見出し画像

宮沢賢治「雲の信号」の考察

あゝいゝな、せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし

山はぼんやり
岩頸だつて岩鐘だつて
みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ

  そのとき雲の信号は
 もう青白い春の
  禁慾のそら高く掲げられてゐた

山はぼんやり
きつと四本杉には
今夜は雁もおりてくる


学生の時になにかの発表会で読んだ記憶があります。

これは宮沢賢治が1922年5月10日に残した作品です。
自然豊かな風景を詠んだように見える作品ですが・・・。


【四本杉と五月の雁(がん)】

四本杉に雁が下りてくると書いてあります。
実はこの詩を読んだ5月の花巻には雁は飛来してないんです。
いてもせいぜい3月くらいまでということ。
ではなにをもって雁がおりるとしたのか

結論から申し上げます
「プレアデス星雲 スバル」です。

どういうことかというと

賢治の自宅の2階から西の方角を見ると
先に小高い丘の上に四本杉が立ってあります。(現在は伐採済み)

この詩を詠んだ1922年5月10日
午後7時すぎの夕暮れ
その「四本杉」の方角の西の空には
「プレアデス星雲 スバル」が沈んでいくのです。

沈むスバルがまるで杉の木にとまる雁のようにみえたのでしょうか。

画像2

1922年5月10日の19時西の空 地平線と星の位置とM45(プレアデス星団)


【タイトルの雲の信号】

信号=点滅する星雲(雲)
雲の信号とはスバルのことだといえます。

大正8年に賢治が残した文章に「ラジウムの雁」という文が出てきます。
西の空に沈むスバルを、

ラジュウムの雁。
化石させられた燐光の雁。
停車場の灯が明滅する。

と綴っています。
このことからもスバル=雁として比喩していたのでしょう。

星雲を鳥に例えるのは賢治らしいですね。
とても宇宙的でロマンティックですね。


【従順な信者だった賢治】

しかしこれはあくまで推察だと思います。
宗教に傾倒していた賢治は多くの作品に
女性に対するリビドーやその禁欲について書いています。

もう青白い春の
  禁慾のそら高く掲げられてゐた

このあたりの一節は賢治の禁欲と女性に対するリビドーとも
とらえられるように思います。
むしろその方が自然かもしれません。


希望者全員にかぼすステッカーを無料で差し上げます。大変ご利益のあるステッカーとして有名です。