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読書⑭ 上がれ!解像度

導入:優れた起業家

優れた起業家は、取り組んでいる領域のことに関して、明確かつ簡潔で分かりやすい説明ができます。

顧客が今困っていることを深く知っていて、顧客は週に何度その課題を体験し、解決のためにどんな競合製品を活用しており、どんな工夫や裏技をほどこして効果的に使っているのか、そのときの顧客の感情はどういったものかといった細かいところまで話せます。

また優れた起業家は、顧客についてだけでなく、市場技術ビジネスモデル事業計画といった、ビジネスで要求される多くの要素について、情報を有機的に繋げて構造化します。

顧客が今困っていることが解決された先の未来を推論し、今から布石を打って未来へとたどり着きます。

解像度とは「はっきり」の具合

「今」をはっきりと説明し、「未来」の計画をはっきりと語る、この「はっきり」具合が「解像度」です。

はっきりとした説明のできる起業家は顧客を魅了する製品を作り、説得力のある計画を作って投資家を説得し、資金調達に成功しています。

令和の虎で完全ALLを達成している方々もそうではないでしょうか。

「今」を理解し、「未来」を推論する力を高めるためにやることを整理すべく、まとめてみます。


優れた現状把握のための3つの視点

解像度が高く、優れた現状把握とは、ある1つの事象に関する原因や構造、流れを適切に要素分解した上で、その1つについて詳しく説明できることである。

深さ

原因や要因を深くまで掘り下げて把握しているか。原因の原因をWhyで突き詰める。

深さが足りないと、抽象的・一般的なことしか言えない。

広さ

どれだけ広く原因や要因を把握しているか。異なるアプローチ、視点で検討。

広さが足りないと、他の打ち手が思いつかない。

構造の把握

原因/要因構造、関係性、相対的に分ける。洞察に繋がる分け方をする。

構造の把握ができていないと、重要なポイントがわからず説明が長くなる。


深さ、広さ、構造の把握が不足しているということは、そもそも顧客課題がズレているかもしれない。

優れた未来推論のための3つの方法

仮説を生み出すためには、事実からアウトプットして次の事実を生み出しながら、推論や解釈の深さを身につけるためにインプットを増やすのみ。

事実が把握できたところで、推論して仮説を立てることで未来に近づく。

推論とは、仮説を立てるために行うものであり、そのために方法論がある。

演繹推論

三段論法で結論を導く推論です。

社内外のベストプラクティス(大前提)
現在のこの会社の状況(小前提)
この会社でもベストプラクティスを実施すべき(結論=仮説)

帰納推論

複数の事実から法則を導く推論です。

白鳥をひたすら見る。事実の収集、データ分析
観察した結果、「全ての白鳥は白い」という結論(=仮説)を導く

仮説推論

「アブダクション」とも言われます。
新しい仮説を設定する新たな発見の論理であり、「驚くべき事実」を説明できる「仮説」を導出するものです。

ある化石がいくつも発見された。それは魚の化石であったが、発見場所はかなりの内陸地だった(驚くべき事実)。この現象を説明するために、陸地がかつて海洋だったと仮説する(仮説)。

『アブダクション』 米盛裕二 

観察したことの説明を導き出すため、以下の手法を駆使しながら「頭を使う」のです。

  1. アナロジー:ベースに関する知識を用いて、新たな洞察を推論する。以下手順で行う

    1. ベース(自分の知識)を把握:SaaS、マーケットプレイス、広告モデルなど

    2. ターゲット(ベンチマーク相手)を把握:新規ビジネスX

    3. 観察対象からターゲットに、類似した要素の対応付けを行う

    4. ベースに関する知識を用いて、欠けている要素や新たな要素を推論する

  2. フレームワーク:枠を提供し、解釈や推論を促す

  3. 水平思考:既存技術を組み合わせ、旧来のビジネスモデルを使うなど。複数視点を活用した思考(アナロジーも水平的な思考の一種)

まとめに代えて:解像度が低いとどうなるか考える

「なんで?」と言われ、不審な行動に見える

会社のマネージャー陣が「従業員のモチベーションが下がっている」という課題を設定し、「会社で合宿に行く」という解決策を提案したところ、それを聞いた多くの部下が「なんで?」と冷ややかな空気になってしまった、というような話を聞いたことはないでしょうか。

ここで「なんで?」となってしまうのは、表面的な病状から解決策を一気に導いてしまっているからです。

「モチベーションが下がっている」という病状の原因は、給料が低いせいかもしれませんし、マネージャーが機能していないからかもしれません。真の病因を考えないまま、表面的な解決策に飛びつくと、第三者からは不思議な行動に見えてしまいます。

敗北の原因はいつも慢心か情報不足

ビジネスであれ、研究であれ、勉強であれ、ほかの領域であれ、解像度が低い原因は単に情報不足・情報整理不足である場合が多いのです。

自分は、「(人と違って)これくらいの量で、こんなやり方で、成功できる」という慢心が、情報不足での挑戦に駆り立て、思い込みでの意思決定をしてしまうのです。

良い勝負、良い起業をするために、
上げていけ、解像度。

今回の本


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