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第83回 キャッシュフロー計算書

俗に、財務三表と呼ばれるのは、「貸借対照表」、「収支計算書」、そして「キャッシュフロー計算書」です。
前回の最後に、「貸借対照表」と「収支計算書」は、セットで読み取るものだと書きました。
当然、そこには「キャッシュフロー計算書」は含まれていません。
なぜなら、この財務三表の中で、「キャッシュフロー計算書」は異質の存在だからです。

キャッシュフローとは、一定期間における企業や個人の現金および現金同等物の流入と流出の差額のことです。
キャッシュフロー計算書とは、財務諸表の一つで、キャッシュの流れを示す書類のことです。

日本でキャッシュフロー計算書が上場企業に義務付けられたのは、1999年4月1日以後開始する事業年度からになります。
つまり、2000年3月期以後に決算月を迎える上場企業は、キャッシュフロー計算書を作らなければならなくなりました。
欧米では、既に1980年代後半から1990年代前半にかけてキャッシュフロー計算書の作成が制度化されていましたが、日本も国際会計基準の一元化の流れの中で導入されました。
貸借対照表や損益計算書は、欧州では15世紀半ばから17世紀にかけて完成したと言われているので、キャッシュフロー計算書の歴史は、かなり新しいものになります。

なぜ、キャッシュフロー計算書が必要という考えに至ったかは、黒字倒産の回避です。
企業が赤字で倒産するのは仕方のないことなのですが、黒字なのに、資金繰りに行き詰って倒産することが出てくるようになり、それを事前に知る手法を投資家が求めたからです。

日本でも、1991年のパブル崩壊により日本では景気後退期に入りました。
地価の下落により、バブル経済時代に土地を担保に行われた融資は担保割れの状態に陥り、金融機関は貸し渋りを始めました。
すると、収支計算書上は十分営業利益が出ている企業でも、直ぐに現金化できる資産が無い中で、借り換えが出来なくなってしまえば、日々の支払いにも事欠くようになり、黒字倒産になってしまいます。
そうならないためにも、資金の流れをしっかりつかみ、危なくなる前に対処できるようにするために、上場企業の決算書にキャッシュフロー計算書が義務付けられたのです。

キャッシュフロー計算書には、「営業キャッシュフロー(CF)」、「投資キャッシュフロー」、「財務キャッシュフロー」の3つが記載されています。

「営業CF」とは、本業による収入と支出の差額のことです。
つまり、「営業CF」は、基本的に「営業利益」とイコールになります。
しかしながら、実際に同額になっていることは少ないでしょう。
それは、計上されるタイミングが違うからです。
「営業利益」は、実際に契約が成立した段階で計上されます。
しかし、「営業CF」は契約が成立した段階では計上されず、実際に入金があって初めて計上されるのです。
ですから、似ている額になることは良くあるのですが、ピッタリ同額には、なかなかなり難いのです。

「投資CF」とは、企業の投資活動における資金の動きのことです。
設備投資や余剰資金の運用など、投資活動に関する資金の動きを表します。
固定資産や有価証券の購入・売却など、将来に向けた投資のために資金がどれくらい増減したかを著します。
ですから、「投資CF」は、基本的にマイナスが好ましいとされています。
成長するには、設備投資が必要になります。
その設備投資費用は、この「投資CF」に現れるのです。

「財務CF」とは、企業の資金調達に関する資金の流れのことです。
新株発行や銀行からの借り入れなど、企業の資金が増えればプラスになります。
社債の償還や銀行への返済、配当金の支払いなど、企業の資金が減ればマイナスになります。

「財務CF」がプラスのときは、資金調達が積極的に行われていることを意味します。
この場合は、資金調達の方法や目的、資金の使い道などを詳しく確認することが必要になります。
新規事業や設備投資といった事業拡大の為のものなのか、資金繰りが厳しいためのものなのかで、判断は全く異なるものになります。

「財務CF」がマイナスのときは、手に入れた資金よりも、返済や配当金の支払いの方が多いことを意味します。
営業活動によって得た利益で借入金の返済を行い、新たな借り入れの必要が無ければ、特に問題はありません。
逆に、希望どおりの融資が受けられない等の理由でマイナスの時は、今後に注意が必要ということになります。

また別に、「フリーキャッシュフロー」というものもあります。
「フリーCF」とは、企業が自由に使うことのできる資金のことです。
これは、「営業CF」から「投資CF」を差し引いた金額になります。
企業が設備投資以外にも、借入金の返済や配当金の支払いなど、自由に使うことが出来る資金です。

これら「キャッシュフロー」と、貸借対照表や損益計算書の数値を組み合わせて、より企業の実態を確認することが出来ます。

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