つです。
企業は、営利活動によって得た利益から、株主配当を実施します。
しかし、株主配当が多過ぎると、企業の財務体質が弱まり、債権者などに債務不履行の悪影響を及ぼしかねません。
そのため、会社法では配当金額の10分の1以上の額を企業に積立させることを義務付けています。
積み立てなければならない額は、利益準備金と資本準備金を合わせて資本金の1/4までです。
因みに、資本準備金とは、新株発行の際に払い込まれた資金の中で資本金として計上せず、事業で赤字が発生した際などの補填のために使用する目的で取っておくお金のことです。

任意積立金とは、企業が勝手に積み立てている資金のことです。
企業は、定款または株主総会の決議に基づいて、任意積立金を設置することができます。
任意積立金には、修繕積立金、備品購入積立金や退職給付積立金など特定の目的のために実施するものと、そうでないものとがあります。

繰越利益剰余金とは、利益剰余金のうち利益準備金と任意積立金以外のもののことです。
つまり、その他ということです。
企業の利益剰余金の中で、利益準備金と任意積立金にしなかったものが、全て繰越利益剰余金になります。

この利益剰余金の主な使い道ですが、当たり前のことですが、配当金として支払われたり、設備投資に利用されたりします。
ですから、この利益剰余金が少ない場合は、配当や設備投資が出来ない状況だと言い換えることもできます。
つまり、企業として、両手を縛られている状況だと言えるのです。

この利益剰余金がマイナスになっていても、直ぐに倒産になるということではありません。
それは、短期間であれば、資本金と借り入れで乗り切ることが出来るからです。
この際の借り入れを、有利子負債と言います。

有利子負債とは、利息を付けて返済しなければならない負債のことです。
俗に、短期借入金、長期借入金、社債、CP(コマーシャルペーパー)などが、これに該当します。
この有利子負債を期限までに返済できないことを、「デフォルト」と言います。
株式投資の世界では、よく耳にする言葉です。

前回、財務レバレッジの話をしましたが、この有利子負債を上手に活用することが、企業には求められます。
なぜなら企業活動には、資金調達がつきものだからです。

資金調達はこの間説明しているとおり、無利子の自己資本、つまり株主資本の増加である新株発行、または有利子の銀行からの借り入れや社債の発行になります。
新株発行は無利子だから企業にとって都合が良いと考えられがちですが、実際は、株主の期待値、つまりキャピタルゲインやインカムゲインを満たすという数字に表れない利息の支払いが求められます。
また、株式の希薄化ということで、既存株主からは凄く嫌がられます。

企業経営者は、このバランスを考えて資金調達をしている訳で、それを「加重平均資本コスト」と言います。
企業は複数の方法で資金調達をしているのが当たり前ですから、それを端的に表すものとして活用される数値がこれです。

ここで、以前説明した利子率に話を戻します。
銀行の利息の利率が低ければ、新株発行による調達ではなく、借入金を増やすことで賄うことを企業は選択するでしょう。
反対に高ければ、借入金を圧縮するために、新株発行などの株主資本に頼る選択をするでしょう。
つまり、資金調達を考える場合でも、利子率がその調達方法に大きく関係していると言える訳です。

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