かぶきDOU其の6 アフタートーク
皆さま今回もかぶきDOUをお聴きいただき誠にありがとうございました。大型連休中に私の地元、石川県能登半島で地震が発生しました。まだ余震もあり気が休まらない状態が続いておりますが被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。
團菊祭 初代尾上眞秀襲名披露
私は大型連休中に東京の歌舞伎座に行きました。5月といえば團菊祭ですが今年は初代尾上眞秀襲名披露もおこなわれました。この演目前の幕間に初舞台を祝う素晴らしい祝幕がお目見えしました。
舞台にスルスルと幕が引かれますと鮮やかな色あいのドット柄が広がり、お母様の寺島しのぶさんによる書も風格があって大変美しかったです。今回の祝幕はシャネルがサポートとのことでしたが、幕が少しひだになったり、たわむ部分もあるのですがパッチワークされている布地のドット柄がその都度形を変えて美しいグラデーションになり素晴らしい仕立だなと感じました。古い価値観にとらわれない…さすがシャネルですね!
演目は歌舞伎の立方女方どちらのエッセンスもうまく組み合わさっており将来演じるであろう演目の予習にもなっているだろうな…さすが!おじいちゃま菊五郎さんの名演出!と感じました。
十二世市川團十郎十年祭 特別展
そして今年は12世市川團十郎10年祭ということで成田屋で受け継がれている「若き日の信長」が13代目によって上演されました。
偉大なる12代目は私に歌舞伎に熱中するきっかけをくださった方です!
歌舞伎座に併設されている歌舞伎座ギャラリーの特別展も観に行きました。
この特別展では外国の方でも12代目がどのような功績を残されたのか、観てよく分かるつくりになっています。お子様にも日本文化に触れるとても良い機会かと思います。観覧は無料となっておりますので銀座に行かれる方はぜひお立ち寄りくださいませ。
太刀盗人PART2
今回も6月博多座大歌舞伎昼の部の演目 太刀盗人について引き続きお届けしました。先週は太刀盗人の舞台のご説明や作者のお話をさせていただきましたが今回は解説に入っていきました。
配役 新たに追加
配役は以下のとおりです
•すっぱの九郎兵衛
4代目中村鴈治郎 成駒家
•目代 丁字左衛門
2代目中村亀鶴 八幡屋
•従者 藤内
初代中村寿治郎 成駒家
•田舎者 万兵衛
6代目片岡愛之助 松嶋屋
目代の従者 藤内役がこのほど発表されました。
間接的に目代にあれこれ指南していくのがこの従者 藤内です。
成駒屋の中村寿治郎さんが勤められます。上方歌舞伎を支えるベテラン役者さんですので大変楽しみです!
物語の鍵は太刀
万兵衛の腰には刀、太刀が刺してあります。黄金(こがね)造りの大変立派な物で九郎兵衛はこれを狙っていました。大切な太刀を盗られたことに万兵衛はすぐに気付きます。田舎者で、のほほんとしているんですが勘が良いんです!この後の問答でも結果的にその勘が役立ちます。九郎兵衛に太刀を返せと詰め寄りますが、これは自分の物だと言い張ります。この騒ぎを聞きつけてこの土地の代官、左衛門がお仕えの従者 藤内と共に2人のもとにやってきます。ジャッジをするから、まずは太刀を預けるようと促しても双方刀から手を離しません。万兵衛は「目代といえども大切な太刀を渡すなんて田舎者の私にとっては信用できない」と言います。九郎兵衛も同じことを繰り返します。左衛門はこれまで様々な厄介ごとを解決してきたベテラン代官です。酔っぱらいの喧嘩から動物の困りごとまで、今までどんな厄介ごとを解決したのかを万兵衛と九郎兵衛に話して聞かせます。信用した万兵衛、それを真似て九郎兵衛も賛同し太刀を左衛門に託します。左衛門は2人から事情を聞きますが同じことを言うので埒があきません。刀がどんなものか両者がプレゼンをした上で判断しようということになります。万兵衛は必死に黄金太刀が自分の物であることや刀の由来や特徴などを左衛門に説明します。
刀の由来
万兵衛のセリフで太刀の出処銘に相州物(そうしゅうもの)とでてきます。相州は神奈川県のあたりで、鎌倉時代から栄える日本刀の工法 相州伝のことを意味します。
さらに相州に住む五郎入道正宗と出てきますが刀剣がお好きな方ならピンと来るかと思います。実在する刀鍛冶で相州伝の祖と呼ばれています。相州伝の刀は現在でも美術品として高い評価があるそうです。
