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遠藤周作「海と毒薬」を読んで

遠藤周作著「海と毒薬」を読んだ。スプラッター小説では無かった。

「これからも同じような境遇におかれたら僕はやはりアレをやってしまうかもしれない……アレをねえ」と後の勝呂は言う。この「アレ」と言うのが、人体実験(殺人)のことなのか、流れに身を任せてしまうことなのかは私の読解力では分からなかった(おそらく殺人)。戸田は「俺もお前もこんな時代のこんな医学部にいたから捕虜を解剖しただけや」と言う。

戸田のような良心を持たない人は別として、多くの自分のことを悪人だと思っていない人も、勝呂と同じ状況に置かれたら、勝呂と同じ行動を撮るのではないかと思う。たまたま運が良かったから、悪人になっていないだけである。

現代日本の事象を比喩するときに、戦争や戦時中のことを用いるのは、あまり好きではない。私は戦争を知らないので「まるで戦時中のよう」と言う言葉は使えない、使いたくない。被比喩対象によっては、戦争を軽んじ流ことになる気がするためである。(行ったことない国や食べたことのない食べ物を比喩に使うことはあるので、まあ、なんというか、私の個人的なお気持ちの面で、戦争は使わないということで……)

だが冒頭の勝呂と戸田の言葉は、あらゆる犯罪にも当てはまるように思う。

自分の頭で考えることはしんどく、流れに身を任せるのは楽である。

疲れたのでこれで終わる。


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