話は戻りまして万兵衛が太刀の説明をしても、すぐに九郎兵衛が同じことをそっくりそのまま繰り返すので一体どちらが本当のことを言っているのか?!よろず厄介ごとを解決してきた左衛門でも判断がつきません。やがて万兵衛は九郎兵衛が自分の真似をしていることに気づき機転を利かせます。九郎兵衛の悪事を暴こうと連舞(つれまい)で刀の焼きの工程を説明しましょうと左衛門に提案するのです。
万兵衛の動きに三味線の音色が乗り続いて九郎兵衛の動きに小鼓の音色が乗ります。九郎兵衛演じる中村鴈治郎さんの半間遅れての舞、この半間というのが大変技がいります。
目にも耳にも楽しい場面で見どころです!九郎兵衛は連舞も難なくこなしてしまい困った目代 左衛門です。
万兵衛は太刀の寸尺、サイズを左衛門の耳元で囁きましょうと提案します。さすがの九郎兵衛も盗み聞きすることができずあの手この手で誤魔化そうとしますが、とうとう悪事が明るみになります。
九郎兵衛は刀を持ったまま花道へと逃げだし万兵衛や左衛門、藤内がその後を追いかけて幕となります。
終始愉快なやりとりが初心者の方に観やすい演目となっております。この太刀盗人は現代の漫才やコントの泥棒ネタに通づるものがあり、絶妙な間合いが役者さんの腕の見せ所だと思います!ぜひ観劇の参考にしていただけたら幸いです。今回のお題は6月博多座大歌舞伎昼の部から「太刀盗人」をご紹介しました。
縁の一曲
歌舞伎役者さんにゆかりの曲をご紹介する、えにしの一曲のコーナーです。今回の縁の一曲は中村鴈治郎さんでした。太刀盗人では、すっぱの九郎兵衛を演じられます鴈治郎さんは上方歌舞伎の大名跡であり、お父様の坂田藤十郎さんの人間味あふれる芸も継承されています。
2020年NHK連続テレビ小説「おちょやん」では道頓堀を牛耳る演劇界の重鎮 大山鶴蔵役を演じられました。舞台は大阪、松竹新喜劇と女優 浪花千栄子がモデルでした。ヒロイン杉咲花さん演じる竹井千代が女優を志し、貧しさや大正から昭和の時代の波に翻弄されながらもひたむきに夢を叶えていくストーリーでしたが、大山鶴蔵の興行主としての厳しさが全面に押し出されていました。鴈治郎さん演じる大山鶴蔵は、いわば松竹の創業者の役でもありますが曽祖父である初代中村鴈治郎は戦前の演劇界を松竹と共に牽引しました。鴈治郎のルーツでもあるということでこのお役を喜んで引き受けられたそうです。鶴蔵が新喜劇の看板女優に成長した千代と酒を酌み交わして労うシーンが人情味があってとても印象的でした。
おちょやんの主題歌
♪秦基博 泣き笑いのエピソードをお届けしました。
船乗り込み公式グッズ先行販売について
6月に博多座大歌舞伎が開催されチケットが絶賛販売中です!
演目については次回以降もかぶきDOUの中でご紹介していきますので参考にしていただけたら幸いです。
そして 6月博多座大歌舞伎にご出演の皆さんがご当地到着を船に乗ってお披露目する船乗り込みが4年ぶりに復活します!
船乗り込み公式グッズの事前申し込みが始まっています。船乗り込み当日に博多座劇場内で行われる式典の入場券となるのが公式グッズの手拭です。当日も販売がありますが数量限定のため気になる方はぜひお買い求めくださいませ。博多座HPでお申し込みください↓
https://hakataza.e-tix.jp/pc/smart/202305funanorikomi.html
めでてえなあ
お誕生日を迎えられる歌舞伎役者さんをご紹介するめでてえなあのコーナー。
5/3から5/9がお誕生日の皆様をご紹介しました。五十音順となっておりますのでご了承ください。
5/3 中村扇十郎さん
中村扇雀一門
5/6 市川笑三郎さん
澤瀉屋
5/6 澤村宗之助さん
紀伊国屋
5/6 中村歌昇さん
播磨屋
5/9 坂東功一さん
大和屋
5/9 市川河松さん
市川團蔵一門
今回は6名の皆様がお誕生日でした☆おめでとうございます!
次回のかぶきDOUは5/16㈫の午前10:00-10:25生放送でお届けします。お楽しみに!
番組のYou Tubeアーカイブはこちらからご覧いただけます↓
※権利の関係でBGM音楽は流れません。ご了承くださいませ。
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